泣きついた日から、ショーゴは酔ってなくても私を抱くようになった。クリスマスイブに一回経験してたからもう驚かなかった。

今日はお互い仕事が休みで、一緒に昼間から百貨店近くにあるパチ屋に来ていた。
ショーゴはスロットを打って、私はパチンコだから一緒に来た意味はあんまないと思う。

夕方に差し掛かるころ、お互い気分良く店を出て換金する。

「なんか飯食いいくか?」

「たまには外で酒飲みたいかも」

「じゃー居酒屋でも行くか?」

「いいね〜でもまだ夕飯には早いよね」

「メダル結構預けてあるしゲーセン行くか」

そんな話をしながらゲーセンに入る。
二階に行くのに、エスカレーターのある場所まで歩いていると、見知った顔と目があった。

「あ」

店内は騒がしいのに、少し前を歩いていたショーゴには私の声が聞こえたらしい。
ショーゴがこちらを向いたのが視界の端に映った。

「どーした?」

そう言いながら私の視線の先を見たのだろう。
音ゲコーナーの方で和成がこっちを見ていた。隣には見知らぬバンギャっぽい女がいた。

「お前の彼氏か」

ショーゴは私に視線を戻していう。私もショーゴを見て頷くと、頭を撫でられた。

「行こーぜ」

ショーゴが歩き出したから後をついていく。
気になって和成の方をちらりと見ると、楽しそうに和成に笑いかけてる女と、こっちを見たままの和成がいた。



***



預けていたメダルを引き出したショーゴは競馬ゲームはやらず、ジャックポットゲームに腰掛けた。

「今日は競馬やらないの?」

「今日はこっちの気分」

気を遣ってくれてるんだろうか。
私も空いている左側に腰掛け、ガラスの向こうにあるボールを落としにかかる。

「これやんのめっちゃ久しぶり〜」

「何気に面白えよな」

二人で白熱しながらメダルを投入しまくる。
ここのゲーセンはタバコが吸えるからいい。
トイレ行ってくると席を立ったショーゴを横目に、タバコ吸いながらメダルを入れ続けていると肩を叩かれた。

「おかえりー」

そう言いながら振り返ると、めっちゃ不機嫌そうな顔をした和成がいた。

「メール返してくんないし、電話でないし、タバコ吸ってるし、男といるし、何してんの?」

私は咄嗟に、タバコを持っている手とは逆の、メダルを持った右手を下ろした。多分頭のどこかで指輪の存在を思い出したからだ。

メール返さなかったのは女ーーレイナちゃんと過ごしていると思って返す気分じゃなかったから。
電話でないのは、電話先からレイナちゃんの声が聞こえてきたら嫌だったから。
男といるのは……女と一緒にいる和成に責められる筋合いはない。

色々と思ったけど声にはならなかった。けど視線は外さないでひたすら和成の目をみた。
俯いたり視線を逸らすなんて自分の非を認めたりやましいことがあるようなそぶりなんて見せない。

「さっき一緒にいた男誰だよ」

「その言葉そっくりそのまま返す」

「あれは友達」

「私も友達と来てる」

「んなワケないだろ?」


「おい、何してんだよ」

和成に責められていると、ドスの効いたショーゴの声が聞こえて、視線を移す。
缶コーヒーとペットボトルのお茶を持っているショーゴの顔は見るからに怒っている。
和成は私の肩から手を退けた。
そこに第三者の声が混じった。

「和成ー、知り合いってこの人たち?」

和成の腕を掴んでそう言ったのは、さっき和成と一緒にいた女だ。制服だけど、黒髪ショートでピアスやらなんやらで見る人が見れば、どこからどう見てもバンギャだ。

「俺待ってろって言わなかったっけ?」

「遅いから」

話し始めた二人を横目に、ショーゴはどかりと私の隣に座った。
ほら、とキャップを開けて渡されたお茶を受け取り一口飲む。
何これ修羅場?どうしようかと頭をフル回転させていると、ショーゴが和成の方をみて口を開く。

「お前、まさか名前の彼氏なんて言わねえよな?そっちの子が彼女だろ?」

ショーゴの問いかけに少し間を置いて、和成が答えた。

「あ、あー。そうだけど」

和成と一緒にいる女は何がなんだかわからないって感じだ。
和成がこう答えるのはわかっていた。今までにも他の女に私が彼女だと隠したことは何回もある。それで毎回喧嘩になっていた。
が、解せないのはショーゴの聞き方だ。なんでこんな言い方したんだろう。

「じゃあ俺と名前が一緒に居ようが何しようがお前に関係ねぇよな。さっさとどっか行けよ」

ショーゴの言葉に、和成は女を引き連れて不機嫌そうにこの場を去って行った。
そしてすぐにショーゴに謝られた。

「ワリィ、ここでうだうだ言い合ってもお前も困るだけだろうし」

傷付くようなことアイツの口から引き出してごめん。そう謝られた。
ショーゴが悪いんじゃない。
自分の事を棚に上げて責めて来た和成に腹は立ってるけど、あの女との事はそこまで気にしていないし、大丈夫。相手がレイナちゃんじゃないから、大丈夫。
私はレイナちゃんが一番怖いのだ。何故だかは自分でもわからない。
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -