※秋田県が迷子。そして岡村の情報が少なさ過ぎて迷子。捏造たっぷりんご。
私は今までの自分を捨てようと秋田にあるおばあちゃんの家に居候させて貰うことになった。
捨てようと思ったきっかけはつまんない話なので割愛する。
秋田に来て驚いたことと言えば、コンビニの少なさだった。
とりあえず私なんかじゃ就職も出来なさそうだしコンビニバイトしよーなんて軽く思ってたのに、そもそもコンビニが全然ないとか笑えない。
なんとか文明の機器を駆使して一軒だけ見つけると、すぐに電話して面接してもらうことになった。
結果、めでたいことに受かった。よかった。他だとガソスタくらいしか候補になかった。
そんな訳で私は居候ニートから居候フリーターへと昇格出来たのである。
「いらっしゃいませ〜、ただいまからあげちゃんが増量中でぇーす。よかったら買ってくださーい」
お客さんが入ってくるたびにワントーン……いやツートーンくらい高い声を出す。
最近は常連さんの顔も覚えてきたし、言葉遣い以外は結構仕事出来てると思う。自分で思ってるだけで実際はミスの連発だけど。
暇だから商品の前出しでもするかーとお菓子コーナーに向かうと、見知った声に呼び止められて振り向く。
「あ、苗字さん……」
「あ、いらっしゃいませぇー。今日も部活だったの?そんなキミにはからあげちゃんがオススメだよ!」
「あ、からあげちゃんすっごい好物なんじゃ!買っていきます」
「ホント?やったー。実はさー、揚げる数間違えちゃって。店長来る前に売っちゃいたかったんだよね」
「じゃあ全部買って行きます!部活の後はいくらでも食べれる気がするわい!」
声をかけてきたのはよく買い物に来る高校生だった。もちろん仕事中だから営業かけてからあげちゃんをすすめると、なんと全部買ってってくれることになった。よかった店長に怒られずに済む。
そんな優しい目の前の子はバスケをやってて、なんと!身長二メートルらしい。なにそれどうやったらそんなに伸びるんだろう。
私はその子の名前は知らないけど、勝手に仲良くなったと思っている。
身長二メートルもあってコワモテなのに、なんか仕草が可愛いのだ。でもちょっとゴリラっぽいと思ったのはさすがに言えない。
「他に何か買ってく?いつものリンゴジュースも?」
「ワシの好きなもの覚えててくれたんですか……!」
「だっていつも買ってってくれるしー」
実は常連さんの買ってったものはメモして覚えようとしている。前職の名残もあるけど、仕事が出来ない私が今後もクビにならないようにするには常連さんに気に入ってもらうしかない。
でもこの子のはメモしないでもすぐ覚えられた。私天才になったかもしれない。
「あ、そういえば名前聞いてなかったねぇ。なんて言うの?」
「岡村健一です」
「オカムーね。よっし覚えた。私のことは名前ちゃんでいーよ」
「下の名前初めて知りました」
私が名前を教えると、オカムーはなんかテンション上がってた。近くのまいう棒を大量にカゴに入れ始めたのを見て「あ、それ今日発注やめといたのに」とか思いながらも、いっぱい買ってってくれるのは助かるしいいやって思うことにした。店長に「最近あんま売れてなかったから私がオススメしたらいっぱい買ってってくれたんですぅー」って言おう。そうしよう。
「ねー今度オカムーがバスケしてるところ見にいきたいなー」
私がふと思ってそういうと、オカムーは驚いていた。
「バスケ好きなんですか!?」
「んー、あんま知らないけどそんなにおっきいならダンクとか出来るかなーって」
ほら、漫画とかでよくあるダンクシュートとか実際見れたらすごいじゃん。
プロの試合は見に行くほどでもないけど、もし身近な人が出来るんなら是非見たい。
それにオカムーともっと仲良くなりたい。ホントいつも仕草とか可愛いしまじ最近の癒し。
「一応ダンクは出来ますけど……」
「えっすごー!みたい!ちょうみたい!今度試合とかやるなら呼んで!連絡先教えて!」
「えっ、その、ワシなんかと連絡先交換していいんですか」
いいもなにもしたい。こっちに来てからアドレス交換なんて誰ともしてないよ。友達いないし寂しいから無理やりにでも聞きだす勢いだよ。
オカムーは不慣れそうにケータイを弄って赤外線ポートをこちらに差し出してきた。
仕事中だけどいいよね。私もジーパンのポケットに入れていたケータイを取り出して赤外線受信する。
通信を終えてアドレス帳を確認すると、岡村健一という文字は見当たらず、代わりに「モミアゴリラ」という名前のデータが……。
「え、モミアゴリラ?これオカムーのだよね?」
「は!?なぜじゃ!?」
私がケータイ画面を見せると、オカムーはひどく動揺した様子で自分のケータイを弄り始めた。
「劉か!?福井か!?」
なんか言動からして知り合いに勝手に変えられたっぽい。
なんなのオカムー弄られキャラなの。なにそれ可愛い。
私が笑いながらどんまいと軽く腕を叩くと、オカムーは顔が真っ赤になった。
「お、男に気安く触ったらダメじゃ!」
「え、今の触ったうちに入んないんじゃ……」
もしかして女に免疫がないんだろうか。またオカムーの可愛いポイント見っけちゃった。
もう買うものないよねと腕を引いてレジに連れていくと、オカムーは耳まで赤くなっていた。
私は笑いながら大量のまいう棒とリンゴジュース、それからからあげちゃんを8個レジへと打ち込んだ。
合計金額を見て一瞬動きが止まったオカムーが可哀想だったから、3個取り消して自分で買うことにした私はハイパー優しいと思う。
もしかしたら続き物になるかもしれません
気が向いたら続き書くかも(予定は未定)