やばい、バイトが見つからない。
最近面接を受けまくってもことごとく落とされる。
そんな焦りからか、私は年齢詐称してキャバクラの体入に来ていた。
「可愛いし今日からよろしく。ハタチか〜めっちゃ俺のタイプ」
店長はそう言ってミテコで即採用してくれた。いいのそれで。テキトーじゃね。
私はめっちゃ猫かぶって「よろしくお願いしますっ」と挨拶した。
着替えやヘアメをするのはここから歩いて2分くらいのところにあるアパートの一室だ。
11月の上旬、寒い中店長に案内され、アパートの一室にたどり着いた。
中はワンルームで、ドレスが沢山と大きなドレッサーが置かれている。
そこで若作りしたオバちゃんが近づいてきた。
このオバちゃんがヘアメ担当らしい。
「あんた、稼いだらエクステ付け直しなよ?傷んできてる」
「あ、まじですか。えへへ」
オバちゃんは話しやすかった。
んで、ズケズケ言うことが発覚した。
「二の腕太いわね〜。ドレス着るときはストールで隠しなさい」
「……はーい」
二の腕太いの気にしてんのに〜!
自分でやる時とは違い、すごい綺麗に巻かれていく髪を鏡越しに眺めていると、いつの間にか終わっていた。早い。
***
キャバで働き始めて一週間が経った。なんとかサマになってきたと思う。
終電前までしか働いてないけど、貰えるお金は結構多い。
親友宅の最寄り駅まで来て、バスターミナルまでの道を歩く。アルコールが入って火照った体の熱をあげないように、ゆっくり歩いていると声をかけられた。
「ねえ、オネーサン仕事帰り?飲んでかない?」
声の主へと視線を向けると、そこにはまぁまぁイケメンのホスト(多分)が立っていた。
「私お金ないもん」
「えー、じゃあちょっと話そうぜ」
「バスの時間までならいいよ」
「まじで。やった」
まぁまぁイケメンのホストの名前は清志って言うらしい。私はキヨくんって呼ぶことにした。
「で、名前ちゃんは友達ん家に居候してんのか」
「そうそう」
「居づらくなったら俺ん家きてもいいぞ」
「あはは、ありがとー」
キヨくんと身の上話をしていると、そろそろバスが発車する時間だ。
キヨくんと連絡先を交換し、私はバスへと向かった。
***
親友宅に着き、親友の部屋へと入ると、和成たちが来ていた。
「名前おかえりー」
「おかえりッスー」
「おかえりー。って名前、お前さ……」
皆で宅飲みしてたらしい。親友と涼ちゃんはコントローラーを持ってテレビに釘付けのままだ。和成は私に視線を注いでいた。多分派手にセットされた髪が気になるんだろう。
「どう?可愛い?」
「ケバい」
そういいながら私に近づいて綺麗に巻かれた髪を一房手に取る。
「酒くせぇ。バイトって何、キャバか?」
「うん」
「はぁ、やめろよ」
「なんで」
「名前には水商売とかして欲しくないんだよ。普通のバイト探せって、な?」
軽く抱きしめられ、これまた軽くキスされた。これだけでときめいた私は安い女だ。
「じゃあ、他のバイト見つけたらやめるから」
果たして他のバイトなんて見つかるんだろうか。