今日は会社の飲み会だ。
毎回わたしの隣を陣取る花宮さんは今回もわたしの隣を死守していた。

「そんなにハイペースで飲んで大丈夫かよ」

どんどん酒持ってこい状態なわたしに心配そうに問いかけてきた花宮さんに答えようとすると、向かいに座っていた男がわたしの代わりに答えた。

「強いから大丈夫だよねー」

「最近あんま飲んでないので弱くなっちゃいましたよー」

「酒強いのは知ってるが、酔っぱらいはするだろ」

「今日は友達が迎えに来てくれるんで、めっちゃ酔っ払っても大丈夫です」

会社の飲み会があるって言ったら、シュウくんが迎えに来てくれることになった。だから好きなだけ飲めるー!気分よくて花宮さんにお酌しまくる。普段だとお酌?周りの男が気付いたらしてくれてるものって認識だけど。

わたしのペースに呑まれた花宮さんは、とうとう酔い潰れた。

「おいオレと結婚しろよ」

「キャッ!プロポーズですか?照れるうー」

「ガキは何人がいい」

客先相手には爽やか、社内ではぶっきらぼうでちょっと意地悪な所もありながらも確実に仕事をこなすデキる男花宮さんのキャラが大変なことになってる。めっちゃウケる。爆笑したいのを堪え、デキる女なわたしは酔っぱらいの相手をする。

「子供は今のところ欲しくないですねー」

「暫く新婚生活楽しむのも悪くねーな」

「てかなんでわたしと結婚したいんですか?」

「見た目が可愛いからに決まってんだろ。それに仕事が出来過ぎない隙があるところも可愛い」

花宮さんはわたしが如何に可愛いかを延々と説明しだした。
目の前の男は花宮さんの豹変ぶりに爆笑してる。わたしも笑いたい。けど酔いがさめたときに花宮さんに記憶あったら確実に次の仕事でこき使われててんやわんやしてるとこ見て楽しそうに笑ってくるに違いない。わたし普段からSっ気ある男苦手なの!

「おい聞いてんのか。お前の可愛い所はまだまだあるからちゃんと聞け」

真っ赤な顔と据わった目でわたしの肩を抱いてきた花宮さんはまだ続けるつもりらしい。この人普段からわたしのことどんだけ可愛いと思ってんだよ。

「お前の何が可愛いってオレが意地悪したら困ったような顔でなんで意地悪するの?とでも言いたげに見てくる時だ」

ごめんぶっちゃけ花宮さんに意地悪されたときはまたかよ!めんどくせー男だな!って思いながら表情作ってるよ。相手がシュウくんやショーゴならほんとウザい!くらいは言ってる。
あんまり意地悪しないでくださいって花宮さんが大好きであろう困った表情を作ると、抱きついてきた。これがデブハゲジジイだったらセクハラだなんだ騒いだかもしれない。

「ベッドの中でも苛めてえ」

「大丈夫ですか?流石に飲ませすぎちゃいました?」

他の人たちはすでに酔っ払っていてこちらに目もくれない。照れのひとつやふたつは見せなくてもいいだろう。テキトーにあしらう。
今度は延々とどうわたしを抱きたいか耳元で語り始めた花宮さんの話をハイハイと聞き流しつつ、酒を飲んでいればお開きとなった。

店から出て二次会へ向かう人たちの群れから離れると相変わらずわたしの肩を抱いている花宮さんが言った。

「危ねえから家まで送る」

「逆にわたしが送らなくて大丈夫ですか?友達来るんで乗せて行きますよー!」

「ハァ?お前可愛いから誘拐されるぞ」

なんで友達がわたしを誘拐するんだよ。どっちかっつーと誘拐しそうなのお前じゃね?とはなんとか言わないでおいた。わたしも結構飲んだから地が出てもおかしくない状態だ。
もたれ掛かってくる花宮さんの重さがしんどい。頑張って大通りまで出ると、シュウくんの車がハザードランプをつけて停まっていた。
歩いているわたしの姿が見えたのだろう、運転席からシュウくんが降りてきた。

「思ったより早かったな」

「健全な時間に帰宅とかえらくない?」

「男ひっつけてるけどな」

「ウケる」

「ウケねーよ。んで、そちらは?」

「よく話してるでしょ。会社の先輩の花宮さん」

「……どーも」

シュウくんと話していると、花宮さんが顔をあげた。それを見てシュウくんはあっ!と声をあげた。

「……花宮?もしかして無冠の?」

「お前、帝光の……」

「エッ知り合い?」

「バスケで面識ある」

「まじか」

「おい、なんでコイツと知り合いなんだ」

花宮さんが相変わらず据わった目で問いかけてきた。

「中学時代の先輩?で腐れ縁?友達?的な感じですかね」

わたしがそう言うとなんで疑問系なんだよってシュウくんのツッコミがすかさず入る。なんでってそりゃウチらの関係性って言葉に表しにくくない?わたしだけ?

そんなこんなで話し込んでいると、シュウくんの車の助手席のドアが開いた。

「お前ら遅いんだけど」

ショーゴも来てたの。びっくりしていると花宮さんが声をあげた。

「灰崎祥吾か?」

なんなの皆顔見知りなの?わたしついていけないんだけど。
飽きたわたしはシメにラーメン食べたいーってつぶやいてたらなんか4人でラーメン食べに行くことになった。
なにこの謎メンツ。

酔いのさめない花宮さんはラーメン屋でもわたしが如何に可愛いかを語っていた。シュウくんとショーゴが引いてた。



2018.2.19
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