>>所詮貴方はそれだけよ


まさか私みたいな人種が、しかもこの年になって年下の男の子からナンパをされるとは思わなかった。…ちゃんと眼科行った方がいいと思うよ。


「姉さん、俺とお茶しませんか!スイートで甘い時間を一緒に過ごしましょう!」
「スイートと甘いって同じ意味だろ」


瞳の輝かす様は子供のようで…否、高校生は子供になるか。
私の突っ込みにも屈せもせず、話かけてくる。


「あぁー…。今バイト探しの最中でお金ないからさ、たかるならOLのオネイサンの方がいいと思うよー」
「え!?」


え!?って、え?
顔を見合わせながらお互い驚い顔をする。




……仕事が見つからない…。
こんな真っ昼間から街をぶらぶらしてみたが、本当に見つからない。こういうのってタイミングがあるようで、ダメな時は泣きたくなるくらいバイトがない。けど今はそんな事も言ってられない非常に厳しい現状なので、なんとか何処でもいいから滑り込まないと。
貯金はまだまだ安心出来る額はあるが、それを家を借りる上での敷金礼金にしたいので、あまり崩したくはないしなぁ。出来るだけ早くあの家から出ないとね。…帝人君、本当申し訳ない。





「お姉さん面白い!」


ぷはっと吹き出した彼がお腹を抱えながら大笑いしている。何かしらんがウケたらしい。


「大丈夫!俺の奢りだからさ」


いや…、何が大丈夫なんだろうか。一つため息をこぼした。

今日は気分が乗らないので、また後日という事にしたら、ようやく離して貰えた。相手がなかなか食い付いてくるので仕方なかったんだ。彼とあのままお茶してみろ。相手は高校生、私が誑かしたみたく見えるよねぇ。
…結局アドレス教えてしまった訳だけどさ。


夕飯の買い物をして帰ろうと思い足を動かす。帝人君の好き嫌い聞いとけば良かったなぁ。今更だけどさ。





素知らぬふりをした。
気にしたら負けだ、と言い聞かせて。遭遇率が高いのがどうした。気にする事なんてないだろう?私が関わる訳でもないし…。

そして、私は目を瞑る。




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