仕事も休みだし今日は一日家に引きこもってようって思ってゴロゴロしているとインターホンが鳴った。
清志くんかなー、今日ヤる気分じゃないんだよなーなんて玄関のドアを開けると、大輝が立っていてビックリ。

「なんで電話しても出ねーんだよ」

「あ、マナーモードにしてたかも」

「メールも見てねーのか?」

メールも入れてくれたらしいけど見てない。ごめん昨日の夜からケータイ放置してたよ。
大輝は私が入っていいよって言う前にズカズカと部屋の中へと入っていった。そういうの気にしないでいいのが私たちの関係で、なんかやっぱり大輝といると気楽でいい。
大輝が部屋の片隅に積んであった服を指差し、不思議そうに声をあげた。

「俺服置いてったか?」

「あ、それ彼氏の」

「はぁ?まだ病んでんじゃねーかって心配して来たのに彼氏作ってたのかよ」

「ソーリー」

どうやら大輝は心配してきてくれたらしい。そういえば私が病み散らかした日から一回も桐皇も行ってないし会ってなかった。
大輝はローソファーに腰掛けて床に落ちていたジャンプをめくりながら言った。

「前みたいにロクでもねぇヤツじゃねーだろーな」

「あー、前のって祥吾?今回は別に好きなわけじゃないし」

桐皇に通い始めて二ヶ月くらい経ったころに付き合って結構すぐ別れた元カレのことを言ってるんだろう。よく覚えてるなあ。
私の言葉にしかめっ面で顔を上げた大輝が睨んでくる。

「じゃあなんで付き合ったんだよ」

「なんとなく」

「なんとなくだったらここにイイ男がいんだろーが」

「え?どこ?ジャンプの中に?二次元行きたいなー」

「ちげーよ!ここにお前を幸せにしてやれる色黒イケメンがいんだろ」

ドヤ顔で言い放った大輝に思わず笑みが零れる。確かに大輝と付き合った子は皆幸せになれそうだ。
でも自分でイケメンって言っちゃうんだ。ウケる。

「じゃあ大輝も付き合おうよ」

「二股とか最低すぎんだろ。別れたら来い」

「んーん、三股になる。もう一人付き合うことになった」

「はぁ?ったく、じゃあその二人にフラれたら俺が貰ってやるよ」

「え、私がフラれる側確定なの?」

正直フるよりフラれる方が気が楽だけど、大輝ひどい。
大輝は薄く笑いながらまたジャンプに視線を戻した。

「名前が別れるまでヤれねーじゃん。禁欲生活かよ」

「別に彼氏いてもよくない?」

「よくねーよ。なんでお前をそこまで最低な女にしなきゃいけねぇんだよ」

そんなことを言われたら泣きそうになっちゃうよ。
もう自分の手で最低より下に落ちてしまったのに、それでも大輝は私を普通の女と変わらずに扱ってくれる。
私は大輝の言葉が嬉しくて泣きそうになったのか悲しくて泣きそうになったのかわからなかった。
もしこれが営業の一環だとしたら大輝はバカっぽく見えて実は相当なやり手だなあなんて好意を無碍にするようなことを考える私は、大輝に優しくしてもらう資格なんてないのかもしれない。
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