ドンドン、ドンドン。
乱暴にドアを叩く音で目が覚める。
薄暗く散らかった部屋を歩き、玄関まで向かい鍵を開けると、レバータイプのドアノブが下がった。
そして寝起きの私に陽の光が襲いかかる。

「うわっ、眩しっ」

「日曜だとはいえ、またこんな時間まで寝てたのか?」

ドアの前に立っているのは、実家同士がとても近く小学校中学校が一緒で、成人してからもこうして交遊のある森山由孝だった。
幼馴染と言うにはいくらか出会うのが遅かったし、ただの同級生や友達よりも距離感が近いから説明し辛いんだけど。

「私に曜日関係ないし。今何時?」

「もう昼の2時半」

お邪魔しますとも言わず、アパートの部屋に足を踏み入れ電気をつけた由孝は顔を顰めた。

「なんだコレ。どうしたらこんなに汚くなるんだ!名前といるとどんどん女の子に幻滅していく……」

「女の子って歳でもないけどね」

「今日もどうせ引きこもるつもりだったんだろう?デート相手もいない俺の相手してくれ」

「一緒にhuluでなんか見る?」

「名前はなんでいつも家で出来ることしか提案しないんだ!天気もいいし外行こう!」

「えー。夜しか外出たくない」

「たまには日光に当たらないと」

「無理!焼けるし溶ける」

「冬だから平気さ」

由孝はこうして2週間に一回は私を遊びに誘ってくれる。
デートの相手がいないなんて嘘だ。若い頃はドン引きされてたその女の子への態度も成人してからは、酒の席で面白いとか楽しいとか人気なの知ってる。ツイッターでもいつも飲みに誘われてるし。
きっと私の不規則な生活を心配してくれてるんだろう。

「仕事帰りとか、飲んだ帰りとか、結構朝日浴びてるよ」

「寝起きに浴びないと」

「キツい」

「小学生の頃は、よくみんなと近所の公園でドッチボールとかベースボールやったな」

「うわー懐かしー」

「散歩するだけでもいいから、一緒に行こう」

「えー」

「奢るから久しぶりにあそこの蕎麦屋行こう」

「スエットスッピンのままでいい?」

「いいよ」

由孝は「でも次は遠出するからオシャレして。仕事で化粧してオフに着飾らないでどうするんだ」なんて言いながら、私がこの時間に外に出るのを喜んでいるみたいだった。

顔を洗い、申し訳程度に髪をとかし、上着を羽織って外に出た私は、由孝の隣で顔を顰める。
肌がピリピリと痛い。遠慮なく私を照らす太陽の光で頭が痛くなる。
真冬で寒いはずなのに、私はクラクラとして溶けそうだった。
太陽に視線をやると、まるで睨むなとでも言うように私の眼球に光を突き刺した。
実物の太陽より、まるでお日様のような由孝の方が、闇に埋れた私を優しく照らしてくれているような気がした。
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