自宅のベッドでゴロゴロしていると、清志くんが無言で抱きしめてきた。
最近清志くんは私の家に入り浸っている。なんか宿カノがパンクしちゃったらしくて住む場所なくなったらしい。そういう管理はちゃんとしとこうよ……パンクする前に気付いてあげようよ。なんて思ったけど口には出さなかった。
最初は「早く新しい宿カノ見つけてよ」って言ってたけど、最近はまんざらでもない。
清志くんが家事全般やってくれて、正直かなり助かっている。清志くんいなくなったら家事どうすんのってくらいにはこの生活に馴染んでしまった。
「ねえ清志くんー」
「どうした?」
「チューしよー」
清志くんは私の顔を覗き込んで「急にどうしたんだよ」って嬉しそうに笑っている。清志くんに口付けると私のケータイの着信音が鳴った。無視だ無視。
気にする様子もない私に清志くんは少し顔を離した。
「出なくていーのかよ」
「うん、いーよめんどくさい」
今度は私から清志くんに抱きつく。やっぱ清志くんからはブルガリブラックの香りがした。
「いい匂い〜」
私が胸板に頬ずりすると清志くんは頭を撫で始めた。なんか最近清志くんと一緒にいるのも落ち着く気がする。
「香水変えよーかと思ってたんだけど変えないほうがいいか?」
「ダメ、絶対変えちゃダメだからね」
「じゃーコレでいいか」
薄く笑った清志くんに笑い返す。私たちはベッドの上でヤるわけでもなくイチャついていた。
いつの間にか着信音は途切れていた。
「なんかこういうのって幸せだと思わねー?」
「幸せ、かも〜」
最近面倒くさい清志くんはいない。清志くんの機嫌がいいからご機嫌取りする必要もない。
最初からこうだったら、もしかしたら私からガチ恋してたかもしんない。すぐキレる清志くんを知っちゃった今はガチ恋するか微妙だけど。
でも清志くんとのんびりした雰囲気で笑い合うのは好き。今みたいに優しい笑みで私の頭を撫でている清志くんを見ていると、柄にもなくずっとこうしていたいなーって思うようになった。
それがいいことなのか悪いことなのかはわからない。
好かれている自信はあるけど、本気かどうかはわからない。
また昔みたいに、祥吾のときみたいになってしまうかもしれないんだから。
だから私は誰が相手でもギリギリのところでブレーキを踏まなきゃいけない。
清志くん相手でも和成くん相手でも大輝相手でも、本気になったらそれでおしまいな気がした。