涼ちゃんに飲み行こうって誘われたはいいけど、また麺飲みなんじゃないかと警戒してしまう。麺飲みとかもう前回で懲りたよ。これ以上好きなバンドマンがいたらきっと死ぬ。
涼ちゃんと一緒に電車を乗り継いで都内の居酒屋へと向かうと、麺飲みよりも衝撃的なことが待っていた。

「あれ?女友達1ちゃん?なんで?」

涼ちゃんの後をついて席へと向かうと、そこには天帝ライブと桐皇ライブがきっかけで仲良くなった女友達1ちゃんが座ってお酒を飲んでいた。
え?どういうこと?混乱して思わず足挫いた。ただ立ってただけなのに挫いた。

「え、涼太君説明してなかったの?」

「名前っち驚くかなーって」

「はぁ……」

「ちょ、溜め息吐かないで欲しいんスけど!」

なんだか楽しそうに話している二人が知り合いだということは把握した。でもそれだけで未だ状況は掴めていない。二人のやりとりにモヤモヤとした何かが心の中で蠢いたのは気付かないふりをした。

「女友達1っち色々悩んでるっぽいから俺と名前っちで相談乗ろう会ッス」

「あ、うん?」

女友達1ちゃん悩みごとがあるのか……。私気付かないでくだらないメールばっか送っちゃってたよ。
そういうことかと納得した私は席に座ろうとした。けどどこに座っていいのか悩んでまた立ち尽くす。
久々に会ったし女友達1ちゃんの隣に座りたいけど、相談に乗るなら向かいの方がいいのかな。
一人悩んでいると、涼ちゃんが女友達1ちゃんの向かいの席へと腰掛けた。

「名前っち座らないんスか?」

「どこ座ろうかなーって」

「相談乗るなら顔見えるほうがいいよ」

隣の椅子をポンポンと叩いた涼ちゃんに、やっぱそうだよねとちょっと落胆しながらも従うことにした。つまらぬことで悩んでしまった……なんて脳内で一人侍ごっこしてると女友達1ちゃんが口を開く。

「今日は私が奢るから好きなもの頼んでね」

「え?涼ちゃんが奢ってくれるよ。ね?悩んでる人に奢らせたりしないよねー?」

「別にいいッスよー」

「じゃあ遠慮なく」

涼ちゃんが女友達1ちゃんにまで奢らせようとしたら私キレるとこだった。涼ちゃんが人の友達にまで貢がせるようなヤツじゃなくて心底よかったと思う。
涼ちゃんの奢りだしとメニューを開いて涼ちゃんに注文してもらい、早速本題に入ることにする。

「女友達1ちゃんの相談って?深刻?」

「女友達1っち糞麺に引っかかったんスよねー」

「その言い方やめて……」

「ちょ、糞麺って、」

え、女友達1ちゃん糞麺に引っかかったの?どこの糞麺だよ。私が制裁するよ。心当たりといえばひとつある。

「まさか涼ちゃん?」

「ぶっ……」

「ちょ、名前っち俺のこと糞麺だと思ってたんスか!?泣くよ!?」

「……由孝さん?」

「スルーとか名前っちヒドい」

涼ちゃんも参加してるってことは涼ちゃんも知ってるバンドマンなんだろう。そうなると由孝さんしか他に思い浮かばない。
泣き真似始めた涼ちゃんをスルーして笑いを堪えながら首を横に振った女友達1ちゃんから出てきた名前で衝撃を受けた。

「桐皇ギャの名前ちゃんに言っていいのかわかんないんだけど……桐皇の翔一さん」

「ちょ、桐皇は糞麺の集まりなの?大輝といい……あ」

やべえしくった。涼ちゃん潰れてずっと寝てたみたいだから大輝と抜けたことは知らないんだった。
なんか形容しがたいすごい表情で私を見てきた涼ちゃんは相変わらずスルーすることにする。

「別に翔一くん本命じゃないし大丈夫だよ。翔一くんと何があったか聞いていい?」

「名前ちゃんとライブで連絡先交換した日の帰りにさ……出くわして流れで……」

「あぁ……うん。そういうことあるよね……」

涼ちゃんと出会ったときのことを思い出して私は頷く。
女友達1ちゃんは嫌なことを思い出しているのか顔を顰めていた。

「でさ、本性ゲス極めてる翔一さんにハメ撮られたんだよね……」

もう本当あるあるすぎて聞いてるだけで女友達1ちゃんと同じように顔を顰める。
思わず涼ちゃんを横目で見ると涼ちゃんはすっとぼけた顔してそっぽを向いた。

「……涼ちゃん、ハメ撮りする男の心境を簡潔に述べよ」

「自分が楽しみたいだけッスー。あぁでも翔一サンは俺以上の糞だから……正直わかんないわ」

涼ちゃん以上の糞麺ってどんなんだよ。ドマイナーからメジャーになると糞度もアップするの?なんなの?

「使用目的がわからないと安心できないもんね……翔一くんとは一回きり?」

「いや……それが連絡ちょいちょい来るんだよね。桐皇のライブ楽しいから通いたいけど、翔一さんとこれからどうしたらいいのかもわかんなくて」

「ちなみに前に女友達1っちには言ったけど、翔一さんが貢ぎ以外でヤリ逃げしなかったの女友達1っちが初めてなんスよー」

「それオキニってことだよね」

「俺はそう見てるんスけど」

「もうオキニなら腹括って繋がっちゃえー」

「ちょ、名前っち投げやりすぎッスよ」

「だってさぁ、こうやって悩むってことは翔一くんのこと大嫌いって訳じゃなさそうだし!だったら開き直っちゃったほうがいいって!私なんて大輝に一回も連絡返してないし」

どうでもよかったら私みたいに気にせずメールも電話もスルーすると思う。
経験と持論だけでしかアドバイスできないのがちょっと悔しいなぁ。
私みたいに簡単に糞ギャへと落ちていけないから悩んでるのかもしれないし。それでも、やっぱり悩んでいるよりは落ちちゃったほうが楽だと思う。

「人生楽しんだモン勝ちだよ!」

「そう、なのかな……」

「開き直ってそれでも翔一くんとは繋がらないってなったら、気にせずメールも電話も無視して、ライブは私と一緒に行くとか色々方法はあるし」

私みたいな他のバンギャと一緒にいれば、さすがに翔一くんも下手に絡んでこれないだろう。
あとは、ひとつ問題があるとしたら、アレだな……。
とりあえず涼ちゃんに聞かれたらマズいから、家に帰ったら電話で女友達1ちゃんに私の計画を伝えよう。
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -