名前ちゃんと清志さんが付き合うことになったらしい。
そして俺も名前ちゃんと付き合うことになった。なにこの相関図。
清志さんは俺の尊敬する先輩だ。名前ちゃんとも軽い関係で居れればいいはずだった。
なのになぜ俺は名前ちゃんの「内緒で付き合おっか」という軽い冗談に頷いてしまったんだろう。まじ自分が分かんねーよ。
もやもやとした気持ちを抱えたまま、名前ちゃんと付き合って早くも一ヶ月が過ぎた。
「最近清志さんとどうなの?」
「ん?順調だよ〜」
俺の部屋のベッドでゴロゴロと漫画を読んでいる名前ちゃんは俺を見もせずに言った。
ちょっとくらい俺のほう見てくれてもいーんじゃないの?ま、そんなとこも気に入った一因なんだけどさ。
それにしても順調って、どういうことだよ。
「えー、名前ちゃん俺のほうが好きって言ってたっしょー?」
ソファーから移動し名前ちゃんの側に腰掛け、冗談っぽく言いながらに頭を撫でてみる。
俺と名前ちゃんは冗談で成り立ってんじゃねーかってくらいマジな雰囲気は似合わないし。
「うんーでも最近清志くんもすきー」
「名前ちゃんお得意のお前だけ営業はー?」
俺はちゃんと笑えているだろうか。名前ちゃんは相変わらず俺の方を見ない。
やべーなんかイライラすんな。
「んー、じゃあ好きなの和成くんだけー」
「じゃあってなんだよじゃあって」
「あれ?怒った?」
ちょっと困ったような表情で、やっと俺の方を見た名前ちゃんは俺が笑みを浮かべていることに気付いて笑顔に変わった。あーチクショーやっぱかわいいな。
俺も名前ちゃんの隣に横になって頭を撫でる。すると名前ちゃんが擦り寄ってきた。
「名前ちゃんデレ期なの?」
「私はいつでもデレ期だよー」
「絶対嘘っしょー」
名前ちゃんはいつもデレ期なように見せかけて本当はデレてなんかいないのはわかってるよ俺。
名前ちゃんは何が面白いのかケタケタと笑い始めた。
「最近人類みんな愛おしい気がしてきたんだー」
「人ラブ!みたいな?」
「え、和成くん結構いろんなネタ知ってるんだねー」
すごいー!と喜びだした名前ちゃんに話逸らされた気がするのは気のせいじゃないと思う。
名前ちゃんは抱きついて俺の頬に頬ずりしてきた。
「和成くんマジ好きー」
「俺も好きー」
俺だけを見てほしいなんて、こんな感情いらねーよな。
今の状態が一番気楽っしょ。なのになんで消えないんだ。