ベッドに寝っ転がってスマホを弄っていると、大きな声が自室に響く。
「オイ、いい加減ちゃんと聞け!」
荒北がキレてる。キレてるというよりも、私を叱っている。
かれこれ30分はクドクドと同じようなお説教を垂れ流してるけど、スルーしてるにも関わらず諦める様子はない。
いい加減相手にしたほうがいいかもしれない。
「で、結局何が言いたいの〜?私がバカなの知ってるでしょ?わかりやすくまとめて」
「男遊びやめろっつってんのォ」
「なんで?」
「なんでって、そりゃ決まってんだろ。自分の事大事にしろってこと」
「そんなこと言ってさー……あー……まぁいいや」
荒北は私のこと好きだからやめさせたいだけでしょ?その言葉は言わないでおいた。
コイツは絶対私のことが好きだ。それなのに手も出さず友達というポジションを必死に維持し続けている。しかも自分の気持ちが私にバレてないと思ってる。バカだ。でもそんなバカな荒北のこと嫌いじゃない。
「荒北がさぁ〜、私の事考えてそう言ってくれてんの嬉しい」
「……オゥ」
荒北は私が承諾するとでも思ったんだろう。少し表情が明るくなった。
本当はお前が嫌なんだろ。好きな女他の男に触られたくないよねぇ〜。なんて思ってるけど言わない。
「でもさぁ〜、やめるつもりはないかなー。私は自分の言動にいつも自信持ってるし、誰に何を言われようが、大好きな荒北に言われようが直すつもりなんてない」
荒北の顔が歪んだ。対する私の顔はきっと眠たそうに映ってるだろう。
「聞こうか迷ってたんだけど、聞くネ。なんか悩みでもあんのォ?辛いこととか、トラウマとか、なんかあったのか?」
「えっ、 そんな大それたことないよ。強いて言えば、寂しいのかな〜。わかんない」
「寂しいならオレが一緒に居てやんヨ」
「えー、いいの?友達から都合のいい男ポジションに降格して」
「オメーなあ……」
「冗談だよ〜。私みたいなのと友達でいてくれるの荒北くらいだもん」
これは予防線だ。友達でいてね、なんていう性格悪い私の本音。
荒北ならセフレにでも恋人にでもしてもいい。けど、荒北相手には友達でいるのが一番楽なのだ。