現在ショーゴに抱きかかえられる形で一緒に湯船に浸かっている。
入浴剤はゼリーみたいになるやつを入れた。

「すごー!めっちゃトロトロしてる」

「二袋買っといてよかったな」

一袋入れても普通のお湯とそんなに変わんなかったからもう一袋入れた。
ショーゴも私も手でお湯を掬って遊んでいる。

「つか、今更だけどまじ名前久々だな」

「三日しか経ってないけどね」

「名前が自分で部屋借りて出てったら、俺サミシくて死ぬかもしんねぇぇぇ……」

「そんなことじゃ死なないよ」

笑いながら言ったら、腹の肉をブニブニと触られた。プニプニじゃなくてブニブニだ。泣きたい。
今人生で一番太ってんだよやめてくれ。

「この腹毎日触んないと死ぬ。あ、やべぇ入浴剤で触り心地めっちゃいい感じ」

「えー、やなんだけど」

「お前の腹触ってるとなんかすっげぇ幸せになれる」

「幸せさに身を任せて美味しいモン食べてたらこうなったから、私の腹肉には幸せがつまってんのかもね」

我ながらうまいこと言ったと思ったらスルーされた。つらい。

「もっと食え」

「これ以上太ったらしぬわ!」

「焼肉奢ってやるから。元カノ一番太ってたときかなり体重ヤバかったし、それくらいまでなら好きに食いまくって太れ。お前ならあと10キロくらい太っても大丈夫」

「ショーゴやっぱデブ専だろ」

「ブスは嫌いだけどな。笑顔が可愛けりゃ太ってようがなんでもいいんだよ」

「ショーゴカッコいいし、スタイルいい美人な彼女とか出来そうなのにもったいない」

「スタイル良くてもなァ。美人も別に好きじゃねぇし」

男がみんなショーゴみたいな考え方ならいいのになって思った。和成には最近太りすぎ、痩せろって言われた。つらい。デブの自覚はあるけどつらい。太った私が悪いとはいえ病む!


「名前みたいな女と結婚してぇな」

「え、初めて言われた」

「笑顔可愛いからそれ見ただけで疲れ吹っ飛ぶんだよ。いくらでも仕事頑張れる気ィするわー」

「え、褒めてもなんも出ないよ」

自分では、笑うとほっぺの肉が邪魔だとか思ってるから、笑顔褒められるのはかなり嬉しい。
ショーゴは逆上せる寸前まで私の腹を触っていた。



***


お風呂上がり、ショーゴは冷蔵庫の中を覗いている。私はそんなショーゴの背中にひっついている。

「俺酒飲みてぇんだけど、お前は?」

「やっぱさ、酒入んないと私じゃ勃たないんじゃないの?腹とかみられてるしぃー」

「さっきも風呂で勃ってただろ」

「え、そうなの」

「気付いてなかったのかよ」

「え、お腹触って勃ったの?」

「腹はオマケだバカ」

よかった、一応酒入ってなくても勃つらしい。勃たなかったら泣くわ女として終わってるわ。
勃つならいいやと、私とショーゴは酒を飲むことにした。

飲んでるうちに段々いい感じに酔いが回ってくる。
ショーゴがそろそろ寝るかと立ち上がった。

「一応布団一個はセミダブル買ったんだけどよ、もう一枚敷くか?」

どうやら布団も新調したらしい。
新しいカバーがかけられた、サイズの異なる二組の布団が部屋の隅に重ねて置かれている。

「んー、一枚でいい」

私の返事を聞いたショーゴは、二組の布団の下に置かれた方を乱暴に引っ張りだした。上に乗っかってた布団はぐちゃっと乱れながら床に落ちた。
空いてるところにテキトーに布団を敷いたショーゴは、これまたテキトーに枕をほっぽり、掛け布団と毛布を広げ、ドラッグストアの袋からゴムの箱を取り出し枕元に投げ電気を消した。部屋は豆電球でオレンジっぽい色に照らされている。

「早くこっちおいで」

布団の上に座ったショーゴが、いつもの粗暴な言葉遣いではなく優しい口調で言ってきたからちょっとキュンとした。
3分の2くらい吸い終えたタバコを灰皿に押し付け、布団のそばまで行って膝をつくと、ショーゴの両腕に捕まった。



***



目が覚め、壁にかかっている時計を見るとお昼を過ぎていた。
横にいるショーゴはまだ寝ている。
だるい身体を起こし、布団の外に追いやられていた部屋着を身につけた。床に使用済みゴムが投げ捨てられてるのが目に入った。
冷蔵庫からお茶を取り出しマグカップに注ぎ、飲みながらテーブルのそばに腰掛けてタバコに手を伸ばす。
一本吸い終える頃、ショーゴの声が聞こえた。

「んー、名前?さみぃ」

ショーゴは布団に包まりながら起き上がった。

「今何時」

「お昼過ぎてるよー。ヒーターつける?」

ショーゴが頷いたので、タバコを消し、ヒーターまで膝で歩いて電源をつける。ついでに落ちていたショーゴのジャージをヒーターの前に置いてやった。さっき自分が服着たときちょう冷たかったから。

「さんきゅ。あーさみぃ。やべぇまじさみぃ」

「そんな?」

相変わらず膝歩きでショーゴの元へ行き、布団の上から抱きつくと、ショーゴは笑った。

「お前寒くねぇの?部屋あったまるまで布団入ってろよ」

「じゃー灰皿とタバコ持ってくんね」

ショーゴから腕を離し、今度は立ち上がって灰皿とお茶、それから二種類のタバコを持って枕元へと置く。
布団に潜り込むと、ショーゴが私と同じようにうつ伏せになり、お茶に手を伸ばそうとしたから声をかける。

「それ冷蔵庫に入ってたから冷たいやつだよ」

「マジかよー、まぁ喉乾いてるしいいわ」

つめてぇなんて言いながら飲んでるショーゴを横目にまたタバコに火をつける。
あー、タバコうまい。中学の頃はタバコ大嫌いだったのに人は変わるもんだな。
ボケっとしながらタバコを吸っていると、ショーゴもセッターの箱から一本取り出してるのが視界に映る。

「名前さ、喘ぎ声もうちょい我慢しろ。ここ狭いから隣に聞こえるかもしんねぇ」

「私普段声小さいし」

「嘘つけ、お前叫んでるようなモンじゃねぇか」

「いっつも泣いてもやめてくんないからじゃん!」

「泣くほど気持ちーの?」

「気持ちいいとか通り越して苦しい。私がイッたら触んのやめてよ」

「嫌だ。まぁいいわ。苦情来てもなんとかなんだろ」

ショーゴは改善してくれる気はないらしい。
そういえばショーゴの家に居候し始めてから一回も和成とヤってない。ラブホ代とか出したくないって言われた。カスか。
ショーゴとは毎日エッチして彼氏とはしてないってどうなんだろう。
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