やばい。何がやばいって目の前の二人がマジギレしてるのがやばい。さっきまで面倒くさい酔っぱらいだったわたしの酔いが冷めるくらいにはやばい。
やばい言いすぎてやばいがゲシュタルト崩壊するやばい。

わたしの城、基アパートに帰宅して電気ついてたからただいまぁー!ってルンルンで帰宅して、合鍵を持っている二人が出迎えに来てくれたまでは良かった。おーおかえりなんて言ってくれた二人はわたしを送ってくれた背後の男を見てピシリと固まった。アッこれもしかして何かの地雷踏んだ?


「おま、何コイツに迷惑掛けてんだよ!可哀想だろうが!」

ものすっごい剣幕で責めてきたシュウくんに、一緒に飲み行ってただけだもん。そんなことで怒られるわたしの方が可哀想なんだけどー。なんて言う勇気はなかった。
でも表情には出てしまっていたらしい。シュウくんの眉毛がピクリと動いた。やばい。
そしてこれまた怒り心頭なショーゴがわたしの肩を掴んで来た。

「テメェ、なにのこのこ連れてきてんだよオレへの嫌がらせかァ?アァ?」

肩ちょー痛い。そう呟いたら更に力込められた。


――遡ること数時間前、わたしは珍しく定時退社出来てルンルンで駅へと向かっていた。
そしたら中学時代の同級生を見かけてそのまま呼び止めた。

「あっれ?もしかして赤司!?ひっさしぶりだねー!」
「……すみませんが、何処かでお会いしたことが?」
「あ?なにもしかしてこのわたしのこと忘れたの?ひどくない?」

見覚えありません的な困った表情を浮かべる赤司に、逃さないと腕に絡みつく。

「今暇?とりあえず思い出さなくていいから飲み行こーよ!赤司の奢りで」

「……思い出した」

わたしの言動に何か覚えがあったのか、赤司は、わかった付き合うから取り敢えず腕離そうか。と苦笑を浮かべた。




「んで、お前はいつものノリでワーイただ酒!と散々飲んで酔っ払って赤司に送ってもらったわけか」

「ただ酒めっちゃ美味しかった」

「赤司、ホントコイツが迷惑かけたな」

「いえ、迷惑は少々かけられましたが楽しかったので」

「エッ赤司めっちゃいいやつ。また飲み連れてってね」

反省のはの字もないわたしにシュウくんは呆れた表情を浮かべ、赤司は頷きながら笑っていた。
ショーゴは先程からムスッと黙り込んでる。なんなのショーゴは赤司くん嫌いなの?なんかあったの?ショーゴはとりあえずキセリョ嫌いな記憶しかないんだけど。

「ショーゴー。なんでそんな機嫌悪いの?チューしてあげるから機嫌直してよ」

「酒クセェから寄るな」

赤司がシュウくんにいつ日本にとかそんな話題を振ってる横でわたしはショーゴのご機嫌取りに奮闘するが、テメェのチューごときで機嫌直る訳ねぇだろと言われカチンときた。

「ハァ?わたしとチューしたい男がこの世にどんだけいると思ってんの?」

「一人もいねぇよ」

「いるよ!いっぱい!まずうちの会社の花宮さんでしょー、取引先の宮地さんでしょー、キセリョでしょー、緑間でしょー、」

「ハァ!?リョータ!?」

「「緑間!?」」

言わずもがなショーゴはキセリョに、シュウくんと赤司は緑間に反応した。どういうことだと詰め寄られるもわたしはなんだかどうでも良くなってテキトーにあしらうことにした。
案外しつこい三人だったが、わたしが口を割らないとわかったのか渋々諦めた。

「赤司は?わたしとチューしたいなら今なら出血大サービスでしてあげる!」

「えっ……人前ではちょっと」

「は?わたしのチューが嬉しくないって?」

「違う、出来るならしたいんだが。次飲みに行った時にでもさせてくれ」


わたしのダル絡みにマジレスしてきた赤司を見るシュウくんとショーゴの顔がすっごい面白かった。
その後赤司の足元が覚束なくなった事がきっかけに、わたしが飲ませすぎたせいで酔っ払っていた事が発覚した。
赤司をウチに招き入れ、嫌々ながら赤司の介抱をするショーゴを横目に、わたしはシュウくんにガチ説教を食らった。
狭いウチのアパートに大の男三人って圧迫感ヤバすぎじゃね。


2018.2.18
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