どういう状況ですかコレ。
一ヶ月の出稼ぎを終え、私はまた原澤ちゃんの店に戻った。でも不景気なのは変わらず、一日に稼げるのは良くて4万とか。
そんな時にオーラスぶっ通しで指名してくれた新規のお客さんが入っていてひゃっほーい!とか思ってたのに。
先にお金を徴収しに行った原澤ちゃんには「若くてカッコいい方でしたよ。良かったですね」とか言われてテンション上がってたのに。
ホテルの一室に入ると、そこには何故か清志くんがいた。まじでどういう状況なの。

「名前ちゃん久しぶりだな」

「久しぶり、どうしたの?」

「名前ちゃんが連絡無視するから指名しちまった。金払ってんだし文句ねーだろ?」

20万以上払って12時間も呼んでくれたんだから、邪険に出来るわけがない。例えそれが面倒だと思っている清志くん相手だとしても、一応はお客さんだし。
私はまずバスルームに行ってお湯を張ろうとした。けどそれは叶わなかった。
清志くんに抱き締められたと思ったらすぐにキスされた。

「彼氏居たんだな」

「え、あぁ、うん」

そういえば前に大輝が電話出たんだっけ。一瞬戸惑ってしまったものの、清志くんはそれを怪しむ様子はなかった。

「相手一般人?ホスト?」

「ホストだけど」

「あ?それゼッテー騙されてるから」

どうやら選択肢を間違えたみたいだ。清志くんは笑顔で陳列な言葉を放った。だけど、実際大輝と私はホストと客という関係だけで、傷付くわけでもムカつくわけでもない。
私は清志くんの腕から抜けだし、バスルームに向かう。

「確かに騙されてるかもね」

こちらもそう笑顔で吐き捨ててバスタブに入浴剤を入れてお湯を溜めた。
それにしても、12時間も清志くんと二人きりは少しキツい。これが和成くんだったなら問題はなかっただろう。
まぁ気持ち悪いオヤジと12時間ホテルに篭るよりはマシだと思うことにする。
部屋に戻ると、清志くんはベッドに寝そべっていた。

「なぁ、デリって本番行為ダメなんだろ?」

こちらをチラリと見やった清志くんは不服そうな表情を浮かべている。
私もベッドに腰掛け答える。

「ダメだよ」

「じゃあ金渡すから裏引きしねー?」

清志くんの言葉は一瞬聞き間違えだと思った。だってナンバーワンホストが風俗嬢に金渡してまでヤるなんて馬鹿げている。タダでヤらせてくれる子は沢山いるだろうに。
でも私は清志くんをリピーターにしたくもないし、相手が警察かと疑う必要もない。

「いくらくれるの?」

「逆に聞くけど、いくらでヤらしてくれんの」

「百万円」

「あ?こんな時に冗談とかふざけんな轢き殺すぞ」

こんな時以外にいつ冗談言えばいいのかわからないよ。相変わらずキレっぽい清志くんに若干引きながらも言葉を正す。

「私裏引きとか普段絶対しないから、高いよ」

「10万くらい渡せばいいか?」

10万。そんなにくれるの?デリの裏引き相場は1〜2万くらいだろう。その金額に思わず頷く。
5万くらいならいいかなって思ってたけど、貰えるんだったら訂正する必要もない。
清志くんはブランド物の財布から諭吉を取り出して私に手渡した。

「ありがと、ゴムはつけてね」

ちゃんと毎日ピルを飲んでるのは清志くんには話していない。
ホストって性病持ってそうだよななんて偏見があるため、付けてもらうに越したことはないのだ。

「あー、前はまじごめんな。今回はちゃんと付けっから」

その言葉に一安心し、グリンスとイソジンを持って清志くんとバスルームに向かった。


 * * *


先に私の体を清志くんに洗ってもらい、今度は私が清志くんを洗う番だ。
泡がついたまま、座っている清志くんの背後に周り込み、体を密着させ滑らせるように背中を胸で、前部を手で洗っていく。
お風呂での接客には自信がある。もう恥ずかしさなんて昔捨ててしまった。
今度は前に回りこみ、同じように自身の体をスポンジのように使って洗っていると、清志くんのアレはかなり元気になっていた。

