午前4時。最後の客を終えて、原澤ちゃんが5時に事務所を閉めるまで待たなきゃいけないから待機所でぐだぐだとしていると、スマホから着信音が流れた。
発信元を確認すると和成くんで、一瞬どうしようか迷い結局出ることにした。

「もしもし名前ちゃん?起きてたー?」

「うん、今仕事の待機所ー」

「あ、仕事か。何時に終わんの?」

私の職業は言ってないが、今ので夜の仕事だということは気付いただろう。
聞かれれば教えるし、聞かれないなら自分からは言わない。

「5時だよー」

今日は家まで送ってもらう予定だ。ホスクラは待機所の最寄り駅周辺だと秀徳くらいしかわかんないし、もう秀徳には行かないと決めたから最近は別の駅か家に送ってもらっている。

「じゃあ今日はムリか。すぐ寝たいっしょ?デートしたかったんだけど、明日休み?」

「清志くんになんか言われてないの?」

「あ、んー、言われてねぇよ?」

電話口でも動揺が伝わってくるんですけど。これ確実に何か言われたな。タバコに火を点けながら会話を続ける。

「なんか清志くんと揉めてさー、もう秀徳行かないし営業しても無駄だよ」

「お、好都合だなー。別に営業とかじゃないし名前ちゃんと遊びたいだけだからさー、いいっしょ?」

「私と遊んでもつまんないけど、それでもいいならいいよー」

「よっし、じゃあどこで待ち合わせする?」

私の家の最寄り駅を告げると、俺ん家の最寄り駅じゃん!と返された。まじで。世間狭すぎだろ。まぁ店から二駅だし働くなら近いとこがいいんだろうなと察する。

「じゃあ明日11時に駅前集合な!」

「待って、11時ってどっちの」

「そりゃ昼前に決まってるっしょー」

まさかの午前。まぁいいかと電話を切り、原澤ちゃんが終わるのを仮眠しながら待った。


 * * *


翌日、駅前で待っていると和成くんは私より5分くらい遅くに来た。お互い遅刻だ。

「ゴメン、遅くなっちったー」

「私和成くんより5分も前に来たんだから今日は和成くんの奢りねー!」

「おーっとマジかー。6分早く来てればよかったー!」

和成くんはノリがよくて一緒に居て楽しい。
そして和成くんの私服を初めて見た。髪もセットされてないし、服もシンプルに纏まっていてホストには見えない。でもカッコいい。
和成くんも仕事モードじゃない私は初めて見たのだろう。なんでかはしゃぎ始めた。

「名前ちゃん髪巻いてる!そのワンピース似合ってるしぶっちゃけすげータイプ」

仕事で髪を巻いてもお風呂に入ったりですぐに取れてしまうし、服装もカジュアルなほうが客受けがいいから仕事の時はそういった普通の服装をしているけど、今日は私の趣味全開だ。白地にピンクの薔薇がプリントされたシフォンのキャミワンピにジージャンを羽織り、大好きな巻き髪にしている。
それが和成くんの好みにヒットしたらしく、抱き付かれた。

「あ、この前の香水つけてる。すっげーいい匂いだよなー」

「アナスイの水色のやつだよー」

「つけてる子結構いるよな。でもなんか違うんだよなー。名前ちゃんの匂いと混じってんのかな」

「私の体臭フローラルだから」

「俺なんて薔薇だぜ?」

そんな風にバカっぽいやりとりをして笑った後、どこに行こうかと二人で頭を悩ませる。
和成くんがとりあえず他の駅行こうぜと言ったのでそれに頷いた。

「手繋いでいー?」

「お客さんいない?」

「さすがにこの駅にはいないっしょ」

じゃあいいよと手を差し出すと、指を絡められ恋人つなぎされた。
私の歩調に合わせてゆっくり歩いてくれる和成くんにキュンとする。やっぱこういうドキドキ感っていいよなー。そう思ってる私の顔はニヤけてるだろう。

