あれから一〜二週間に一回は清志くんが私を指名してくるようになった。
不景気で助かってるのは事実だし、メールはたまに返すようにしてる。
私の中で清志くんはホストという部類から自分の客というカテゴリーに移った。
「あっ、名前ちゃん」
「おー、和成くんキャッチ?」
駅前の噴水の前に腰掛けていると、和成くんと真ちゃんが寄ってきた。
最近私は仕事場の最寄り駅で始発を待つようになった。他の店の店長も兼任し始めた原澤ちゃんが多忙になり、送りがここの駅までになってしまったのだ。
「真ちゃん、ちょっとサボらねぇ?キャッチだりーよ」
「はぁ……清志さんにバレないようにするのだよ」
最近、キャッチしている真ちゃんと和成くんが私を発見するとサボり出すのが恒例となり始めているけどいいんだろうか。まぁ始発まで暇だから実は大歓迎なんだけど。
私はもう秀徳に行かないというのは二人とも分かっているのか、誘われることはなかった。というか和成くんが来ないでって言ってきたんだけど。
和成くんは私の隣に腰掛け、真ちゃんも続いて私の隣に腰掛けたので捕らわれの宇宙人のような気分になった。
「なー名前ちゃん今度どっか遊び行かね?」
「あ、真ちゃんと三人でお好み焼き行こうって前話したじゃん」
「お好み焼きだと?冗談じゃないのだよ」
真ちゃんがこちらを睨んできたので「こっわー」と和成くんの腕に抱きついた。
和成くんは苦笑し真ちゃんに謝り出す。
「前のはマジごめんって!」
「ふん」
「真ちゃん根に持ちすぎっしょ」
「お好み焼き頭に乗っかったんだっけ」
真ちゃんがまた睨んできたのを笑って受け流す。
こうして三人で話しているのはとても楽しい。ほとんどがくだらなくて意味のない内容だけど、何も考えずにバカな話を出来るこの時間は、唯一私の癒しとなっていた。
大輝と一緒にいるのも落ち着くけど、それでもこの不景気の中ホスクラに行けばどうしても財布の中が不安になってしまう。
私がに必要だったのはバカ騒ぎして楽しむことではなく、何も考えずに過ごす時間だったみたいだ。
「名前ちゃんまだ他のホスクラ通ってんの?」
「うん。今日も始発で桐皇行くよ」
でも結局バカ騒ぎする楽しさも手放せない。たとえお金を手放したとしてもだ。