辰也も、私の住むアパートと変わらない広さの部屋に住んでいた。つまり狭い。
人気ホストでも、大抵はボロいホストマンションに住んでることが多い。

「辰也稼いでるんでしょ?広い所引っ越せば?」

「親とは疎遠でね、保証人立てるのが大変で引っ越せないんだ」

「ふーん」

「名前と一緒に住むってなったら、さすがにウダウダ言ってないで親に頭下げに行くよ」

「一緒に住むなんて言ってない。てか付き合ってないしー」

「名前ツンデレってよく言われるだろ」

「言われたことないし、辰也以外にはデレてるよ」

「じゃあ俺は特別だね」

そう言って嬉しそうに微笑んだ辰也は私の髪に唇を落とす。
あー気持ち悪い。さり気なく自然にキザなことをやってのけちゃうなんて気持ち悪い。そんでめっちゃポジティブ。やっぱり辰也は頭がおかしい。
気疲れした私はもう寝ると辰也に告げて狭いベッドへと潜り込み壁と見つめあった。
俺も寝ようかななんて呟く声が聞こえ部屋が暗くなる。するとすぐにベッドへと侵入してきた辰也は、私を後ろから抱き締めてきた。

「狭い、やっぱり帰る」

そもそも辰也の家にいること自体おかしい。
辰也がいきなり私の家に来るのはよくあるけど、私が辰也の家に来るなんてありえないことしちゃダメだった。私の態度が普通だったころはよく来ていた。けどもうダメなのだ。

「帰らないで」

辰也の腕の力が強まる。苦しいと呟けばすぐに弱まったがそれでも纏わりつく腕が離れる気配はない。それどころか項に舌の感触が走る。

「抱かせて」

私は頷いた。グルグルと色んなことを考えているより抱かれているほうが楽だ。辰也に抱かれながら辰也のことを忘れるのって色々アレだけど。
辰也は一度起き上がり、私に覆い被さってきた。


* * *


事後、豆電球をつけて眠る辰也を横目にタバコを吸っていた。
もうすぐ冬に差し掛かるというのに部屋の中は暖かくて、素っ裸でいても寒気を感じることはない。
この暖かい部屋も、辰也のスヤスヤと眠る顔も、私にとっては無機質だ。そうでなければいけないはずなのに、どこかで安心している自分がいる。そんな自分を消し去るように吸殻を灰皿に押し付けた。
早く服着て帰ろう。シャワーは自分の家で浴びればいい。
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