女友達と始発で待ち合わせをして桐皇に来た。
大輝と良ちゃんと女友達と四人で飲むのは久々な気がするなーなんて思っていると、卓についた大輝は私を見て顔を顰めた。

「お前今日も顔死んでんぞ」

「あ、確かに名前ちゃん窶れました?あ、失礼ですよねスイマセン!」

どうやら最近私は死人みたいに見えるらしい。女友達も私の顔を覗き込んで苦笑している。失礼な。
多分、清志くんに元気を奪われているんだろう。私を指名するたびに「いい加減彼女になれよ」と言われて参っていた。
そんなことを大輝に愚痴るわけにもいかず、女友達に話しても大輝には伝わってしまうだろうし一人で悩んでいた。だって、大輝が折角彼氏のフリまでしてくれたのだ。それなのに清志くんがうちの店を使っているなんて口が裂けても言えない。

「なんだろ病み期でも到来したかな〜。皆でテンション上げてよ」

私は笑いながら言った。今日は愚痴りたくて来たんじゃない。楽しくなりたいだけだし。
飲みまくって騒げば元気になるよ。だから皆そんな心配そうな顔しないでよね。

「しょーがねーから名前のテンションでも上げてやっか」

「名前ちゃんのテンションが低いとなんか怖いですよね。あ、スイマセン」

「良ちゃん謝ればなに言ってもいいと思ってたりするー?」

良ちゃんは何気に思ってることズバズバ言う。絶対最後に謝るけど。
そんな良ちゃんを結構気に入っているから、女友達と桐皇に来るのは楽しいし好き。
大輝が酒を作ってくれたので、嫌なことは忘れてしまおうとハイペースで飲むことにした。


 * * *


ラストまでハイペースで飲んでいたら、やっぱりみんな酔っ払うわけで。
私も含めみんなのテンションが可笑しいことになっている。

「ねー公園行かない?私永遠の4歳児だから遊びたい!」

「あ?俺なんて永遠の2歳児だぜ」

飛び跳ねながら公園がある方へと向かい始めると、大輝が張り合ってきた。
酔っ払いの多い繁華街で騒いでもここでは咎める人間なんて誰もいない。
住宅街なら迷惑だと少しは自重するかもしれないけど。
大輝がコンビニで買ったジュースを一口もらったりしていると、いつの間にか公園に着いていた。

「久々に砂場遊びとかしたくない?」

「しようぜ!」

「スーツ汚れるんで僕はパスで」

「あ、私もこれ買ったばっかの服だしパスで」

私の言葉に大輝がノリノリになったものの、女友達と良ちゃんは拒否してジャングルジムへと登り始めた。
ノリ悪ーと私が顔を顰めると、大輝が肩を組んできた。

「まじノリわりぃな。でっけー山でも作るか?」

「お!いいね!大輝まだコンビニの袋持ってる?バケツ代わりに使える」

「名前オメー天才だな」

褒められたからドヤ顔したのにうぜぇとバッサリ切り捨てられた。酷い。
私たちは早速ビニール袋に水を入れ、砂場で洋服が汚れるのも構わずに山を作り始めた。
私と大輝の手はすぐ泥だらけになったけど、でも酔っ払いだから気になんない。
時間も忘れて大きくし続けていると、良ちゃんがこちらに向かって走ってきた。

「エクスペクトパトローナム!」

なんだっけそれハリポタの黒いマントのやつ追っ払う呪文だっけ。木の枝を持った良ちゃんはドヤ顔で私に枝を向けていた。

「そんなんで私に勝てると思ってるの!?大輝、最強の杖探そう」

「お、あっちの方に落ちてそうだぜー」

私の沸点は低かった。そしてやっぱり大輝もノリノリだ。
杖を探している間女友達に何回か攻撃を食らったが、私と大輝は最強だ。そんなんじゃやられない。
頑丈そうな枝を発見し、大輝も極太の枝を持って良ちゃんたちの方へと向かった。

「クルーシオ!」

「インペリオ!」

「ちょ、名前ちゃんたち許されざる呪文を使うなんて……!ひどいですやめて下さいスイマセン」

良ちゃんは地面に倒れた。スーツ汚したくなかったんじゃないのか。もはやみんなノリノリでなりきっている。
女友達はジャングルジムの上のほうに避難していた。魔法だからそこまで逃げても意味ないよ届くっつーの。

「アバダ、」

「ひいいいいスイマセンそれだけはやめてください」

大輝が死の呪文を唱えようとしたけど、良ちゃんが杖の先を握って阻止していた。
なんかたまに小さい子を連れたママさんたちが公園の前まで来てリターンしていた気がするけど気のせいだと思うことにする。

「ちょっと、良ちゃん殺さないで!」

「じゃあ二人ともデスイーターになるのだおじぎをするのだ」

「勿論俺がヴォルデモートだよな?」

「アーン!?私がヴォルデモートに決まってるじゃん大輝はデコフォイでいいよ」

「デコフォイって誰だよ」

「マルフォイ父」

「チッ、しょーがねーから闇の帝王の座は譲ってやるよ」

大輝は何気にデコフォイが好きらしく、ヴォルデモートの座は譲ってくれた。
そして女友達と良ちゃんがデスイーターとなってこの戦いに終止符を打った。
もちろんデスイーターの証として、持っていたボールペンで腕に『デスイーター★』と書いてやった。
大人になってしまった私たちはやっぱり子供心も捨てきれなくて、こうして酔っ払っているという免罪符を得てバカをする。
私は疲れなんていつの間にか吹き飛んでいた。だから桐皇は大好きで通うのをやめられない。
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