※今吉嫌われ展開っぽい+今吉暴力男っぽい
なぜかあの流れで翔一くんもラブホに来ることになった。うん。おかしいよね。
翔一くん呼んだのに大輝は私と泊まる気満々とかおかしいよね。普通俺は帰るぜーってなるよね。
まさかの3Pフラグ……って絶望したけど杞憂に終わった。
「あー、美人やないし好みやないなあ。見といてやるから二人でヤっとき」
翔一さんが部屋に入ってきてベッドに座っている私を見たときの第一声で、絶望以上の精神的ダメージを与えられた。
わかってるよ、自分が美人じゃないのはわかってるよ。でも面と向かって言うとかヒドい!
部屋の片隅にあるソファーへと腰掛けた翔一くんはケータイを弄りながらこちらを見もせずにあくびしている。
「じゃー名前もう一発ヤっとくか」
「え、いや、あの、うん」
しどろもどろになりながらなんとか頷く。
いや私まじでこんなことしてる場合じゃないんだよ。
いっそのこと大輝が翔一くんに技かけてオチてるうちにケータイ弄って消去とかもう強制執行とかしか思い浮かばない。
私が考えていた本来の予定は翔一くんとラブホ入って、翔一くんがシャワー浴びてるうちにデータ消去して逃げる予定だったのに。
私の様子に気付いた大輝が翔一くんに向かって言葉を発した。
「翔一サン帰んねーの?」
「おん?あー、帰んのも面倒やから一緒に泊まってくわ。視姦する気やからせいぜい楽しませてや」
とか言いながら視線はずっとケータイ。多分こっちの行為を見るつもりはない……と思いたい。
私は翔一くんはこの空間にいないと思って大輝とコトに至ることにした。
* * *
本日の二回戦が終わってだるい体に鞭を打ち、上半身を起こすとソファーに横になって寝息をたてる翔一くんが目に入った。
ケータイはテーブルの上。もしかして、今ならいけるんじゃないだろうか。
音をたてないようそーっとベッドから降りると、大輝が私を見て首を傾げた。
「おい、なにや、」
「シーッ」
声出すなと口元に人差し指を当て、ゆっくりとテーブルへと歩み寄る。
翔一くんの様子を伺いながらケータイを拝借するけど気付く気配も起きる気配もない。
私は相変わらず慎重に音をたてないようケータイを操作し始めた。
ケータイにロックかかってるかと思ってたけどかかってなくて顔が緩む。
でもデータフォルダを開いて、画像を確認しようとするとそこでロック画面に。
ケータイ開いたときはロックかかってなかったから安心したけど、まさかデータフォルダにかけてるなんて。
大輝の方へと振り向き、心当たりのある数字を聞き出そうと足を一歩踏み出すと、がしりと肩を捕まれた。
「ぎゃっ……」
「なに、しとるん?」
多分生きてきた中で一番びっくりした瞬間は今現在だとおもう。
びっくりしすぎて心臓バクバクして痛い。
翔一くんのケータイを握り締め、心臓に当てながら振り返ると、怖いくらいの笑みを浮かべた翔一くんが私を見つめていた。
「う……」
マズい、言い訳とか考えてないよ。
言葉に詰まる私に翔一くんは笑みを深めた。
「なにしとるん?って聞いてんのやけど」
「あー、そのですね」
「俺のケータイに、何か面白い画像でも入っとった?」
面白い画像って、ロックかかっててフォルダ内見れもしなかったけど!
それにしても、なんで私がデータフォルダ開いたのがわかったんだろうか。
思わず大輝へと視線を戻すと、哀れむような表情を浮かべていた。
「名前、翔一サン相手じゃ俺助けてやれねーわドンマイ」
「女友達1ちゃんの写メは消せたんか?」
ニヤニヤと馬鹿にするような顔で私の手からケータイを取り戻した翔一くんは、ケータイをソファーへとほっぽると私の腕を掴んで歩き始めた。
連れて来られたのはバスルームで、蛇口を捻ってシャワーを出した翔一くんがそれを私へとぶっかける。
冷たい水を頭から被り、余計に心臓がバクバクいい始めた。
私服じゃなくてバスローブだったのが幸い。
「人のケータイ勝手に見たらアカンやろ?」
「ごめ、」
一応謝っておこうとは思っても(本当は謝りたくないけど)、シャワーがかかってるせいで喋れない。
息が出来なくなってきた頃、大輝の声が浴室に響いた。
「ちょ、翔一サンなにやってんだよ!」
「悪い子にはお仕置きが必要やろ?」
「たかがケータイくらいで……おい名前大丈夫かよ」
「ケータイ見られたくらいやったら普段怒らんで?でも大事なデータ消されそうになったら誰でも怒るやろ」
「ゴホッ、だいじょ、ぶ」
この人危ない人だ。後押ししたの私だけど繋がっちゃダメだよ女友達1ちゃん全力で逃げてーなんて考えながら咳き込んでいると、大輝が背中をさすってくれた。
そんな様子を眺めながら翔一くんは言葉を続ける。
「名前ちゃん自分がバンドマンの間で有名なの知らんやろ?」
「は、なに、」
「カイジョウの糞麺涼太に蜜横流しさせるほどの名器持った名前ちゃん、やろ」
「なん、」
「噂のギャとつるんどるのはどんな子かって情報も入ってくるんや。女友達1ちゃんと仲いいらしいなぁ?大輝から電話きて名前って名前聞いた瞬間すぐ仮説立てれたで」
どうやら翔一くんはかなり頭が良いらしい。
乾いたタオルを私に放り投げた翔一くんは荷物を持って部屋から出ていった。
ごめん女友達1ちゃん、任務失敗したよ。まじ申し訳ない。