私、祥吾のこと好きかもしれない。
そう自覚したのは、祥吾と関わり出して三ヶ月が経った頃だ。
ついこの間、祥吾に彼女が出来た。それで気付くなんてバカすぎる。
お互い名前呼びに変わったり、たまに放課後ゲーセンで遊んだり、そういうことだけで満足してたんだと思う。
中学生の一ヶ月はとても長い。一ヶ月というか、体感的に一日がとても長い。
祥吾に彼女が出来てから、元から長かった一日が更に長く感じるようになった。
「お前、ファーストキスまだ?ってか付き合ったことある?」
祥吾とサボっていると、突然訪れた質問に私は困惑した。
「え、なんで」
「別に意味はねぇけど」
意味がないなんて嘘だ。
どう答えたって、このあと彼女とのことを聞く羽目になる気がする。最悪だ。
「前の学校いたとき、先輩と付き合ってたー」
「へぇ、モテそうだもんな。で、キスは?」
「いきなりされたから別れた」
「うわっその男カワイソー。んでよ、オレついこの間ファーストキス済ませたんだよ。祝え」
ほらやっぱり。話題を振るときは自分の話も聞いて欲しいから。
内心絶望感でいっぱいなのに、祥吾のテンションは明らかに高い。
「えー、なんで私?」
「茶化されるのもウゼーし、でも自慢してぇだろ?」
「オメデトー」
「祝う気ねぇじゃん!」
「まぁまぁ」
祥吾はブーたれながら私のバッグから勝手にお菓子を取り出し食べ始めた。
自分でもよく思うが、良い感情に関して私はかなりわかりやすいと思う。
好きだとか、嬉しいだとか、楽しいだとか、そういうのを隠せないのだ。
祥吾の目には私がどう写ってるんだろう。
下手したらもう好きなことに気付かれてても可笑しくないと思う。鈍感なのか、気付かないふりをしているのか。
知ってて彼女との惚気話をしてきてるなら最悪だ。
自分が自覚したばかりだから、祥吾も気付いてないんだと思いたい。
「お前は彼氏作んねーの?」
「んー」
「カッコいいと思ってるやつとかいねぇの?応援するぜ」
祥吾は無邪気そうな笑顔でそう言ってきた。
もし気付いてる上でのセリフなら完璧に望みないと思う。ここまできたらもうネガティヴ全開だ。
「んー、いまだに他のクラスの人あんま知らないし。あ、黄瀬?だっけ?アイツはカッコいいと思う、かな」
この話題を早く終わらせようとテキトーに名前をあげると、祥吾はしばらく顔顰め、そして声をあげた。
「あー!思い出したアイツか!話しかけたりしねぇの?」
「好きってわけじゃないもん」
「ふーん、話しかけてみりゃいいのに」
「私好きな人いるし」
「えっマジかよ!誰?誰?」
早く終わらせようと思ったのにやらかした。苦しくなってつい私の口から溢れた言葉は更に私を追い詰める。
「祥吾だよ」
「え、は?」
「あ〜、言う予定じゃなかったのに。しばらく一人にして」
「あっ、えーと、ワリィ、名前のことそういう風に見たことなくてさ。彼女もいるし」
焦ったような、困ったような反応からして気付いてなかったらしい。ホントやらかした。
「ごめんね」
「なんで謝るんだよ。フツーに嬉しかったから」
ほぼ私の自爆という形で祥吾への一回目の告白は終わった。