>>とりあえず責任者呼んで来い。


…何故こんな訳の分からん展開が繰り広げられているんだ…。私は携帯電話とパソコンと、音楽と本とゲームと…あー、とにかく細々とだらだらと生きて行けたらそれでいいのに。



少し伸びてしまったラーメンをズルズルとすすっていた。適当につけたテレビからは、政治のニュースをしているけどあまり興味はない。ただ右から左へ聞き流すように音声を流す。
そんな事より私が今抱えている問題の方が優先だろう。

…仕事<バイト>がない。

東京に来てからだらだらとバイト探しをやってきた。そろそろ見つけなければヤバいと思っていた矢先、母の突拍子もない話が私の急所を深く抉ったのだ。








「あ、千鶴。私明日から1年間、海外出張だから」
「は?」
「それでさ、あんた1人を家に放置じゃ生きてるか分かんないじゃない?知り合いの人で今年から高校生になって、こっちに出てくる子がいるんだって。だから一緒に住んじゃいなよ。何よりここの家賃、フリーターじゃ払って行けないでしょ?」
「え、や…はい?」


このマシンガントークは、仕事バリバリのキャリアウーマンな母である。何時も私に対しての扱いが酷いように思えるが、そんな事気にしてられない。妹や弟はどうするんだとか。いつからそんな話が出ていたのかとか。引っ越しして来て、まだ3週間も経ってないと思うんだけどとか。とにかく突っ込みたい事がありすぎて、言葉に詰まる。


「それに、この家もう解約済みだし」


…もうこの人やだぁ…。








―以上母親との会話である。これは無いわぁー。
…妹と弟はどうやら他の知り合いに預けたらしい。私も一緒じゃいかんのかい!と聞けば「あんたもう成人してんでしょ。自分の世話くらい自分でしろ」だそうで。いや、そう言われたら何も言えないんですけどね…。でもね、急に自分の意志に関係なく上京してだよ。勝手に生きるか勝手にくたばれ、なんて親に言われると思わんよ普通。あ、私の親は普通じゃなかったや…。

これイジメ?ねぇイジメ?虐待ですか?何か妹達と比べると厳しさの度合い激しくない?こんな母親の愛情(と書いてイジメと読む)いらないからね?ねっ?
そんな言葉が吹き荒れる心境の中、母は情け容赦なく私を家から放り出した。さすがに野宿は憚れたので仕方なく…、仕方なくその高校生デビューした子の家に向かった。そして今に至る訳だが。…本当にどうしたもんか。ため息しか出ない。


「あれ?やっぱり居たんですね。一応、インターホン鳴らしたんですけど…」


2人で生活するには狭い四畳半の部屋に、2台のパソコンと炊飯器と小さなテレビが一つ。パソコン1台とテレビは私が持ち込んだ物だが、それでも殺風景だ。


「あ、あぁー。ごめんね、考え事してました」


数日前から上がり込んだ部屋の家主は、今年から来良学園に通う高校一年生。名前は一回聞けば、何となく覚えていそうな珍しいもので、『竜ヶ峰帝人』と名乗った。仰々しい名前であるが、彼は何処にでもいそうな、ちょっと気弱な大人しそうな男の子である。男の子である。そう、男の子…。
――母さんや、私の性別間違えて覚えてない?私女の子よ?女の子と呼ばれる歳でもないけどさ…。否、でもこれはねーよ。

今思ったんだけど。これじゃあ、周りの迷惑かけてるのと一緒だよね?…もうこの際気にしないでおく事にする。



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