祥吾とはなんの進展もないまま夏が過ぎ、秋が過ぎ、気付けばもう冬だ。
祥吾を好きになってから約一年。
中学生だということを考えたら長すぎる片思いだと思う。
周りはフラれたら落ち込んで泣いて、そして諦めてまた他に好きな人が出来ただとか前に進んでいる。正直羨ましい。


屋上の扉の前で友達(だと私は思っている)の黄瀬と二人きり。
黄瀬が女子にもらったお弁当を奪い取って食べながら、私は胸の内を話していた。

「どうしたら祥吾は振り向いてくれんのかなー」

「俺はショーゴ君じゃないからわかんねッスよ」

「ちょっとは一緒に考えてよ!」

「てかなんで俺なの!?俺ショーゴ君と仲悪いのに!しかも名前ちゃんすげーめんどくさいんスけど!」

「めんどくさい!?私が!?あ、めんどくさい人間だからいけないのかなー……」

「いきなり落ち込むのやめて」

「黄瀬が落ち込むようなこと言ったんだろ」

「あー、わかったかも俺。名前ちゃんのそういうとこがダメだと思うんスけど」

閃いた!みたいなちょっとうざい顔をした黄瀬を促すと、嬉々として語り始めた。

「アンタ、男子の間じゃ明るくて可愛いって言われてるんスよ」

「えっまじ?モテモテ?」

「一部の人間には『髪染めてるし化粧してるし怖い』って言われてるけどね」

「私怖くないよ!地上に舞い降りた天使になんなの!?」

「ねぇ、スルーしてもいいッスか。話続けるよ」

「ヒドいー」

「なんて言うか、名前ちゃんってハタから見ると『イケてんじゃん』って感じなんスけど、関わると結構男っぽいとこあるっていうか」

「どこがだよ」

「そういう口調が!あぐらかいたりするし」

「女子なんて裏じゃみんなこんなモンだよ」

「普通女の子は、好きな男子の前だと取り繕って女の子らしくするの!名前ちゃんにはそういうのが足りないんスよ。だからショーゴ君も友達としてしか見てくれないんじゃないスか?」

「うーん、目からウロコ。黄瀬案外頭働くんだ!」

「親身になってあげてるのにヒドくね!?」

黄瀬は泣き真似を始めた。
あーイケメンなのになんか残念なヤツだなぁ。
祥吾を好きになる前に出会ってたら、私もみんなみたいに黄瀬のこと好きになってたのかなー。

「てかさ、私が祥吾に女の子っぽく振る舞うとかさー、今更じゃない?」

「あー、確かに今更かもッスねー……」

「どうしよー」

「彼氏でも作ってみたらどうッスか?」

「はぁ?」

「だって、ショーゴ君って人から奪うの大好きじゃないッスか」

「あー、そうだね」

「気惹けるかもしれないし、誰かと付き合ってみれば?」

「んー……考えてみる」

黄瀬はやっと解放されたと言わんばかりに、残りの黄瀬ママ特製弁当を食べ始めた。
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