今日は何故か昼間っから涼ちゃんと会う約束をしていた。基本的にいつもは夜に会うから何だか新鮮。
そこまで大きくない駅の前で涼ちゃんを待っていると肩を叩かれた。
振り向くと、そこにはいつものうように笑みを浮かべた涼ちゃんがいた。

「名前っち一週間ぶりッスねー」

「久しぶりー」

「あ、名前っちって俺ん家来たことないッスよね?」

「うん」

「じゃあ今日は俺ん家行こっか」

いつもはラブホだから家バレしたくないのかと思ってたけど、別にいいらしい。
だったらラブホ代払うよりいつも家のほうが良かったんじゃないのかな。

「俺やっと実家でて一人暮らし始めたんスよ。と言っても実家よりちょっと駅まで近くなっただけだけど」

どうやら今まで実家暮らしだったからラブホに行っていたらしい。
多分相変わらずバイトや仕事はしていないんだろうし、結構な金額貢いでもらってるのかな。
そんなことを考えていると、涼ちゃんが手を絡めてきたので握り返す。

「コンビニ寄ってお菓子とか買ってくッスよ」

「家で何するの?」

「面白そうなDVD何枚か借りたんで一緒に見ようかなーって」

涼ちゃんは何だか楽しそうだ。それに釣られて私も笑みが零れた。
コンビニに着くと、涼ちゃんはカゴいっぱいにお菓子や飲み物を入れている。多分会計はいつも通り涼ちゃん持ちなんだろう。
私は軽いお菓子が入った袋を、涼ちゃんは重たい飲み物が入った袋を持って相変わらず恋人繋ぎで住宅街を歩く。
5分も歩いていると、涼ちゃんが立ち止まって「ここッス」と新築っぽいアパートを指差した。

「キレイなアパートだね」

「中もキレイなんスよ」

そういって手を引かれ二階へ続く階段を登る。ドアを開けてもらったのでお邪魔しますと中に入ると、涼ちゃんが言っていた通りすごいキレイだった。

「キレイに片付いてるね」

「俺A型ッスからねー」

涼ちゃんはABだと思っていたからちょっとビックリ。
どうやら間取りは1DKらしく、広めの部屋に通されるとベッドやテーブルなどが全て置かれていた。
涼ちゃんがロータイプのソファーに座ったので私も隣へ腰掛ける。

「引っ越して初めて人入れたかも」

「私一番乗りなの?やったー」

「これからも名前以外入れるつもりないよ」

私の肩を抱きこめかみに口付けてきた涼ちゃんはやっぱり女慣れしてるなぁと実感。
こういう時だけあだ名ではなく呼び捨てで呼ぶところとか口調が変わるところとか本当すごいと思う。
私は思わずときめいてしまった。
しばらく寄り添ったまま無言で過ごしていると、涼ちゃんが急に立ち上がる。

「あー……DVD見よっか」

「うん」

自分の行動に照れたのか、頭を掻きながら涼ちゃんはDVDをセットし始めた。
私がちゃんと反応返せなかったからかな。ちょっと申し訳ない。
お菓子を食べながらDVDを見たりしていると、あっという間に時間は過ぎた。


 * * *


「まじ名前っち弱すぎ」

「だってアクションとか全然やらないもんー」

DVDも見終わって何故か涼ちゃんとアクションゲームで対戦していた。
涼ちゃんは全く手加減なんてモノしてくれないから惨敗。ひどいちょっとくらい手加減してくれてもいいのに。
私がコントローラーを床に置くと、涼ちゃんは抱き締めてきた。

「あれ、もしかして拗ねちゃったッスか?」

「拗ねてないよ、飽きただけ」

涼ちゃんは嬉しそうに私の頭を撫で始めた。ペットを可愛がる飼い主みたいだ。
撫でられるのは気持ちいいし大好きだから、勿論拒否せずにされるがままになる。
なんか幸せだな。元彼にこういうことされたことなかったし。涼ちゃんは彼氏じゃないけどたまにまともな彼氏がいたらこんな感じなのかなって考える。いや、涼ちゃんゲスいしまともじゃないけど。

「名前っち今日泊まってくよね?」

「ホテル泊まるかと思ってたから着替えは持ってきたよ」

「もういっそずっと居ればいいじゃないッスか」

「こっからだとバイト遠いよー」

「そーッスよねー……名前っち飼いたいなー」

「私ペット?」

「ちゃんと面倒見るッスよ」

私はその言葉にすぐ捨てられそうだと笑った。涼ちゃんも冗談だったのか笑っていた。
今の関係は曖昧で壊れにくい。それを壊したくない私たちはきっといつまで経っても冗談ばかり言って曖昧でいようとするんだろう。



ユウさんリクエストでバンドパロ番外編『黄瀬とお家デートする話』
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -