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緊張感が漂う中、黄瀬が剣呑な眼差しで灰崎を見た。
「どーせショーゴくんのでしょ。何で自分のロッカーに仕舞わないんスか」
「ハァ? ちげえよ。つーかオレゴムなんか使わねえし」
否定の言葉を発した灰崎に、その場にいた全員の鋭い視線が貫く。
「サイッテーなのだよ!」
「灰崎君、避妊も出来ないなら性交性する資格はありません」
「オレのことドン引きさせる崎ちんすごくないー?最低すぎる」
それから弱十分程、多方面から総叩きにあった灰崎は、疲労感を滲ませながらベンチへと腰掛けた。そこに更に追い打ちがかかる。
「犯人逃れしたいが為にゴムつけないなんて嘘ついてるんじゃないッスか?」
これだけ責められ、また容疑者扱いに逆戻りかと灰崎は声を荒げた。
「そんなに言うんだったらなァ! 本当にゴムつけないかどうか相手に聞けよ! 明日アイツ連れて来てやっからよォ」
アイツとは、灰崎の彼女だということはすぐに全員が察した。灰崎の言葉に何故か紫原は顔を顰め、緑間は手に持っていたドリンクボトルを床に落とした。周りはそんな二人を気にも留めていない。
「オレばっか疑ってんじゃねーよ。コイツだって怪しいだろうが」
そう言って灰崎は黄瀬を指差した。
差された本人は、綺麗な顔を歪めすぐ様否定した。
「ハァ!? オレな訳ないじゃないッスか! そもそもゴムアレルギーだからそれ使わないし! 他の素材のやつ使うし!」
響いた黄瀬の言葉に部室内がざわつく。
「童貞じゃありませんアピール? 黄瀬ちんうざー」
「この場でそのアピールは逆効果だな黄瀬。経験者の方が疑われるのは至極当然だろう」
紫原と赤司の言葉に頷く者たち。黄瀬はそんな様子を見て叫ぶように言った。
「初めてゴム使ったあと、ちんこが赤くなって痒くて痒くてでも掻けなくて、そんな辛さを味わったオレに対してひどいッスー!」
親に隠れ、恥ずかしい思いをしながら泌尿器科に行ったという出来事を切実に語る黄瀬に、経験者が憎い! と思う者達が同情するはずもない。灰崎に関しては、リョータマジかよウケるざまあとヒーヒー笑い転げているが。
灰崎の笑い声が収まった頃、緑間が発言した。
「コイツも怪しいのだよ」
今日は長い夜になりそうだ。