辰也くんはまだ大変だろうと最近は私持ちでデートしている。
私が好きでしてることだし、辰也くんは会計の時私が払うのを嫌そうな表情で見てるし、もしかして自分は蜜なのかなって思いは消え去っていた。
そんなある日、辰也くんがすごい申し訳なさそうな表情で頼みごとをしてきた。

「名前ちゃん、こんなこと頼みたくないんだけど……最近困ってて……少しでいいから助けてくれないかな?」

消え去った頃にこんなこと言われたもんだから、もしかして頼られてる?と勘違い。
だって騙されてるなんて考えたくもない。

「私に出来ることだったら力になるよ!どのくらい?」

「ちょっと機材のことがあって家賃滞納してしまってね…10万くらい、平気かな?」

「えっと、ちょっと待ってね」

涼ちゃんに内緒でキャバのバイトを続けていた私は、最近結構お財布の中にお金は入っている。
だけど、自分で稼いだお金は8万しか入っていなかった。
そして涼ちゃんからもらったお金が5万円。
辰也くんとのデートで涼ちゃんからもらったお金を使ったことはない。それはさすがに悪いかなっていう私の良心。
だけど、困っている辰也くんを目の当たりにして断れるわけがない。
私は心の中でめっちゃ涼ちゃんに謝りながら、辰也くんにお金を渡した。

「ありがとう。彼女にこんなことさせたくなかったんだけどね……。俺、格好悪いよね」

「……彼女?」

「えっ、名前ちゃんは俺の彼女だろう?」

私たちはいつ付き合ったんだろう。そんな疑問を抱きながらもその言葉が嬉しくて頷いた。


 * * *


それから数日後。今日は涼ちゃんの家に泊まりに来た。
涼ちゃんは珍しく不機嫌らしく、ソファーで殺気を放ちながらタバコ吸ってて私はどう対応していいのか困っていた。

「涼ちゃん機嫌悪くない?」

「……別に」

なんかすごい素っ気無くて落ち込んだ。こんな態度取られたことないから尚更。

「ねえ、私いない方がいい?帰ろうか?」

「は?なんで?」

いつもの口調が消え去って睨んできた涼ちゃんに腕を掴まれた。
痛いよ、と口に出そうとしたところでいまだ涼ちゃんが睨んでいることに気付いて口を閉ざす。

「帰れなんて俺一言も言ってないから」

「だって、」

「名前はなんで俺が怒ってるかわかってる?」

いつもは名前っちって呼んで甘い台詞吐くときだけ呼び捨てするからまじで涼ちゃんキレてるっぽい。
そして機嫌の悪さが私のせいだったなんて気付かなかった。
涼ちゃんはタバコを灰皿に押し付けて私の方に向き直った。

「返事は?なんで俺が怒ってんのかわかるかって聞いてんだけど」

「わかんな」

い。と続ける前に押し倒されて覆い被さられた。
怖い顔で見下されてちょっと泣きそうになるけど我慢。

「名前、俺そのうち痛い目みるって言ったよな?」

「うん」

「なんで俺の忠告聞かないの?辰也サンに貢がせられてんのになんで俺に相談しないの?」

「ちが、私が好きでしてるだけだもん!」

何で知ってるの。そう思う前に口が勝手に動いていた。
私の言葉に涼ちゃんは更に怖い顔をした。

「その金は俺があげた金?」

低いトーンで言われて思わず首を横に振ったけど、涼ちゃんの声が更に低くなるだけだった。

「じゃあ貢いでる金はどう調達してるんだよ。名前はコンビニバイトだから何万も貢げるはずねーよな」

「……キャバでバイト始めたんだ」

「……ふーん。俺すんなっつったよね?忘れた?まだ俺があげた金貢いでたほうがマシだったんだけど。マジなんなワケ?」

ここまできたら誤魔化しても無駄かなって本当のことを話すことにした。けどこれも間違いだったっぽい。
顔が近づいてきたと思ったら次の瞬間にはキスされて、唇を噛まれた。

「いっ……」

「俺は名前がいるからってセフも切ったのに、名前は他の男とヤって挙句の果てには貢いでるとかさ、まじ笑えるわ。俺以外のヤツ切ってくんない?」

「辰也くんは、ムリだよ……」

「は?なぁ、俺は名前のなんなワケ?いいヤツぶんのも疲れたわ」

そう言って私の服を脱がし始めた涼ちゃんは今日始めての笑みを浮かべた。
笑みっていってもなんというか、怖い笑みだけど。


 * * *


行為自体はいつもと同じだった。
首絞められたり噛まれたりするのもいつものこと。
だから全く違和感はなかった。でも行為が終わった瞬間に変な違和感に襲われた。
まさか。そんなわけない。そう思っても違和感は拭えなくて焦ってくる。

「名前っち。すっごい顔してるけどどうしたの?」

いつも通りの笑顔で私の頭を撫でた涼ちゃんに、勇気を出して問いかける。

「涼ちゃん、ちゃんとゴムつけてくれた……よね?」

「つけてないよ」

笑顔から真顔に変わって言い放った涼ちゃんに思考が止まる。
さっきから膣からお尻の方へと、何かが流れていくような変な感覚がしてたけど、まさか、そんなハズない。

「中に、出してないよね?」

「出したよ?」

だから何?いうように至って普通にサラっと言葉を投げかけられた。
ピルなんてものは飲んでない私は段々焦ってきてどうしたらいいのか分からなくなる。

「なん、で?」

「ガキでも出来たら俺のモンになる他ないっしょ?大丈夫ちゃんと責任は取るから。あー……、でも辰也サンとまた会ったりしたらどっちの子かわかんなくなるし責任は取れなくなるけど。だからいい加減俺だけのモノになった方がいいと思うよ」

「なに、それ」

「俺散々優しく忠告はしたはずッスよね?聞かなかった名前っちが悪いんだって」

「でも……!」

「あ、辰也さん本営が得意だけど、まさか彼女になったりしてないッスよね?あと、ネックレスもらったりとか」

心当たりがありすぎて、思わず無言になると涼ちゃんが抱きしめてきた。

「名前っちゴメン。でも本当のことだし俺も名前っちが大事なんスよ。仲直りしよ?」

色んなことがショックでぐちゃぐちゃになった私はされるがままになって涼ちゃんにキスされた。
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