「優しい優しい和成サマがバッグ持ってあげるのだよ」

「真ちゃん口調……!ありがとなのだよ」

「重っ!?何入ってんのコレ」

「いつ泊まりになってもいいように化粧品とか着替えとか毎回入れてるー」

「それにしても重すぎっしょ」

和成くんが苦笑し、私もそれに釣られて苦笑した。
改札に向かうためエスカレーターに乗ると、和成くんが私の後ろへとまわった。
振り向くと、同じ目線の和成くんが腰に手を回してくる。

「どーしたの?」

「いや、他の男にパンツ見せたくねーなーって」

ちらりと和成くんの後方を見ると、若い男の人もエスカレーターに乗っている。だからわざわざ後ろに行ってくれたのか。

「ありがとー!和成くんかっこいいー」

「名前ちゃんにかっこいいとか言われるとちょう照れるんだけど」

はにかんだ和成くんは、今度はカッコイイではなくなんだか可愛かった。
エスカレーターを降り、電車に20分ほど揺られると、秀徳近くの駅や地元の駅とは違いかなり大きい駅にたどり着いた。

「とりあえずなんか食べよー?おなかすいちゃった」

「お、いいねー。名前ちゃん何食べたいー?」

レストラン街を目指しゆっくりと歩いていく。勿論恋人つなぎしたままだ。和成くんって本当一緒に居て楽しいなー。
まだホスト始めたばかりらしいけど、これならすぐにナンバー獲れそうだ。

きっとナンバー入りしたら秀徳の客でもない私とは遊んでくれなくなるんだろう。ちょっと寂しい気もするけどホスト相手だししょうがない。
あれ食べたいこれ食べたいと二人で色んな店を見て周り、結局お好み焼きを食べることになった。
和成くんは結構焼くのが上手かった。よく真ちゃんと一緒に行くらしい。彼女とか客じゃないの?と思った私は悪くない、と思う。
でも一回振りかぶりすぎて真ちゃんの頭に綺麗に乗ったという面白すぎる話を聞いて、そんな考えはすぐに忘れ去った。

「マジあんときの真ちゃん怖すぎたわー」

「私も見たかったんだけど」

「じゃあ今度は真ちゃんと三人で行こうぜー」

「え、またお好み焼き真ちゃんに飛ばすの!?」

「あー、流石に二度目は俺死ぬかもな……」

遠い目をしてる和成くんは、一体真ちゃんにどんな怒られ方をしたんだろう。ちょっとそれも見たかった。
おなかいっぱいになり、睡眠時間が足りてなかったのかあくびが漏れる。
名前ちゃんのあくび移ったーなんていいながら口元を押さえている和成くんも眠くなってしまったのだろう。

「なー、どっか入ってちょっと寝ねー?」

「ラブホかネカフェかなー」

「夜どっか泊まってくっしょ?」

「んー」

「じゃあ仮眠取るだけだし今はネカフェでいっか」

ネカフェだったら寝たあとも漫画とかネットで時間潰せるし快く頷く。


 * * *


駅を出てすぐに呼び込みをしていたネカフェに入り、ペアのフラットシート席に通してもらった。

「やべー、来た途端眠気が遠のいた」

そう言いながら席を離れた和成くんは、数分すると漫画と飲み物を持って戻ってきた。
私はなんの漫画かを持って来たのか確認しようとする。

「ジャスミン茶持ってきちゃったけど飲めるー?」

「大好き、ありがとー」

今日はお礼を言ってばかりだなと思いながら、先ほど気になった漫画のタイトルを確認。

「あ、進撃の巨人……!」

「あれ?名前ちゃんもしかして結構漫画好き?」

「二次元に恋するくらいにヲタってるよ」

「ちょ、二次元って!しかもヲタってるって何!」

和成くんが笑い出したので、人差し指を口に当てるとここがネットカフェだと気付いたらしい。

「でも名前ちゃんってオタクに見えねー」

「最近リヴァイに恋してるんだー」

「兵士長かー多分俺戦っても勝てねーな。やべー俺漫画のキャラに嫉妬しそう」

そう言った和成くんに押し倒され、唇を重ねられる。段々深くなるそれに、呼吸が苦しくなる。鼻で息したくないじゃん。鼻息荒いとか思われたくないじゃん。
それより、この話の流れで押し倒した和成くんは手馴れているというか、なんかハイスペックだ。
普通ムリだよ。ヲタクだって暴露した上にキャラに恋してるとか言っちゃてる人間を押し倒すとか、常人ならムリだと思う。

