なんとか午前の仕事を終え、地下の喫茶店に向かう途中にショーゴとばったり出くわした。
「お疲れさん」
「お疲れー」
並んで職員用エレベーターに乗り、喫茶店に着く。
食券機の前でどれにしようか悩んでいると、頼むものが決まったのかショーゴが先にプリペイドカードを投入した。
「俺ラーメンにするわ。名前は?」
「んー、悩むー」
「買ってやっから早く決めろ」
「いいの?じゃあ私もラーメンにしよっかな。ありがとー」
「おう」
おばちゃんに食券を私、暫く待ってラーメンを受け取り喫煙席へと向かう。
いつものカウンター席に並んで座り、食べ始めた。
私が先に食べ終え、食器を返却しアイスコーヒーとホットコーヒーを買って戻ると、ショーゴも食べ終えたようだ。
「はい、ホットで良かったでしょ?」
「おっ、サンキュー。ほら金」
ポケットから300円を取り出したショーゴは目の前のテーブルに置いた。
「いーよ、お昼奢ってもらったし」
小銭をショーゴの方へずらし、アイスコーヒーにガムシロを入れる。
「そーいや、今日仕事終わったら森山さんとゲーセン行くんだけど名前も来るか?」
「森山さん?」
タバコに火をつけながら問い返す。森山さんって誰だ。知らない。
「同じフロアにコーヒーショップあんだろ?そこの人。最近ここで知り合って仲良くなったんだよ」
「へー。てか私のこと知られていいの?」
「もう話しちまった」
「じゃあ行こっかな」
「おう、いつものゲーセンだから終わったらこいよ」
「わかったー」
そのあとは、休憩が終わるまでコロコロと変わる話題に付き合ってもらった。
***
バイトを終えゲーセンに向かうと、すでにショーゴはタバコを吸いながら競馬ゲームをやっていた。
「ショーゴー、お疲れさまー」
「おう、この人が森山さんな。ちなみに26歳独身」
ショーゴの隣に座っている人が森山さんらしい。視線を向けると、たまに社員用喫茶店の喫煙席で見かけていた人だった。黒いトレンチコートが印象的だ。
「どーも、名前ですー」
「よろしく、名前ちゃん。敬語いらないから仲良くしてね」
「ありがと!よろしくねー」
わーい職場の知り合いまたゲット!大きい百貨店なのに全然知り合いいないからかなり嬉しい。
「お前は?なんかゲームやるか?」
「んー、ジャックポットとか麻雀とかならたまにやってた」
「じゃあメダルやるよ。なくなったらまた取りにこい」
ショーゴに大量のメダルをもらい、缶コーヒーを買って麻雀ゲームへと向かう。
役とかはあんまわかんないけど、テキトーに遊ぶ分には問題ない。
席に座り、メダルを投入してゲームを始める。
暫くすると、メダルがかなり減った。麻雀やめよ。私はポーカーのゲームに移動した。
そしてまた暫く遊んでいると、隣に座った人に声をかけられた。
「名前ちゃん、どう?」
「あ、森山さん。全然ダメー」
「灰崎君のメダルだったのに俺もかなりスッちゃったよ」
どうやら森山さんもショーゴのメダルで遊んでいたらしい。
私の残りのメダルを使いきって二人でポーカーやった。メダルが増えることはなかった。