え、マジでイケメンなんだけど。
なんか女友達からすごいイケメンがいるって聞いたから、私は現在カイジョウというホスクラまで来ていた。
席に通されるとナンバーワンのホストがやってきた。そしてそのホストのイケメンさに戦慄した。
「俺涼太ッスー。よろしく」
「あ、私名前。よろしくね」
モデルや俳優でもやったほうがいいんじゃないかというくらいのイケメンさに引いた。
多分征ちゃんとか清志くんと並ぶくらいのイケメン。私の頭の中にはイケメンという単語一色になった。
「じゃあ乾杯しよー。俺名前ちゃんと出会えて嬉しいッスー!」
「あ、うん」
もう噂のイケメンは一目見れたし他のホスト来てほしい。
征ちゃんみたいに落ち着いたイケメンは好きだけど、テンション高すぎるイケメンは苦手だ。なんかこっちも盛り上がらなきゃいけない雰囲気が嫌だ。和成くんとかとなら普通にテンション高く話せるんだけどな。私人見知りだったのかな。
そのあと涼太くんとしばらく飲んでいると、他のホストがやってきた。
「涼太、あっちのお客さんが待ってるぞ」
「あ、ハイ。じゃあ名前ちゃんちょっと行ってくるッス」
やっと開放されたと笑みが零れ手を振ると、もう一人のホストが私の隣に腰掛ける。
「俺由孝、ヨロシク。こんな可愛い子がお客さんで嬉しいよもうこれは運命に違いないデートしよう」
息継ぎもせずに言い切った由孝くんは、イケメンだけど涼太くんとはまたタイプが違うらしい。
なんだろう、イケメンなのに残念すぎる。いまどき誰も運命とか言わないよ。そういう言葉は二次元でしか許されないよ。
私が思わず笑うと、由孝くんは手を握ってきた。
「キミの名前を教えてくれるかい?」
「名前だよ」
「名前ちゃんか、見た目に似合う可愛い名前だ。まるで妖精さんのようだね」
何この人面白い。私の名前は至って普通だし妖精って。私は我慢出来なくて吹き出してしまった。
「笑った顔も可愛いよ!俺の女神になってくれ!」
「女神って、もうダメ笑い死ぬんだけど」
引き笑いになってしまい呼吸が苦しい。もうやだ女神とか口に出したらいけない単語だよ。由孝くんは背中を摩ってくれた。
「ねえ名前ちゃん、俺とアドレス交換しませんか?運命に逆らってはいけないんだ」
「ブッ、いいけどもうマジ笑わせないでよ腹筋割れちゃうよ」
「……笑わせてるつもりはないんだけどな」
いや絶対ウケ狙ってお笑いキャラになってるでしょ。でも何故か由孝くんはしょんぼりしている。え、真面目に営業かけてたのアレ。
* * *
どうやら一斉に他のお客さんが帰ったらしく、涼太くんと由孝くんに挟まれて現在飲みまくっている。
笑いすぎたせいか酔いが回るのが早い。早いというか私はもうすでに出来上がっていた。
「え、なんか揺れてない!?」
「いや、名前ちゃんが揺れてるんスよ」
「ギャー!ヤダ、地震だよ地震!どうしよう死んじゃう!」
涼太くんの言葉は私の耳には届かなかった。私はテーブルの下に潜り込む。
涼太くんと由孝くんも危ない!と二人の手を引きテーブルの下へと入らせた。
「なんなんスかこれ非難訓練スか」
「ヤダー、地震ヤダー」
「姫の安全は王子である俺が守るよ」
由孝くんは抱き締めてくれた。そして涼太くんは何故か笑っている。地震が来てるってのにのん気な!
しばらくすると揺れが収まったからテーブルから這い出る。
「はー、危なかったねー」
「いや、俺は名前ちゃんの頭ん中が心配ッスよ」
「こら涼太、女神になんてこと言うんだ」
二人に後日この話を聞かされて黒歴史が増えることになるなんて酔っ払っている今の私は気付かない。