「はぁ、名前ちゃん兵士長のこと考えてんの?」

「んーん、この流れで押し倒せる和成くんのハイスペックさに驚いてた」

そしてここはネットカフェ。卑猥な行為は禁止だと壁に貼られているのが目に入る。
和成くんもそれが目に入ったのだろう。私の耳元で囁いた。

「なぁ、名前ちゃんが声出さなきゃ平気っしょ」

「和成くんが下手だったらそれも可能ですね」

「下手か上手いかはわかんないけど、声抑えてて」

そう言って襟元から手を入れられ、和成くんの手が胸を弄る。
漏れそうな声を必死に抑えていると、それを和成くんの動いている手が邪魔して辛い。

「っ……」

「名前ちゃんかわいー」

肩紐を下げられ、ワンピースと下着をずらされ胸が露わになって柄にもなく羞恥心が込み上げる。
普通だったらこんなことで恥ずかしいと思わないけど、声が出せないこの狭い場所のせいかな。
和成くんは胸を揉みながら、突起を口に含む。

「んっ」

「声出しちゃダメだって。ワンピース着てても谷間ヤバかったけど、こう見るとホントでけー」

和成くんに耳元で囁かれ、子宮が疼く。

「和成く、」

「黙って」

キスで口を塞がれ、和成くんの手が下半身へと伸びてきた。下着をずらされ触れられると、ぐちゅりと音が聞こえる。自分でもすごい濡れてるのがわかった。

「すげー濡れてんね。さすがにこれだと隣に音聞こえちゃってムリかもな」

手を離し、濡れた指を舐めた和成くんはどーすっかなーと眉間に皺を寄せている。
それを見て私はありえないことを口走った。

「口でしよっか?」

普段ならば絶対言わないであろう言葉。フェラは仕事以外では面倒だししたくないのだ。だけどなぜか言ってしまった。きっとこれも和成くんがハイスペックなせいだ。

「マジ?じゃあ名前ちゃんのことはホテルで気持ちよくしてあげっからさ」

名前ちゃんがベルト外して。
言われた通りにベルトを外し、ジーンズのファスナーを下げて下着を下げると、今までの中で一番デカいであろうモノが出てきた。
こんなデカいの仕事でも見たことないんだけど。口切れないかな。少し心配しながらも先端を舐める。

「おっきすぎてあんま口に入れらんないかも」

「ちょ、そこで喋んなっ」

それからしばらく手と舌と咥内でなんとか頑張っていると、「イきそう」という呟きが聞こえたのでラストスパートをかける。
もうすでに疲れて限界だけど、ここでなんとかしないとまた長い時間しなきゃいけないことになる。
頭を掴まれ、口の中でドクリと脈打った。口の中に何回かにわけ出されている間、手で緩く扱いて最後に吸い上げる。
精液を飲みこみながら、未だ萎えないソレにビックリした。イったのに萎えないってなんで。

「はいティッシュ」

「……飲んじゃった」

「えっ、俺は嬉しいけど、不味いっしょ?出してもよかったのに」

差し出されたティッシュで口元を拭いながら頷くと、お茶を差し出され頭を撫でられた。やっぱり頑張ったあとはこうやって優しくしてもらえると嬉しい。お茶を飲みながら笑みが零れた。

「あー、名前ちゃんの下のお口も拭いたほうがいいかもな」

拭いてあげよっか。その言葉に首を振る。トイレ行って自分で拭いてくる。そう告げてトイレに行き部屋に戻ると、ビーズクッションを枕にした和成くんはうつらうつらとしていた。

「あー、やべー眠くなってきた」

スッキリしたからそりゃあ眠くなっても可笑しくないよね。私は不完全燃焼だけど。
そんな不満を飲み込んで、和成くんにぴったりとくっつき目を閉じた。
腕に包み込まれ、しばらくすると和成くんの寝息が聞こえてきた。あぁ、私もちょっと寝ておこう。
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