今日は和成くんも私も仕事が休みで、二人で新宿の監獄風居酒屋へと来ていた。
警官姿のキレイなお姉さんが入り口で「今日はなんの罪で入所ですか?」と聞いてきたら和成くんが「この子が可愛すぎるから捕まえてください」と私を差し出した。
私は手錠をハメられて檻っぽい個室のペア席に案内されたので横並びになってお酒を飲む。
「ねー次このカクテル頼む」
「うわー、なんか目玉入ってるけど?」
「ゼリーかなー」
この店は色々と面白いカクテルがある。注射器型のスポイトに赤いリキュールが入っていたり、試験管にカラフルなリキュールが入っていたり。そしてグラスはビーカーという中二病には堪らないお店だろう。私もワクワクしてるけど中二病ではないと思いたい。
そして二時間に一回くらいイベントがある。店内が暗くなってモンスターに扮した店員さんたちが檻の外で暴れ始め、たまに檻の中に入ってきたりもする。
「うわっ!?」
「キャー」
「やべえビビッたー。名前ちゃん棒読みだし。もっと怖がってよ俺ヘタレっぽいじゃん」
檻をガシャガシャ揺らされ、和成くんはびっくりしてた。
かくいう私はなんかあんまビビッたり出来ない。どうせ店員さんがやってるってわかってるし。こういう時ノリ切れない自分に悲しくなる。酔ってればノリノリになれるのに。
「そういえば何十杯飲んだんだろ全然酔わないよー」
「本当に酒入ってんのか微妙だよなー。どっか他行って飲み直す?」
「そうしよー」
私たちは会計を済まして飲み放題のあるカラオケへと移動した。
居酒屋では和成くんが支払ってくれたからカラオケは私が払おう。
あれだけ飲んでも酔っ払わなかったんだからと二人とも強めのお酒を頼むことにした。
とりあえず飲もうとカラオケに来たにも関わらず曲も入れないで酒を煽る。
「ヤベー俺もう酔って来たかも」
「早くない?」
「名前ちゃんまだ酔わないとか強すぎっしょ」
酔ったとか言いながら和成くんはどんどん酒を注文して飲みまくっている。もはやその速さイッキだよ。
そんな私もどんどん飲まされてさすがに酔いが回ってくる。
「可愛い名前に送ります!へいシャンパンシャンパンー!」
和成くんはマイクを持ってシャンパンコールまでやりだした。かなり酔っ払っているとみた。
でも私も酔っ払っているのでノる。シャンパンないけど。
そんなことをしていると和成くんがデンモクを弄りだして曲を入れ始めた。同じ曲が何回も入っているのに気付いていない。そして何回も同じ曲を歌い始めた。ここまできても気付かないなんてなんか面白い。
「ねー名前ちゃんも歌ってよー」
「何歌ってほしいー?」
「ブラックチェリーとかスペルマジックとか」
なにそのチョイス。和成くんが入れてしまったので歌いだすと、なんか和成くんのテンションが可笑しいことになっている。マイク越しに和成くんが「中に出したい」とか言い出したときに店員さんがお酒持ってきてくれてすごい気まずいことになった。
「ねー和成くんジャンヌのロマンス歌ってよー」
「おっ、いいよー」
キミのところを私の名前にしててコイツバカかと思ったのは内緒。
この歌で私の名前出されてもちょっと嬉しくない。担当とホス狂の色恋歌じゃん。歌ってって言ったの私だけど。
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