高校を卒業し半年が経ちなんとか仕事にも慣れて来た。入社したら石田さんがいたのには驚いた。二人で住むマンションへと引っ越し、一足早い新婚生活を満喫している。
 そんなこんなで充実する日々を送っていたある日の休日、彼女と式場を選んでいた。豪華な式は無理だし披露宴なんてやれそうにはないが、こじんまりとしたモノなら高校の頃バイトしてはほとんど突っ込んでいた貯金の額でも足りそうだ。彼女は別に式なんて挙げなくてもいいと言ったが、花嫁姿見たいんだよワリィかよ。と言ったオレに嬉しそうに笑った。
 カタログやネットを漁っていると、彼女があっ!と声をあげた。

「ここ良さげじゃない?」

 視線をカタログに移すと一瞬息が止まった。彼女が見ているのは、リョータと彼女が式を挙げたその場所だった。

「縁起ワリィ。ここだけはダメだ」

「なんで?安いし綺麗だし良くない?」

「いいからやめろ、頼む」

 ここからの帰りに事故にあって中一へと逆戻りしたのだ。もしも、今度は逆に元の時間軸へと戻ったらと血の気が引いた。

「えっ顔色やばいよ。そんなにイヤ?わかったここはやめよ」

 彼女の言葉にホッとしたオレは、ペタペタとオレの顔を触る彼女を振り払うこともせずされるがままだ。

「なるべくここら辺には近付くなよ」

「わかったけどまじどーしたの」

「イヤな感じがする」

「野生の勘? ショーゴって狼っぽいよね」

「狼かァ、じゃあお前赤ずきんちゃんな」

 オレにぺろりと食われてろ。押し倒すと彼女は爆笑し始めた。

「祥吾がおばあさんの女装してんの想像したらやばい! 腹筋割れる」

 オレ今ヤろうとしてたんだけど。その言葉を飲み込んでぷにぷにとした腹に手を這わせた。

「こんなぷにぷにじゃ、笑いすぎて腹筋割れることはねぇな」

 鼻で笑ってやると、彼女は「柔らかくて美味しいよ。食べてもいいよ」と返して来た。遠慮なく腹の駄肉に噛み付くと、ギャッ! 痛い! そういう意味じゃない! と頭を叩かれた。



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 婚姻届を出し、彼女の親族とオレの親族、それと人数合わせで虹村サンだけを呼んだ小規模な結婚式をあげた。
 彼女の花嫁姿を見てオレが泣いているのを見た虹村サンまで泣いていた。あの人暑苦しーよな。
 あの時見たリョータとの式での彼女より綺麗で可愛くて、世界中のどの女よりも最高だと思った事は自分だけの秘密にしておくことにした。

 披露宴は無理だったが、食事会を行い自宅へと戻ってきた。

「やばい、なんかめっちゃ疲れた」

「オレすげえ元気なんだけど?」

「祥吾の体力可笑しすぎ」

「あんな可愛いお前見て元気にならない方が可笑しいだろ」

「下世話な意味でかよ。どっちにしろ祥吾の体力おかしいよ」

 彼女は結婚初夜だというのに相変わらずムードもへったくれもない。まぁヤることは変わらないからいいのだが、彼女の性欲も異常な部類に入るのは自分でわかっていないのか。ソファーに押し倒しながら唇を重ねればすぐに乗り気になった。

「お前も元気だな」

「祥吾がチューだけで濡ちゃうエッチな体にしたんでしょ」

 寝て起きてもしも戻ってしまったら、そんな不安を掻き消すように、可愛い事をいう彼女を抱いた。

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テーマ「人外ファンタジー」
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