「ねえ、うちの好きな人みたいっつってたじゃん?宅飲みするからさー、名前も来てよ。つーか来いよ。他のイケメンな先輩も来るし紹介してやるよ」

電車を乗り換えたりしないといけない距離に住む、ひとつ年下の親友のホナミに誘われたのはじめじめと暑い6月の下旬のことだった。
親友の好きな人を見て色々と裏で茶化したかった(性格悪いとか言うな)私はバイトが入っていたにも関わらず頷いた。だって気になる。あの男っぽくて女にモテまくる親友が好きになる男が気にならないわけがない。あと、イケメンな先輩っていうのもちょっと気になる。
シフトを調整してもらい、宅飲みの前日から親友の家にお泊りすることとなった。
泊まりに行くとわいわいと二人でくだらないバンギャトークやオタクトークに花を咲かせて、いつの間にか夜は明けていた。



***


オールで酒飲むならさすがにちょっとでも寝ておかないときつい。ということで私と親友は昼間まで寝こけた。それを遮ったのは親友のケータイから流れる着信音。
親友は寝起きだからかいつも以上に低い声で電話に出る。

「お、和成先輩じゃないっすか。どうしたんすかー」

親友の好きな人の名前は和成だと事前に聞いていた。から、お前男前な感じはどうにかしてこうもうちょっと女らしく電話出ろよ……なんて余計なお世話な感じのことを考えていると、すぐに電話は終わったらしい。親友は私の顔を見た。

「一時間くらいしたらこっち来るってよ」

その言葉に私は煙草を一本吸ってから支度に取り掛かることにした。
化粧したり髪巻いたり女は支度に時間かかるんだからもっと事前に連絡してほしい。
つーかさ、親友お前は好きな人と会うんだろスッピンにジーパンってどうなの。そう言うと親友は「学校で散々すっぴん見られてるし」なんて抜かしやがった。恋に生きる私からしたらありえない。
もう男前すぎてつらいから私と付き合えばいいじゃんなんて冗談交じりに言ったら「お前とは無理」って言われた解せぬ。



***



「俺は和成でこっちが涼太、よろしくなー」

部屋に入ってきた男二人は、茶髪のほうが和成、金髪が涼太というらしい。
ほら買ってきてやったぜ。と床に置かれたビニール袋には大量の酒が入っている。
親友が好きなのは茶髪のほうなのか。普通に金髪のほうがイケメンなのにどうした。いや恋は顔じゃないよね。でも金髪イケメンすぎんだろ普通こっちに恋すんだろ。

「あ、私名前。よろしくねー」

とりあえず自己紹介、と思い名前だけ告げた。他に言うこと思い浮かばないし簡潔でいいだろ。
親友は部屋に置かれているちっちゃい冷蔵庫から氷を取り出し、部屋の隅っこに置かれた鏡月とジンロを部屋の真ん中へと移動したりと飲む準備を進めている。
が、私含めみんな気が利かないのか親友以外は動こうともしない。
ちらりと私に視線をやった親友が熱を上げている男――和成は私を見て問いかけた。

「えーと、名前さん?名前ちゃん?ってやっぱ水商売?」

「えっ、私来月で17だしフツーにケーキ屋でバイトしてるよー。なんも聞いてないの?」

「うそっ一個下!?普通に年上かと思ったッス」

金髪のイケメン涼太も会話に混ざってきた。ら、親友が呆れたように言った。

「先輩たちも手伝ってくださいよ。なんでウチにやらせてんすか。名前お前もだよ」

みんな渋々とだが手伝いだすと、あっという間に準備は終わり飲み会は始まる。
飲んでるうちに二人の男とはもはや長年連れ添った友達みたいになった。しょっぱなから年上に呼び捨てタメ口とか私フレンドリー通りこして無礼だな。気にしないけど。

「ねえ、ただ飲むだけも飽きてくるし罰ゲームつきでなんかやんねえ?」

「おっ、和成ナイスアイディアじゃん。あとで王様ゲームもやろうよ。涼ちゃんとチューしたいし」

「残念、涼太は俺のですー」

そう言って和成は涼ちゃんに抱きつくとベロチューかました。おい羨ましいな、私がしたいんだって。

「お前らホモかよ」
「ホモとか」

こんなことを言っていると涼ちゃんがホモじゃない!と憤慨していた。和成もホモじゃねーよなんて否定していた。だったら最初からすんなよ。

「んで、何すんの?」

私の問いかけにまずは格ゲーやることになった。トーナメント式で勝ち抜け、最後に負けた人は焼酎ストレートの一気飲みだ。負けられない。

「お前ギルギアかよ。俺鉄拳派なんだけどー。ま、ギルギアも好きだけど」

親友が取り出したPS2のソフトに和成がダメだしかと思いきや結局は好きらしい。
まずは涼ちゃんと和成が対戦することになった。
なんか技とか出してるのみてすげーすげー騒いでいたが、これってもしかしなくてもあれだよね。

「私格ゲーとかあんまやったことないし不利すぎじゃん」

「あー、ガチャ押しでがんばれ!」

「ガチャ押し?」

「テキトーにガチャガチャボタン押すこと」

「へぇ」

和成は画面に向かったまま説明してくれた。ふーん、テキトーにやってもなんとかなるんだったらいいや。
画面の中でHP0になったのは涼ちゃんのキャラだった。涼ちゃんはクソーなんて言いながら私の隣までやってきて抱きついてきた。

「うわーストレートイッキとか無理なんスけど!名前ちゃん早くホナミちゃんに負けて俺にも負けて」

「うっわー男とは思えない発言!」

「いいんスよ!イッキするくらいなら男じゃなくていい」

「ほら、次名前たちの番だぜー?」

結論から言うと、私は親友に負けて涼ちゃんに勝った。壁まで追い詰めてひたすらガチャ押ししてたら勝てた。涼ちゃんはめっちゃショック受けてて笑った。一気飲み頑張れー。
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