翌日、遅番だった私はショーゴより遅い時間に家を出た。
目の充血は収まらなかったものの、瞼は腫れてなくてよかった。
店長やショーゴのことばっか考えてたおかげで、和成のことを思い出さずに済んだ。
ロッカールームで着替え、売り場まで移動して挨拶すると、みんなに無視された。えー、店長仕事出来るくせに昨日の事言いふらして無視とかさせんの。小学生の女子かよ。
その中で、唯一挨拶を返してくれたのは原澤さんだ。
笑顔で駆け寄って今日の仕事内容を聞くと、これからゴミを捨てに行ったり、巨大冷蔵庫にフルーツを取りに行かなきゃいけないと聞いた。
生ゴミは沢山あるし重い。
一緒に行きましょうと誘ってくれた原澤さんに頷き、生ゴミを二袋ずつ持って社員通路へと向かった。
「話は聞きましたよ」
「あ、店長やっぱり何か言ってました?」
「ええ。大丈夫ですか?」
「原澤さんがこうして普通にしてくれてるから大丈夫」
笑顔でそう言うと、原澤さんも微笑み返してくれた。
「女は怖いですからねぇ。次からのシフトはなるべく私と一緒の方がいいですかね。調整しますね」
「わー、それめっちゃ嬉しいです!やったー」
原澤さん優しいし。ミスしても怒るどころか慰めてくれるし。私の話し相手にもなってくれるし。
喜んでいると、どうやら道を間違えそうになったらしい。原澤さんが「こっちです」と笑った。
生ゴミを捨て、フルーツの置いてある地下へ向かっている時、また原澤さんが口を開いた。
「実は、灰崎君が頼んで来たんですよ。職場でフォローしてやってくれって」
「え、そうなんですか」
「言われなくともそうしてましたがね。苗字さんが懐いてくれてるのに悪い気はしてませんでしたし」
娘でも出来た気分です。そう原澤さんに言われて私は感激した。
娘と父ってほど歳離れてるわけじゃないけど。やっぱり男は懐いてくる年下の女には弱いのか。
台車を借り、必要なフルーツをダンボールに入れていく。
「店長たち、仕事内容質問しても無視する気かなぁ。ただでさえ私仕事できないのに困るー」
「関係のない人間まで加担するなんて大人げないですねぇ」
「原澤さんいない時どうしよー」
「私がいない時は休んでしまったらどうです?」
「え、原澤さん社員なのにそんなこと言っていいんですか」
「こんな状態じゃ、苗字さんも仕事にならないでしょう」
「まあ、確かに」
「私にメールでもなんでも連絡下されば、店長にはこちらから言いますよ」
「あ、じゃあお願いしてもいいですか」
「お任せ下さい」
原澤さんのシフトはメールで教えてもらえることになった。