クリスマスまであと一週間。
私は仕事後、ショーゴの彼女と話すことになっている。
私は仕事が遅いから、先に作業を終えた彼女が店を出た。話したいなら早く終わるように手伝ってくれてもいいのに。
うわー、もしかして居候してんのバレた?ちょっとドキドキしながら、待ち合わせの駅前へと向かった。
「お待たせ!」
「ううん。あのさ、祥君……灰崎祥吾君知ってるでしょ?苗字さんとどんな関係なの?妹みたいだって祥君は言ってたけど……」
彼女は不安そうに聞いてきた。
私はそれより祥君って呼び方に気を取られた。ショーゴって祥君って呼ばれてんの。ウケる。笑いそう。彼女の事をあだ名で呼んでるショーゴを想像して更に笑いそうになった。似合わない。
「えーと、妹みたいに可愛がってもらってるだけだよ。貴女とショーゴ……君が付き合ってることも聞いてるし」
「妹みたいに大事にしてるから虐めたりすんなよって言われたんだ。同じ店のあの子に森山さん紹介したのも苗字さんなんでしょ?祥君と森山さんとどこで知り合ったの?」
おいいいいショーゴなんで余計なこと言ってんの!そんなこと言ったら余計ハブられんの目に見えてんだけど!
「ショーゴ君も森山さんも、休憩中に喫煙所で知り合ったよ。あとたまにゲーセンで偶然会ったり」
私の口からは自然な嘘がこぼれる。
なんとか納得したらしい彼女は、これから森山さんの彼女とご飯食べに行くから一緒に行かない?と誘ってくれた。
女の子からの初お誘い。ちょっと面倒くさいけど頷いた。
なんかオシャレなお店で大して美味しくないパスタを食べながら、三人でオタクトークに花を咲かせる。オタクトークしたの久々だ。二人は名前で呼んでくれるようになった。
テニプリいいよね。私立海好き。立海といえば28と82どっち派?そんな楽しい会話は突如終わった。
「あ、名前ちゃん!森山さんと祥君には私たちがオタクだって言わないでね!」
「あ、あと私がV系好きってことも言わないで!」
手を合わせてお願いされてしまった。いや無理だ。二人が付き合う前から言っちゃってたし。ここは本当の事を言ったら面倒だし、頷いておこう。あとでショーゴと森山さんに聞いてないふりしてもらうように頼も。
***
駅のホームで遭遇したショーゴと一緒に帰りながら、今日の出来事を包み隠さず話す。
「んじゃ、オタクだって知らねぇふりすればいいんだな?」
「うん、よろしくね」
「堂々としてりゃいいのに。隠そうとすっから逆にキモく見えんだよ」
「グサッときた」
「何、お前も隠してんの?俺には言ったじゃねぇか」
「大して仲良くない人には隠しとくよ。オタクだってわかれば食いつくけど」
私だって初っ端からオタクカミングアウトはしない。
マンションにつき、家の中へ入るとショーゴは真っ先に風呂場へと向かった。
「風呂一緒に入んぞ」
「一緒に入んの好きだね」
なんか彼女と仲良くしてたら罪悪感沸いてきそうだから適度に距離おこうそうしよう。