※if話として本編の流れからずれています。夢主が赤司にハマりすぎて性格変わってます

京都に出稼ぎに来て一ヶ月。私はまだ東京には帰っていなかった。
なぜかというと、洛山に行くのがとても楽しかったからである。
ソープでその日稼いだお金の半分は貯金、半分は洛山に行って使っていた。
征ちゃんは一部出勤だからと途中仕事を抜けさせてもらってまでお店に通っている。

「名前、今日も来てくれたのかい?嬉しいよ」

「征ちゃんは私の王子様だから毎日でも会いたいし」

卓についた征ちゃんは私の頭を撫でてくれた。あーもう幸せ!王子様に頭撫でてもらえるとか幸せ!私は頭を撫でてもらえるだけで満足出来る扱いやすい客だ。
タバコに火を点けてもらい、当たり障りのない話をする。

「でね、今日行ったコンビニでね、デッカいねずみがでて大騒ぎだったんだよー」

「名前は苦手なのか?」

「私急いで店の外出たよ!」

征ちゃんとは本当にくだらないとりとめのない話しかしない。
他のホストだったら仕事の愚痴とかも言う。けど王子様な征ちゃんには仕事の汚い話なんてしたくなかった。
征ちゃんは「仕事辛いだろう?愚痴ってもいいんだよ」って言ってくれてたけど私には無理だった。

「あ、征ちゃん!今日ちょっと貯金降ろしてきたからシャンパン入れよー」

「わざわざ貯金崩さなくても、売り掛けでも良かったのに」

「だって売り掛けっていつ飛ばれるかって不安じゃない?いいんだよ」

正直貯金してもすぐに降ろして洛山で使ってしまうから全然お金が貯まらない。いや、着実に貯まっては行ってるんだけど、稼いでる金額を考えるとかなり遅い。
それでも私は征ちゃんを一目見たいがためにお金を使ってしまう。
征ちゃんはナンバーワンだから、お金使わないとすぐに他の卓に行ってしまう。それは嫌だった。


 * * *


京都で数ヶ月過ごしていると、征ちゃんがやっと東京の店へと移ったので私も東京へと帰ってきた。
東京に戻って半年経っても私は相変わらず征ちゃんの元へと通っている。
原澤ちゃんの店を辞めてまたソープで働き始めたから貯金は800万までは貯まった。
そんなある日、そろそろ征ちゃんのバースデーだと聞いた。
まだこっちの店ではあまり太客はついていないらしいけど、なんとか豪勢なバースデーやってあげたい。
私は貯金を全額降ろしてシャンパンタワーやフラワースタンドやらの計画を立てる。
貯金はまた働けば貯まる。貧相なバースデーなんて征ちゃんには似合わない。
そしてとうとうバースデーの日がやってきた。

「征ちゃん誕生日おめでとう!」

店内は卓が埋まって結構賑わっていた。
私は征ちゃんが隣に座った瞬間プレゼントを渡した。

「ありがとう、とても嬉しいよ」

「中見て言ってよね」

私が渡したプレゼントの箱はとても小さい。
アクセサリーだと思っていたのか征ちゃんは目を見開いた。王子様の開眼頂きましたーなんてニヤニヤする。

「これは、いいのかい?」

「うん、前に欲しいって言ってたでしょ?」

大分前に征ちゃんが欲しいと零していたのを覚えていた気持ち悪い私は笑った。
プレゼント――高級外車のキーを手にした征ちゃんは私を抱き締めてくれた。

「こんなに嬉しいプレゼントを貰ったのは生まれて初めてだよ」

「本当?私征ちゃんが喜んでくれるだけで幸せ」

たとえ征ちゃんが心の中で『バカな女だ』とか思っててもいいの。ホストクラブなんて騙されに行く場所なんだから。

「征ちゃんがどんなことを思っててももし彼女がいても騙されたとか喚いたりとか馬鹿なことなんてしないから安心してね。店の中だけでも私の王子様でいてくれたらもうホントにそれだけでいいから」

私の言葉に一瞬驚いたような表情を浮かべた征ちゃんは、私の頭を撫でてくれた。
用意していたシャンパンタワーに嬉しそうな顔をした征ちゃんを見れて、ウェディングケーキ並みに豪華なケーキに一緒に入刀したりして私は本当に幸せ。例え口座の中がゼロになってても幸せ。何もかもを忘れさせてくれて汚い私を普通の女の子に戻してくれる征ちゃんがいればいい。バカな私は簡単に幸せを手に入れられるんだ。


ルイさんリクエストでホストパロif『赤司にハマり貯金が底をつく話』
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