今日はいつもの如く桐皇へとやってきた。女友達には良ちゃんが休みだからと断られたので一人っていうのがちょっと悲しい。
私が席につくとすぐに大輝は卓へとやってきた。私の隣に腰掛け、お酒を作り始める。

「なんだよ名前最近よく来るじゃねーか」

「やっぱ桐皇が一番だなーって」

「ハッ、やっと俺の良さに気付いたのか?おせーよ。俺はお前が良い女だって前から気付いてたっつーの」

「いや、桐皇の良さだからね。そんで大輝酔ってる?」

酔ってねーよって返されたけど絶対酔ってると思う。だっていつもこんなセリフは言わないし。
私は肩を抱いてきた酒臭い大輝がどれだけ飲んだのかと想像した。多分イジられキャラの良ちゃんが休みだから代わりに大輝が他の卓で死ぬほど飲まされたんだろう。
ラスト近いどころかオープンから二時間しか経っていない。よく二人が愚痴っている地雷客だったのかななんて思ってちょっと同情した。

「名前卓チューでもしとこーぜ」

「どうしたの大輝ホント大丈夫?」

「うっせぇなー。いいから黙ってさせとけって」

そう言って大輝は口付けてきた。私と大輝はキスするような甘い間柄じゃない。どっちかというと友達みたいな関係の担当と客。何回かヤったことはあるけど、ヤるよりキスのほうが恥ずかしい気がする。
何回も軽いキスをされ、ここが半個室になっていてホントに良かったと思う。翔一さんに見られてたら大輝ボコられてたよ絶対。

「なぁもっといいか?」

「えー……」

私が嫌そうにしてるにも関わらず、大輝はキスしてくる。しかも深いヤツ。酒の匂いの酷さに顔を顰めていると、大輝は胸を触り始めた。
唇が塞がれているから拒否の言葉も出せない。さすがに下着の中に侵入しそうになった手を掴む。

「大輝、そういうのはホテルでね」

別にヤるのは嫌じゃないしいくらでもヤらせてあげるけど、ここは店。翔一さんが見たら大変だ。

「チッ……ケチくせーな」

「翔一さんにチクるよ」

「あー、チクってもいいから触らせろ」

「おっぱい星人め」

大輝はホントにおっぱいが好きだ。よくアフターで触っている。でも今まで店で触られたことはなかったから大輝が心配になった。

「ねぇマジ大丈夫なの?翔一さん来たら起こしてあげるから寝てもいいよ?」

「名前やさしーな。マジいい女」

「いや、そういうのいいから寝なよ」

「あー、もう俺名前と付き合いてーよ他の客の相手なんてしたくねーよ」

「酔い冷めて思い出したら「黒歴史だわ」とか頭抱えることになるんだからマジやめなって」

大輝は愚痴りだした。よっぽど私が来るまでいた卓が嫌だったのだろう。どんなに嫌でもヘルプで入った他のホストの客なら怒れない。ホストって大変だな。
私はなるべく無理強いしないようにしようと決めた。たまに機嫌悪いときは初回の店とかでやっちゃうかもだけど。


 * * *


結局大輝は寝ることなく酒を飲み始めた。まだ飲むなんてすごすぎる。
そういえば大輝は「飲みたくなかったら飲まなくてもいいよ」と言ってもいつも私の卓で飲んでいる。飲むのが好きなのかな。

「大輝私の卓で飲まなくてもいいって」

「うっせーな。飲みたくなかったら飲まねーよ」

また肩を抱かれて口付けられる。今日卓チュー何回目だよ。私が苦笑していると、翔一さんが卓前でこちらを見ていた。その顔には笑みが張り付いている。

「あー、名前ちゃん堪忍な。大輝今日散々無茶させられとってなぁ」

「大丈夫だから怒らないであげてね」

「名前ちゃんがそう言うなら今日は怒らんよ。お得意様やしな」

「大輝、謝っときなよ。そんで寝てなよ」

「あー寝ねーけど、翔一さんスンマセン」

「名前ちゃんに甘えさせてもろうて寝とけ」

こっちには誰も来ないよう言っとくと去っていった翔一さんに一安心。
翔一さんが怒らないということは、そこまで酷かったということだ。寝てくんないかなと大輝を見ると、ニヤリと笑った。

「誰も来ないらしいからいっそここでヤッちまおうぜ」

「ねえビンダしなよもう」

焼酎ストレートでイッキして潰れればいいのに。心配して損したと私は大輝の頭を叩いた。



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