目が覚めると周りは真っ暗で、階下から微妙に漏れてくる灯りからして二階の廊下なのだろう。親友の部屋は一階だ。あれ、確か一階のトイレが使われてたから二階に来たんだっけ。うつ伏せの状態からなんとか仰向けになる。
アルコールが回り切っている頭でなんとか今の状態を理解すると、頭上に人型の暗い影が現れた。

「全然戻ってこないと思ったらこんなとこで寝てたの?だいじょーぶかよ?」

暗くて顔がみえない。声からして男だ。声で誰だか判断出来ないほどには酔いが回ってるらしい。
目の前の影は私のそばに座り込んだ。

「ストレートそんなにキツかった?」

「焼酎とかストレートで飲むもんじゃない〜死にそう、助けて」

影に腕を伸ばすと、辿り着く前に手を絡め取られた。んでキスされた。わーなんかちょっとキュンとしたー。
影は暫くすると顔を離し、また様子見に来ると去っていった。

んで、その影はちょいちょい私の様子を見に来ては私にキスして去って行くを繰り返していた。
30分?1時間?どのくらいだかはわからないけど、ひんやりとした廊下に居続ければ酔いもマシになってくる。部屋に戻ると、真っ先に気付いた涼ちゃんが私のところへやってくる。

「あ、戻ってきた!今大富豪やってるんスよ!名前ちゃんもやろ」

さっきの影は誰だったんだろう。なんて私が些細なこと気にするわけもなく、幾分か頭も働くようになってきたしと大富豪に参加することにした。
Jバックって何、都落ちって何。私の地元では使われないルールを説明して貰いながらも楽しんでいる。
結果、一番大貧民の多かった私が罰ゲーム受けることになった。

「いやマジでホントもう無理!」

「一口でいいから飲めよー」

拒否っていると、鏡月の瓶を持った和成が近付いてきてそのまま飲まされそうになる。鬼畜か。
傾けられた瓶の中身が私の口へと流れ込んできて、思わず飲み込むと、焼けるような痛さが喉を襲った。

「ゴホッ、ゴホッ。あー溢れた洋服濡れたあああ」

そう喚いているとぐらりと視界が歪む。酒飲んで意識を飛ばすのは初めての経験だった。




***




目が覚めると、部屋はほぼ真っ暗で、付けっ放しだったテレビの明かりだけが部屋の中を照らしていた。
あ、ちゃんとベッドで寝たんだ。重い頭を上げると、涼ちゃんも親友は床で潰れている。そして、すぐ隣に和成が横になっていた。

「あ、目ぇ覚めた?」

「うんー」

「名前が潰れてからあいつらもすぐ潰れちまったんだぜー。全然起きやしねぇ。つーかさ、覚えてる?」

「なにが?」

「俺とヤッたの」

「は?なにいってんの?」

「お前一回起きたんだよ。んでめっちゃ誘うようなことしてくるからトイレで」

「いやいやいやいやないわ」

「嘘じゃねーって。こいつら潰れてるとはいえここでヤんのもあれかとトイレでヤるか聞いたら頷いてついてきたじゃん」

「覚えてないんだけどマジでホント?」

「こんな嘘つかねーよ。つかお前手慣れてんのな」

ちょっと待って。話を聞かされた私は嘘だとしか思えない。和成は冗談でしたーなんて言う雰囲気は微塵も見せずに私のことを見つめている。

「いやいやねーわ、私処女だし」

「は!?あれで!?嘘だろ!?」

「覚えてないし、嘘つかないでよ」

「マジだって」

それからも和成が否定することはなかった。それどころか私の体についてるキスマークが証拠だと現実を目の当たりにした。
初体験覚えてないってどうなの。動揺したのは親友の好きな人だからだ。それ以外全くショック受けてないってどうなの。
つーかごめんなさい親友の好きな人とヤッたとか私最低な女だわ。
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