仕事を終えると、愛しの奥サンから電話がかかってきた。
電話の内容は泣きながら今日もご飯作れそうにないから何か買ってきてという、もう慣れたモノ。
別に俺は嫌じゃない。たまに愛妻の手料理食べるとありがたみが増すってモンだろ?
多分また病み散らかして家ん中悲惨なことになってんだろーななんて牛丼が二人前入った袋を片手に持ちながら玄関のドアを開けると、最初に目に飛び込んで来たのは廊下に散らばる大破した扇風機とカラーボックスだった。
あちゃー、これぶん投げたのか。
奥サンである名前に怪我がないか心配になって、プラスチックなどの破片を踏まないようにリビングへと向かうと、名前はフローリングの床に横たわっていて一瞬焦る。けど目は開いていたから一安心。無表情でこえーけど。

「名前ちゃん、だいじょーぶ?怪我ない?派手にやっちゃったねー」

牛丼をテーブルに置いてから抱き起こすと、名前はボロボロと涙を流し始めた。

「うぅ……かずくん、またやっちゃったよもうヤダ死にたい」

「だいじょーぶだって。俺片付けるし。名前ちゃんに怪我ねーならそれでいいから、な?」

「ごめん、ごめんねかずくん」

「俺が好きで結婚したんだし気にすんなって。ほらお腹空いてるっしょ?飯食おーぜ」

俺が一目惚れでナンパして、家事も仕事もしないでいいから一緒になって欲しいと結婚を申し込んだのだ。名前が謝る必要なんてない。
一目見たときからちょっとメンヘラっぽいなとは思っていたし、付き合っているときから知ってるんだから今更だ。

「で、今日鬱っちゃったのはどーして?」

「たまには私も掃除しようかなって掃除し始めたんだけど、なんかセールスの人が来て予定が狂ってうわーってなった……」

え、掃除してくれようとしてたの?すっげー感激なんだけど。
名前の頭を撫でながら俺は笑いかけた。

「邪魔入っちゃったならしょーがねーな。乱されるの嫌いだもんなー。俺名前ちゃんが掃除してくれようとした気持ちだけですっげー嬉しいわ」

「ホント?嫌いにならない?」

「名前ちゃんには俺の愛が伝わってないワケー?もう超好き、愛してる」

軽く口付けると名前は笑った。どうやら一応笑う元気は出たらしい。
事情を全部知ってる真ちゃんには「仕事して家に帰って全部家事もするなんて疲れないのか?」なんて言われるけど一人暮らしの時と変わらねーし疲れるはずがない。
体力的にしんどい時もあるけど名前が側にいてくれんだからそんなのすぐぶっ飛ぶ。
飯食って一緒に風呂入って髪と体を洗ってやって、体を拭いてドライヤーかけてやって。名前の世話は全部俺がしてやる。
外に出たら事故にあったり通り魔や強姦に襲われるかもしんないから俺と一緒の時以外出ちゃダメだと言い聞かせ、最近納得し始めた名前が可愛くてしょうがない。
過保護すぎると名前の親にも怒られたけどしょーがねーっしょ?心配なんだから。
名前よりも、俺がいなきゃ生活出来ないようにと考える俺のほうが病んでんのかもしんない。
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