シャワーを浴びてから家事を一通り終え、テレビを見ていたらいつの間にか寝てしまっていたらしい。
時計を見ると夕方の4時だった。やべぇ、布団と洗濯物取り込まないと。
ベランダに出ると、冷気が身体を襲い、眠気はすぐに吹っ飛んだ。
布団を取り込み終え、洗濯物をカゴに入れていると、部屋の中でケータイが鳴った。
流れているJanneのRainy愛の調べはショーゴ指定の着信音だ。
一旦手を止め部屋の中に戻り、テーブルの上に置いてあったケータイに手を伸ばす。

「もしもしー?」

「おぅ、身体ダイジョーブか?」

「ダイジョーブ!」

「んでよ、お前今すぐ玄関鍵かかってるか確認しろ」

「は?強盗犯でも逃走してんの?」

軽口を叩きながらも玄関に向かい、鍵がかかっているか確認する。

「ちゃんとかかってるよ」

「チェーンも閉めとけ。いま大輝がそっち向かってるらしいんだよ」

「え?」

「なんか忘れ物あるとか言ってたけど、ゼッテー家入れんなよ。お前昨日大輝に今日休みだとか言ったか?」

「あー、忘れたけど多分言ったかも。チェーン越しに対応すればいいってこと?だよね?」

「おぅ。俺帰るまで家から出んなよ。なんかあったら電話しろ。ちゃんと出れるようにしとくからよ」

「わかったー」

ショーゴ心配しすぎじゃね。
電話を切ってとりあえず洗濯物の残りを取り込んだ。
ベランダの窓の鍵を閉め、洗濯物を畳んだりケータイでリアタイやmixiの更新をしたりしていると、インターホンが鳴った。
これ部屋の前のだよね。オートロックどうした。まぁいいやと立ち上がって鍵を開ける。チェーンはしたままだ。
ドアノブをおろし開けようとすると、ドアは勢いよく外側に引っ張られた。チェーンがついたままだから、ガチャンと大きな音が鳴り響く。

「うるさっ」

「わりぃ。ちょっと忘れ物しちまってよ、入れてくれねーか」

「え、無理。何忘れたの?私が探してきてあげる」

「寒ぃから取り敢えず入れてくれ」

「ショーゴいないのに勝手に入れれないよ」

「なぁ頼むって」

大輝はドアの隙間に足を入れて閉じないようにしてる。
なんでこの人こんなに家に上がりたがってんの。怖いんですけどー。

「ショーゴも家に上げんなって言ってたし」

「じゃあどっか店入ろうぜ。出てこいよ」

「忘れ物って何」

私の問いかけにしどろもどろになった大輝に呆れる。お前何しに来たんだよ。

「あ、祥吾にウォークマン借りパクされたままなんだよ。あとCD」

「CDってなんの?」

「睡蓮花」

「湘南乃風?じゃあ探してくるね」

玄関を離れ部屋に戻ってCDの中から探すが、ショーゴと大輝が貸し借りしたものに私が介入すんのも微妙だなと思って早々に切り上げ玄関に向かう。
ってかCDとウォークマンのためにわざわざまたこっち来たの。

「私じゃわかんないやー。ショーゴに言いなよ」

「あー、じゃあ飯食いに行こうぜ。奢る」

「ショーゴと食べるし。てか風呂掃除とかしたいから、じゃあね」

大輝をそのまま放置して風呂場に移動し、掃除を始めた。
掃除中に何回かインターホンが鳴ったりノックの音が聞こえたが無視だ。
風呂掃除も終わり、廊下に出ると玄関のドアは閉まっていた。
近付いて鍵を閉めた途端、またインターホンを鳴らされた。
ドアスコープを覗くと、大輝が立ってた。どんなホラーだよコエーよ。
部屋に戻ってケータイを弄り始めると、着信画面に切り替わった。
表示されてる名前は大輝だ。
そういえば昨日ケー番とメアド交換したんだった。
電話が切れることはない。早くケータイを弄りたかった私は仕方なく出ることにした。

「もしもし」

「渡したいモンがあるから、ちょっとドア開けてくれよ。渡したら帰るから」

「えー」

「チェーンしたままでいいからよ」

「んー、わかった」

半信半疑だったし何か渡されるような覚えもなかったけど、玄関まで行き鍵をあけた。

「これ」

渡されたものは4錠の薬が入ったシートだった。

「え、なにこれ」

「アフターピル。知り合いに貰って来たんだよ。昨日ゴムしたけど一応な」

「ふーん」

「ホントは生でもう一回ヤって渡すつもりだったんだけどよ。2錠飲んで12時間後にまた2錠飲め。あ、祥吾にはゼッテー言うなよ」

大輝の台詞に私はドン引きした。

「わかった。ありがと」

一応お礼を言い、ドアと鍵を閉めた。
部屋に戻って薬のシートに書かれた薬名をケータイで検索すると、どうやら本当にアフピルなようだ。
とは言っても昨日会ったばかりの人間に貰った薬を飲むほど、人を信用出来るわけじゃない。
取り敢えずテーブルに置いておくことにした。
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