目が覚めると、懐かしさを覚える天井がそこにあった。

「アァ?なんで此処に居んだよ」

 辺りを見渡すとグラビアのポスター、床に散らばるゲーム機、脱ぎ散らかした中学校の制服。自分は今まで何をしていただろうか。
 あぁ結婚式の帰り道に人生やり直してェと思いふけってたら信号無視しちまって、事故にあって……そこまで思い出すと飛び起きた。

「は、え、ハァ!?」


 結論から言うと、二十代半ばの記憶を持ったまま中学一年生の身体に戻っていた。
 夜遅くに帰宅したまだ若々しいオカンに「オレ何歳だっけ」って聞いたら「自分の年齢もわかんねーくらいバカなの!?誰に似たんだよ!それとも中一って総じてこんなバカだっけ!?」って爆笑された。解せぬ。
 いつもより視界が低いし鏡に映る姿も中学時代のソレだ。夢かどうか確かめるべく土下座体勢で床に己の額を叩きつけた。痛かったし音が響いたのかオカンに怒鳴られた。

 人生やり直せるのか。アイツを手放さなくて済むのか。この訳わかんねー現状に戸惑いつつも、オレは確かに喜んでいた。


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 どうやり直そうか、ガラケーに入っているカレンダーを眺めながら想像していると、いつの間にか寝落ちていたらしい。
 目覚ましの音に飛び起き、支度して中学校へと向かう。このくらいの時期は確か、彼女と結構仲良くなった頃だったか。如何せん十数年以上前の事だから記憶がおぼろげだ。
 学校に着き教室に入ると、聞き慣れた彼女の声よりもう少し高い声が聞こえた。

「祥吾おっはよー!今日早くない?」

「おー、はよ。なんか早く目覚めちまったわ」

 目の前に来た彼女は、つい先日見た姿より幼く、そして金髪にミニスカートルーズソックスと落ち着きがなかった。
 対応に変な所はないか不安に思いながらも彼女の肩を抱き寄せる。

「とりあえずサボろうぜ」

「エッ登校してすぐかよ。HR出なきゃせっかく来たのに意味ないじゃん」

「あー、そうだな。じゃあHR終わったらサボり行くぞ」

「ウケるどんだけサボりたいんだよ」

 ケラケラと笑った彼女はじゃあ後でねと席に戻っていった。
 彼女への対応はこれで良かったのか。この頃のオレは肩を抱いたりしていたか? ぐるぐると考えたが、彼女が嫌がる素振りは見せなかったしまぁいいかと自分の席へとついた。


 サボりの穴場スポットへと向かい、彼女とダラダラと過ごしていると、彼女が不思議そうに問いかけてきた。

「祥吾今日ゲーム持ってきてないの?やってないの珍しくない?」

「ア?あー、忘れた」

「エッまじ!?学校にゲームやりきてるって感じの祥吾が?」

「ゲームなくてもお前眺めてるだけで楽しいからいいわ」

 ぽろりとそう声に出してしまうと、彼女は驚きに目を見開いた。

「えっ、えっ、なにそれわたし珍獣かよ」

 違うそうじゃねえ。否定の言葉を出してもよかったが、無言で返した。あどけなさの残る彼女の拗ねたような表情が可愛くて頭を撫でる。
 コイツってこんなにも可愛かったのか。この頃のオレも彼女の容姿は可愛いと知ってはいたが、友達としてしか見ていなかった。今更中学生のガキを抱ける気はしないが、彼女ならイけるのではないだろうか。

「撫でないでよ」

 彼女がオレを拒否する言葉に今度はこちらが驚き、手を引っ込める。

「イヤだったか?わりい」

「イヤっていうか、困る」

 彼女の表情から考えていることが読めない。困る。その言葉にオレはコイツこの頃彼氏居たっけだとか過去を思い出そうとするが、覚えていないだけなのか記憶にはなかった。彼女に初めて告白された前か後かも怪しい。考えてもわからないのだから聞くしかない。

「どういう意味だよ」

「わたしこの前祥吾のこと好きって言ったじゃん。諦められなくなる、困る」

「は、そこかよ」


 まさか告白された直後だったとは。こんときオレ彼女居たんだったよな。誰だったか。顔も名前も何もかも覚えてねえけど探して別れなければ。困ったような表情の彼女を見てどうするかと頭を悩ませる。
 彼女はオレを諦められなくて十数年過ごすんだ、でも諦めようとしている彼女に焦燥感は募る。

「てかよ、オレの彼女ってどいつだっけ?」

 焦りすぎてやらかした。彼女どいつだっけ?なんて聞くバカどこに居んだよ。ここだよ。
 彼女は「はぁ!?」なんて声を荒げてどうしたの記憶喪失なのだなんて呆れたようなどこか心配したような表情で聞いてきた。

「部活のセンパイにボコスカやられて相手の顔と名前飛んだかもしれねェ。ぶっちゃけ彼女欲しかっただけで好きで付き合ったわけじゃねーしな」

 「エッまじで?ほんとに?」彼女がオレと付き合ってる女のクラスと名前を教えてくれた。とりあえず虹村サンはすんません。

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