※花宮がニセモノっぽい。風呂に沈める=ソープで働かせる

悪評高いホスクラがあるという情報を職場の子から貰った私は、何故かその霧崎というクラブへ足を運んでいた。
そこのキャストたちは昼職の客に散々金を使わせ売り掛けさせて、親交深い風呂に沈めたあとすぐに捨てるらしい。
好奇心と怖いもの見たさ。私はすでに風俗で働いているから怖くないしという感じで扉を開いた。

「いらっしゃいませ」

出迎えてくれたのは、なんか麻呂眉っぽい物腰の柔らかいホストだった。
卓に通され席に着くと、そのホストに名刺を渡された。

「真くんね。私名前よろしくね」

「はい、よろしくお願いします」

優しそうに微笑んでいる真くんに、思わず舌打ちしそうになった。
どう見ても雰囲気が好青年っぽくない。性格悪そう。
夜の仕事をしていると、裏がありそうかどうか気付いてしまうことが多い。あまり嬉しくない能力が身についてしまった。

「名前さんは会社勤めですか?」

「そうだよ。しがないOLだから細客にしかなれないけどごめんね」

私の言葉に「気にしませんよ」と笑った真くんの笑みがなんだか歪んで見えた。
もちろんOLだというのは嘘だった。ここのホストは夜職の客はテキトーに楽しませるらしいし、私は潜入捜査!とか張り切りながらスーツを着て化粧も薄めにしてきていた。ただのバカだ。
それから真くんを場内指名し、真くんは大したボロも出さずずっと笑って会社の愚痴など私の嘘に相槌をうったりしていた。


 * * *


初回料金内の焼酎を飲まされまくり、私は結構酔っ払っていた。といっても理性はあるから嘘を吐き続けている。

「名前さん、僕オリシャン飲みたいな」

なんかねだってきた。私は困った表情を作って断る。
すると『売り掛けでもいいから』と言われたので私は笑った。

「私掛けはなるべく残さない主義なんだよね〜」

「絶対ダメですか?」

真くんは私の肩を抱いて耳元で囁いた。アホか。そんくらいで落ちないから。女は皆自分に落ちるとでも思っているのだろうか。私は笑いが止まらなくなってしまった。もうバレてもいいかな。

「なんで笑ってるんですか?」

「ん?あー、今日キャッシュで払うからオリシャン入れてもいいよー」

「……お金大丈夫なんですか?」

「うん。それに真くんさー、素出していいよ?取り繕うのってダルくなーい?」

私も素を出すことにする。普通の人っぽい喋り方って疲れる。よくバカっぽい話し方だと言われるから今まで頑張ってたけどそれももう必要ない。
真くんは盛大に顔を顰めた。

「あれ、もしかしてそれ素だったー?」

「これは素ですよ……なんて言わねぇよバァカ」

「だろーねー」

「ふはっ、テメェもそれが素か」

「そーだよ。そんでOLじゃなくて風俗嬢。私の演技どうだったー?」

笑いながら聞くと、更に顔を顰めた真くんは「騙すなんて最低だな」と吐き捨てた。それは騙されたということだろう。私は耐え切れずに爆笑した。

「ここのホスクラ悪評高いからさー。潜入捜査成功って感じ?」

「無駄な労力って言葉知ってるか?」

「つまんないこととか面倒なことはキライだけど楽しいことは好き〜」

私がオリシャン持ってきてと顎で使うと、嫌そうな顔をした真くんは渋々と席を立ち持ってきてくれた。

「ねーなんで昼職の子ばっか風落ちさせてんの?」

「清純ぶる女どもをどん底まで落とすのが楽しいからに決まってんだろバァカ。枕求めるくらいなら風呂で働いたって構わねぇだろーが」

「それは同感。結婚まで処女守るって人ならともかく、彼氏でもない男とヤったりしてんのに風俗嬢のこと汚いとか見下してるヤツとかは痛い目合えばいいのにー」

「ふはっ、言うな」

「まあ普段は絶対こんなこと言わないけど」

私の言葉にニヤニヤと笑っている真くんは、どこからどう見てもゲスの極みだ。そして大概私もゲスいんだろう。
真くんはまた私の肩を抱いてきた。

「なぁ、また来んだろ?」

「もう二度と来ないよ」

「ふざけんじゃねぇよ。わざわざOLのふりして来るような面白い女見つけたのに逃がすわけねぇだろバァカ」

どうやら気に入られてしまったらしい。解せぬ。
真くんは笑っている。その厭らしい笑みやめたほうがいいとおもうよ。

「暇なときなら店外してあげてもいいよー」

「チッ……仕方ねぇから店外でもいいぞ。連絡先教えろ」

「連絡先交換はオプション料5000円でーす」

「ふはっ、ここは風俗じゃなくてホスクラだバァカ」

「ホスクラじゃ気に入らなかったら連絡先教えないからー」

「……しょうがねぇから今日はオリシャン奢ってやるよ」

「やったー。じゃあ教えてあげる」

私は真くんに連絡先を教え、また少し飲んだあと霧崎を後にした。
潜入捜査って結構楽しいかも。今度は知ってるホストの元へ「昼に転職した」とかやってみようかな。



美春さんリクエストでホストパロif『遊びに行ったホスト先で花宮くんに気に入られる夢主の話』
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