相変わらず私はいろんなホスクラに出没していた。
今日はいつもの行動範囲から抜け出してみようと、女友達と一緒に普段は来ない街へと来た。
クラブ陽泉は落ち着いた店内とは相反し、トランスが途切れることなく流れている。
三人のホストが席へやってきて、自己紹介と共に名刺をくれた。

「辰也です、よろしくね」

前髪で左目が隠れたホストはグレーのカラコンを入れていた。うん、イケメン。
おしとやかな感じで私と女友達の間に座った。

「俺は敦ー」

間延びした喋り方の彼は髪の毛紫色だった。まじカラフル。最近のホストまじカラフル。
そして、私が座って敦くんが立ってるからとかは関係なく身長デカい。
敦くんは私の向かい側へと腰掛けた。
そして代表の健一だと名乗ったこれまたデカい彼は親友の向かい側座った。


***


店内は私たちを含めて二〜三組の客しかいない。

「んでこいつら俺のことゴリラゴリラ言うんじゃ!」

酔っ払い始めた健一くんは盛大に泣き真似を始めた。それを穏やかに眺める辰也くんと、呆れて横目で見る敦くんと爆笑してるうちら。

「言われてみればまじゴリラ」

爆笑しながら言った女友達は健一くんがいじられキャラだと判断したんだろう。遠慮なくゴリラだと言った。
健一くんは更に泣き真似を始めた。

「いいじゃんゴリラかわいいじゃん」

かくいう私も健一くんはゴリラだと思う。キモいゴリラじゃなくて愛嬌あるゴリラ。
健一くんは少し嬉しそうに私を見てきた。今度バナナあげよ!なんてゴリラの好物がわからない私はサルと一緒でいいだろと勝手に決めた。

「そうそう、かわいいじゃん!もみあげだしアゴだしゴリラだし、まじモミアゴリラ」

女友達が放った台詞に敦くんが酒をふき出した。辰也くんも噎せながら身体を震わせている。
私も口から酒がこぼれた。ゴフッて酒こぼれた。

「ちょ、女友達のせいでこの卓大惨事なんだけど」

健一くんはテーブルにうなだれている。
辰也くんは相変わらず噎せてるし敦くんは笑いを噛み締めながら淡々とテーブル拭いてるし私はおしぼりで口元や胸元を拭いてる。
女友達はもうこの話題が飽きたのか普通に酒を飲んでた。
そしてみんなが落ち着いた頃、誰が何に似ているかという話になった。

「名前ちゃんはクマさんって感じだね」

「あー、リラックマとかそんな感じする〜」

辰也くんの言葉に敦くんが同意した。親友も頷いている。私はクマか。お世辞でいいからもっと女の子らしいやつがよかった。ネコとかウサギとか色々あんだろ。

「名前まじリラックマだから。ぐーたら加減ハンパねえよ」

そして親友が余計なこと言った。まぁ困らないからいっかと相変わらずゆるい感じで納得。

「敦くんは巨人だよね。駆逐してやる!」

「リラックマに駆逐出来るとは思えないんだけど〜」

「うわーもう敦くんキライだ」

「敦嫌われちゃったね」

「ごめんって」

敦くんは謝りながら酒を作り始めた。
女友達が健一くんと話し始めた横で、辰也くんと敦くんとのゆるい会話は続いていく。

「じゃあ俺は?」

そんな辰也くんの問いかけに、私は横を向いてまじまじと見ることにした。
なんか辰也くん難しいんだけど。思いつかないんだけど。

「うーん、あれでいいんじゃない?火星人」

私の言葉に敦くんがグラスを倒しそうになった。
辰也くんは不満げに私の肩に手を置いた。

「もっとちゃんと考えて」

「辰也くんは火星人。決定」

「なんで火星人か聞いていい?」

「似てるの思いつかないから火星人でいっかーって」

そんなノリ。
私の言葉に辰也くんはまじで泣き始めた。ドン引き。

「ごめんたっちん酒入ると泣き上戸なんだよね〜」

どうやら密かに酔っ払ってたらしい。ドン引きだとか思ってごめん。
女友達と話していた健一くんはまた何故か泣き真似始めたし、辰也くんはまじ泣きしてるし、何故か女友達も泣いてるし、うちらも泣いとこっかーって敦くんとテキトーに泣き真し始めたこの卓はカオスとしか言いようがない。

ちなみにこの日を境に、クラブ陽泉のキャストの間ではモミアゴリラと火星人というネタが流行り始めたらしい。敦くんが教えてくれた。そして流行らせたのは敦くんしかいない。なかなかやりおる。
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