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部活が終わった放課後、帝光中のバスケ部の部室にてその場にいた全員に緊張感が走っていた。
「……本物は初めて見たな」
赤司がボソリと言った。おいおいマジかよ……。そんな灰崎の言葉はこの状況に対してか赤司に対してか、追求する者はこの場にはいなかった。
事の発端は十分前まで遡る。
練習後の片付けを終えた赤司、緑間、青峰、黄瀬、紫原、黒子、灰崎はレギュラーが使用している部室へと疲れを滲ませながら戻った。各自着替えたりと帰宅準備をしていると、突如緑間が声をあげた。
「何故こんな物が此処にあるのだよ!」
なんだなんだとその場に居た全員が、視線を向ける。
今日の担当者であった緑間が部誌を取り出そうとした事は全員察しが付いた。戸棚を開け、固まっている緑間に赤司が近付き声をかける。
「どうした?」
「……これが、部誌の前にあったのだよ」
赤司の問いかけに振り返りながら答えた緑間は、手にした長方形の箱を見せた。
視線を向けていた面々から複数の声があがる。
「それって」
「なんで部室にあるんスか」
「ゴムじゃん」
直球で言い放った灰崎の一言に、その場に居た全員に緊張感が走った。
部室にこんな物があるなんて、顧問や他の教師に知られてしまったらどうなるのだろうか。最悪活動停止になりかねない。
そんな重苦しい雰囲気が暫く続いたが、冒頭の赤司の一言により固い空気が少し和らいだ気がした。