昼間、バイトが休みの兄貴と学校をサボった俺は、ババアの部屋兼居間で煙草を吸いながらくだらねぇ話をしていた。
酒と煙草は小学校卒業してから。そんな風に教えてきたのはババアだ。ババアに怒られることはない。
テレビのチャンネルを回していると、玄関のドアが思いきり閉まるような音がアパートに響いた。
「最悪ー、おまわりに捕まった」
ドカドカと歩く音と共にババアの声が聞こえる。
部屋に入ってきたババアはめんどくさそうな顔をしていた。
「あ、お前らいたの?聞いてよ!あ、その前に祥平煙草ちょうだい」
俺の横に腰掛けたババアは、兄貴の煙草を掻っ攫って吸い始めた。
「マッポに捕まるとか何したんだよ」
兄貴が爆笑しながらババアに促す。俺も気になってるからババアに視線を向けた。
「祥平の原チャリでパチンコ行ったんだけどさぁ、帰りに一時停止無視したら捕まった」
「ハァ!?ババアテメェなに勝手に人の原チャ乗ってんだよ!」
「つか私無免だしさー、罰金10万とか無理なんだけど!本当最悪」
兄貴が憤慨してるのをスルーしたババアは溜め息を吐いた。
「あ、今まだ外におまわり待たせてんだよね。祥平に話聞きたいってさ。『鍵置いといたら勝手に使われた』って事実言っとけばいいから。金はおかあに借りるしかねーか」
「待たせといて寛ぎすぎだろ。つかお前どんだけばーちゃんに迷惑かけんだよ」
二本目の煙草(今度は俺のだ、ふざけんな)に手を伸ばしたババアはまだおまわりを待たせる気らしい。
見兼ねた兄貴が立ち上がり、玄関に向かった。
後日、ばーちゃんに金を借りたババアは増やそうとして全額パチンコに突っ込んで更に10万借りていた。これからコイツにだけはなんも説教されたくないと思った。