「もしもーし!女友達1ちゃん!聞いて!」

「名前ちゃんどうしたの?」

涼ちゃんに泊まってけばと誘われたのを断り、涼ちゃんが帰るのを横目に涼ちゃんの地元駅に留まったまま私は真っ先に女友達1ちゃんへと電話した。
一時間前に別れたばかりだからか、女友達1ちゃんちょっと驚いてるっぽい。
とりあえず一秒でも早く伝えたいとさっそく本題へと入ることにした。

「あのね、翔一くんと繋がるとしても繋がらないとしても、ひとつ片付けたほうがいいことがあるんだよね……」

「え?」

「とりあえず、ハメ撮り動画?写メ?どっちかはわかんないけど消させないと……」

「あっ、そっか……」

「成功率半々くらいだけど、ちょっと私が動いてみるね!そういうのスッキリしないとちゃんと考えられないだろうし。女友達1ちゃんはちょっとゆっくりしてて!」

「でもいいの?」

「悩んでるときに翔一くんと会ったってアレじゃない?」

アレってなんだって感じだけど女友達1ちゃんには伝わるって信じてるよ私!語彙が少ないのがツラい。
女友達1ちゃんが渋々頷いてくれたから、私は電話を切って深呼吸した。
本当は半々って言ったけど、成功率なんて10%あればいいほうだと思う。
私はアドレス帳のた行を開き、目当ての名前にカーソルを合わせまた深呼吸した。


 * * *


家に帰りもせず、また都内方面への最終電車に飛び乗って新宿に着いた私は、泣きそうになるのを抑えながら目的の人物が来るのを待つ。
多分今の私絶望的な表情してる。でも絶望的なのは世界じゃなくて私の心境だから大丈夫。終わりそうで終わらないでいるよ。
なんて某バンドの曲と自分の状況照らし合わせてわけわかんないこと考えていると、腕を捕まれた。びっくりした。

「キャー」

「某読みじゃねーか。お前散々人のこと無視しといて急に呼び出すとかありえねー」

「でも来てくれたんだね、ちょう優しいよ大輝ー」

「俺は優しいんだよ。それなのにどこかの誰かさんは無視するしよー」

「根に持ってるね……」

私が呼び出したのは大輝だった。翔一くんと繋がってなんていないし、ツテがあるとしたら大輝くらいっていう安易な考え。
女友達1ちゃんから紹介ってなると、それもそれで翔一くんも気分はよくないだろう。
オキニに他のギャ紹介されるとか、多分イヤだと思う。
そんなわけでなんとか翔一くんを紹介してもらおうって思った私はあれだけ会いたくなかった大輝を呼び出したのだ。
本当なら大輝が翔一くんのケータイからデータ消してくれるのが一番成功率高そうなんだけど、女友達1ちゃんも他の人にハメ撮られたって知られたりデータ見られるのは嫌だと思うしその方法は除外。

「どっか行きてーとこあんのか?俺飯食ったけど名前は?」

「私も食べたよ」

「じゃーラブホ行くか」

「う、うん……」

別にラブホ行ったりヤるのが嫌なわけじゃない、私糞ギャだし。相手が元本命麺の大輝だっていうのが問題であって……。
動揺してしまった私に大輝は気付かず腕を引いて歩き始めた。
あー二度目の失態。黒歴史になるよ。潤む視界で歩きにくい。

「名前歩くのおせー……どーしたんだよ、なんか嫌なことあったから俺呼んだのか?」

振り向いた大輝が私の表情を見て困ったような顔をした。
それもそうだ。いきなり連絡して挙句の果てに勝手に泣き出すとか困るに決まっている。
めんどくせーって帰ってもいいのに頭ポンポンされて、私は更に涙がとまらなくなる。
私が泣いているのは勝手に想像した大輝が壊れるのが嫌だという大輝を否定してるのと変わらない理由なのに。

「ごめんね、困らせて」

「ヤらせてくれんなら話くらい聞いてやってもいーぜ」

「……でもそういうこと言わないで」

やっぱり私の想像とは違う大輝に泣きたくなった。
ごめんとか思った私の良心返してー。


 * * *


情事後にベッドで大輝に腕枕してもらっていた私は、さっそく本題に入ることにした。

「ねえ、お願いがあるんだけど……」

果たして上手く行くだろうか。まぁこれ乗り越えても難関が待ってるんだけど……。

「なんだよ、本カノにして!とかか?無理だな」

「いや、ちょっと翔一くん紹介して欲しいんだよね」

「は?ヤったあとに頼むことじゃねーだろあー萎えたわ」

「うん、もう萎えてるよね」

「鋭いツッコミだな。あークソなんで翔一サンなんだよ」

大輝が腕を動かして私の頭が落ちた。下に枕あってよかった。ベッドでも直撃すると痛いし。
私は大輝に抱き着いて話を続けた。

「別に翔一くんと繋がりたいわけじゃないんだけど、どうしても一回会わなきゃいけない理由があるんだよね」

「その理由っての話せって」

「ちょっと他人のプライバシーに関わるから私からは説明出来ないなぁ」

「あー、まぁなんとなく察しはついたわ。別にいいぜ。で、名前はどんな礼してくれんだよ」

「へ?」

「まさかタダで紹介してもらえるとか思ってんじゃねーだろーな」

普通にタダで紹介してもらうつもりだった……というかヤらせてあげたじゃんそれじゃダメなの?
私がよほどすっとぼけた顔をしていたのか大輝が吹き出した。失礼な。

「私あんまお金持ってないよ?」

「金いらねーから体で払え」

「え、今ヤッたばっかだよね」

「ちげーよ、セフになれっつってんだよ」

えええええ。今日ちょっとは慣れたとは言ってもやっぱ元本命とは繋がりたくないよ。でも、たまに会ってヤるくらいで翔一くんと会えるならいいかな。
私が頷くと大輝はケータイを取ってなにやら電話し始めた。
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