「名前さん風呂ですよ」

今日は仕事が休みだからとテツくんとDVD見たりして過ごし、テツくんがどこかに消えてしまったので漫画を読んでいると響いた声が聞こえてきた。
多分お風呂掃除したりお湯を張ってくれたりして、多分自分のことを先に洗っていたんだろう。

「冷めちゃいますよ」

私の反応がなかったからか、テツくんはまた声を張り上げていた。大きい声出すの苦手って言ってたから少し申し訳ない。

「わかったよー」

開いたままの漫画をソファーに置き、立ち上がって脱衣所へと向かう。
洋服を脱ぎ捨てて浴室へと足を踏み入れると、むわりと湯気に襲われた。
テツくんは私が入ってももう恥ずかしがったりはしなくなってしまった。多分慣れたんだと思う。

「名前さん座ってください」

「んー」

テツくんが来ている時は、必ず一緒にお風呂に入って全部洗ってもらっている。ホント至れり尽くせりである。
テツくんの前に用意されていた椅子に座ると、シャワーを出し始めた。

「上向いてください」

「はーい」

言われた通りに上を向くと、地肌に温かいお湯の感触。そしてひやりと冷たいシャンプーの感触。
テツくんの手は優しく、丁寧に私の髪を洗っている。幸せだなーなんて思っていると段々と眠くなってきてしまった。

「名前さん、頭洗い終わったので次は体ですよ」

うとうととしていると肩を揺すられた。後ろにいるテツくんの方に向き、抱きつく。

「……それだと洗えないです」

「テツにゃん眠いよー」

「ちょっとだけ我慢していてください」

言われた通り離れ、タオルで丁寧に私の体を洗っているテツくんを眺める。
私の視線に気付いたのか、テツくんは顔を上げた。

「どうかしましたか?」

「テツくんってホントいい男だなーって」

「……いつもはいい子って言いますよね」

いい男だと思ったのは事実だ。いい子だとも思ってるけど。
なんか将来テツくんと結婚するであろう奥さんはすごい幸せそうだよね。羨ましい。
絶対手放したくない。ずっと私だけのモノでいてくれたらいいのに。そんなことを考えていたらいつの間にか全身洗い終わっていたらしい。
お湯で私の体についた泡を流し終えたテツくんが抱き締めてきた。

「どうします?お湯入りますか?一応ぬるめに入れておきましたけど」

「せっかく溜めといてくれたんだから入るー」

私の言葉に立ち上がったテツくんは、腕を引っ張って私のことも立たせてくれた。
狭いバスタブに二人で入ってもお湯が流れ出ていくことはなかった。どのくらい入れればいいかテツくんは把握しているんだろう。
テツくんの足の間に座るように向き合い、首元へと抱きつくと、テツくんも抱き締め返してくれた。

「僕のこと、本当にいい男だと思ってますか?」

「思ってるよ。テツにゃんを一生手放したくないくらいに」

「名前さんから離れていったりしませんよ」

「そう?でも先のことはわからないからねー」

曖昧に笑うと、テツくんは唇を重ねてきた。それに応えるように深くすると私を抱き締めてくる力が強くなった。このまま一つの固体になれればなぁなんて思う私は結構夢見がちなのかもしれない。




なるさんリクエスト『テツにゃんとお風呂に入る話』
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