「名前ちゃんすげーな。風俗にハマる男の気持ちが分かるわ」

「そう?ありがとー」

最初は清志くんが相手だったから乗り気じゃなかったけど、私も段々と仕事モードに入ってきた。これなら間も持つかな。
指先までしっかりと手を絡めるように洗い、今度は足だ。
私は床に座り込んで、清志くんの足を自分の太腿の上に乗せる。

「そんな風に洗ってくれんの?」

「こういうの嫌い?」

「いや、なんか最高の気分だわ」

そりゃ最高の気分になってくれなきゃ割りに合わない。こっちはプライドも捨てて仕事してるんだから。
スポンジで丁寧に洗っていると、清志くんが足を床に降ろした。

「早くここも洗ってくんねー?」

「はーい」

待ってましたと言わんばかりに私は手を伸ばす。洗うという口実の手コキでイかせてしまえば後が楽だ。
それはオヤジ相手だけかもしれないけど。清志くんは若いから一回抜いたくらいじゃまたすぐに元気になるだろう。それでも、口でする回数が一回減る。
たっぷり泡をつけた手で扱いていると、清志くんは私の両肩を掴んだ。

「イきそう?」

「なぁ、顔にかけていー?」

苦しそうな表情でそう問いかけてくる清志くんに頷く。顔にかかれば化粧落とせる。私のスッピンみて執着心をなくしてくれるといいんだけど。
そんなことを考えてるとは露知らず清志くんのモノがドクリと波打った。
動かしていた手の速度を緩め、射精が終わるまで目を瞑る。どろりとした感触が顔や胸に伝わってきた。

「名前ちゃんすげーエロい」

「シャワー取って」

普段仕事中はもっとムードを大事にする。けど相手は清志くんだし。
手渡されたシャワーで顔と体を流し、私は洗面所にクレンジングオイルを取りに行った。

「化粧落とすけどいいよね」

「おー、いいんじゃね」

先に湯船浸かってていいよと告げると、清志くんは私の手からクレンジングオイルを奪っていった。

「俺がやってやるよ」

「え、なんで」

「なんかやってみてーから。目瞑れよ」

言われた通りに目を瞑ると、唇に柔らかい感触がした。キスされたんだろう。それは数秒で離れ、今度は顔にオイルを塗りたくられた。
私の顔面は化粧品の色同士が交じり合って酷いことになってるんだろう。見られても困らない。
そういえば、こういうのを見られたくない人って誰だろう。大輝は問題ない。和成くんも問題ない。あー京都に居た征ちゃんはちょっとイヤかも。
くだらないことを考えてるうちに、清志くんの手が止まった。

「多分もう平気だろ。流せば?」

また手渡されたシャワーでオイルを流し、洗顔フォームで顔を洗う。
終わったあとに清志くんを見やると、目が合った。もしかしてずっと眺めてたのかな。

「スッピンでも変わんねーな」

「それ他の女の子に言わないほうがいいよ。毎日時間かけて化粧してんだから」

「褒めてんだけど」

褒めるなら可愛いとか色々あるでしょ。お世辞にも可愛いと言えないような顔だからそう言っているように思っちゃうのだ。スッピンの酷さに引かれなかったことに若干落胆しながらも清志くんの手を引き、湯船に浸かると後ろから抱き抱えられた。

「なー、彼氏と別れて俺にしとけば?」

「それこそ騙されそうなんだけど」

別に彼氏が欲しくないわけじゃない。けどホストはお断りだ。
私は清志くんの手に自分の手を重ねて笑う。

「趣味カノになるつもりはないよ」

「和成から聞いたのか?アイツ轢き殺す」

「……和成くんにそういうこと言ったんだ。ごめんただの私の勘」

あと大輝の。カマかけただけだったんだけど暴露しちゃうって……清志くんって案外騙されやすいのかな。また私は笑った。
すると抱き締められている力が強くなる。

「最初は趣味カノにしたかったんだけどよ、名前ちゃんがいいって言ってくれんなら本命でも嫁にでもなんでもしてやるよ」

なぜ清志はここまで私に拘るんだろう。私レベルの女なら客にもいっぱいいるはずだ。
面倒なホストだと思ってたけど、少し可哀想になってきたからメールくらいは返してあげようかな。
ホストの言葉なんて信用しない。私は清志くんの言葉を笑って聞き流して有耶無耶にごまかした。
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