ショーゴん家に居候し始めた日から、布団は二組敷いているがだいたい二人一緒の布団で寝ている。
今日も腕枕してもらいながら二人で眠気を待つ。私は首が痛くなるから腕枕は好きじゃない。結局は枕に頭乗せて首の下に腕があるっ
てだけだしあんま意味ないのにショーゴはしたがる。頼りがいのある男を演出したいんだろうか。

「あ、言い忘れてた」

「ん?なに?」

ぼんやりとショーゴを眺めていると、ショーゴはこっちをむいて天井から私に視線を移した。

「今度引っ越すぞ」

「まじ?」

「おー。ここ3DKだろ?家賃8万すんだよ。もったいねぇし部屋もほとんど使ってねぇし1Kに引っ越そうと思ってんだけど、狭いの嫌か?」

「私に聞かなくてもいーよ。だいたい一緒にいるときこうやってくっついてんだから狭くても変わんないじゃん」

「狭くなるんだったら出てくとか言われるかと思った」

私はどんだけワガママな女だと思われてるんだ。いやワガママだけど。でも家賃も払ってないのに文句言わないよ。ただの居候なんだし文句あんなら出てけくらい言っても良いんじゃないの。
ショーゴは私の頭を撫でながら言う。

「んでよ、引っ越しん時親が2〜3日くらい泊まってくんだよ。お前どっかその間行く当てある?ねぇなら金やっから、ビジネスホテルでも泊まれ」

「んー、大丈夫だよ。知り合い結構いるし」

誰も捕まんなかったら、最悪キヨくん家に泊めてもらおう。なんて考えていると、ショーゴが謝ってきた。

「本当ワリィ、新しい女連れ込んでるってババアにバレたらぶっ殺されるわ」

「大丈夫だよ、私も気まずいし」

「なるべく早く帰ってもらうからよ。数日分の荷物だけまとめといて貰えるか?他のは俺のと一緒に新しい家に持ってってもらうから」

それからしばらくとりとめもない話をしていると、眠気がやってきた。


***



「なんかあったらすぐ連絡してこいよ」

「うん、じゃあね」


今日からショーゴの親が来る。一緒に荷造りや掃除をして、明日引っ越し業者が来るらしい。
洋服など色々と買い足していたせいで、私の荷物は旅行用のキャリーケースに入りきらなくなっていたから、ショーゴの親に見られないようにと昨日ダンボールに詰めておいた。
玄関先でショーゴに軽くキスされ、数日分の荷物と共に部屋を出る。

結局昨日私は一番断られる確率の低いキヨくんに連絡した。頼むなら一回で済ませたい。
予想通りキヨくんは快諾してくれた。
キヨくんはバイクで迎えにきてくれるらしい。
ショーゴん家の最寄り駅につくと、バイクの横に佇むキヨくんが手振ってきた。

「お待たせ」

「久しぶり。荷物そんだけ?」

「数日分しかないし」

「もっと居ればいーのに」

キヨくんはバイクの座るとこを開けると、私のバッグふたつを詰め込んだ。
メットを被せてもらい、抱っこで後ろに跨らせてもらう。

「お前結構重いな」

いっそデブって言えよ!やんわり言ってもグサッとくるから!
不満げな顔でもしてたのか、重くても気にしねえよって言われた。泣きたい。

「名前ちゃんバイク2ケツしたことある?」

「原チャリならよく後ろ乗ってたー。こういうおっきいバイクは数回しかない」

「んじゃ、大丈夫か。危ないからバランス取ろうとすんなよ」

曲がるときとか重力に逆らっちゃいけないんだよね。知ってる。
キヨくんがバイクに跨ったからお腹に手を回した。ら、素手じゃ寒いからと手を掴まれてキヨくんのポケットに入れられた。これだとちょっと怖いんだけど。
バイクが走り出し、景色が早く変わっていく。
あ、やべ、キヨくんのライダースにファンデついた。あ、あそこの焼き鳥屋気になる。そんなくだらない事を考える。大きな声で話しかけるほどの話題もないし、運転に集中してもらうのが一番いい。
騒ぎながら2ケツすんのも楽しいけど、こうやって静かに景色を見ながらバイクに乗せてもらうのも結構いいかもしれない。



***


「おじゃましまぁーす」

コンビニに寄ってタバコをカートンで買ってもらい、キヨくんの家にきた。
10畳ほどの部屋に案内してもらう

「めっちゃ綺麗」

「名前ちゃん来るから掃除したんだよ。好きに汚していいぞ」

キヨくんが床に私の荷物を置くのを見ながら問いかける。

「間取りはー?」

「1LDK。あっちは寝る部屋」

「へぇ、広いね」

キョロキョロと見渡しながら、キヨくんが座ったソファーに私も腰掛けた。

「もう連絡くんないと思ってた」

「前はかなりムカついたけどね。でももう別に良いよ」

「今の居候先の人って男?」

「うん」

「彼氏とは別れたのか?」

「別れてないよ〜」

うわ、軽いな。なんて言われたけど気にしない。ちゃんと好きなのは和成だけだし。股は緩いけど心は一途だ。
キヨくんはテレビをつけて、タバコを吸い始めた。私も吸お。
一旦立ち上がってバッグを手に取り、また座る。タバコを取り出して指に挟んだまま咥えると、咥えタバコをしたキヨくんの顔が近づいてきた。

「ん、火」

タバコチューで火をもらう。なにこれちょっとキュンとする。
タバコを口から離して煙を吐き出すと、キヨくんは笑った。

「そーいや実際17歳なんだっけ?見えねーな」

「老けてるってことー?」

「違う、大人びて見えるってことだよ」

喜んでいいのかわかんない。
キヨくんはまだ長いタバコを灰皿に押し付けると、立ち上がった。
根元まで吸う貧乏性の私はもったいないと思った。

「なんか飲む?」

「なにあるの?」

「んー、酒もあるしソフトドリンクもある」

「冷たいお茶ある?」

「だったらお茶割り飲めばいーんじゃねーの?」

「そうする」

キヨくんは台所に向かい、暫くするとグラスやアイスペール、焼酎やつまみなどを、何回かにわけて持ってきた。
途中で手伝おうかって声かけたら断られた。
お酒を作ってもらい、乾杯して飲む。

「やっぱ酒飲むときはロックアイスがうめーな。いつも家で作ったので飲んでるから。名前ちゃん来るから買っといたんだ」

「ありがとー」

キヨくん優しいな。でもキヨくんのせいで友達失ったんだよな。
なんかフクザツだ。
お酒を飲んでいると、キヨくんはテレビを消しコンポで曲を流し始めた。

「あ、蜉蝣だ。この曲絶望にサヨナラだっけ」

「おう。つか名前ちゃんバンギャだっけ」

「そうだよー。キヨくんギャ男だったの?」

「曲は聞くけどライブとかはいかねーなぁ」

お酒を飲んでいる間、話題が尽きることはなかった。



***


キヨくんの後にシャワーを浴びて洗面所に出ると、部屋から下着と、借りた部屋着(荷物になるから元から借りる気満々だった)持ってくるの忘れちゃったことに気付いた。
髪の毛と身体を拭いて、タオルを巻いて部屋に戻る。
別におっぱいとか見られるのはいいけど腹見られたくないから巻いた。和成やショーゴ相手だと素っ裸でも平気だけど、キヨくんは私の腹の肉厚さを知らない。

私に気付いたキヨくんはなんともいえない顔をしていた。エスパーじゃないからなに思ってんのかはわかんない。

「お風呂場に着替え持ってくの忘れちゃった」

「呼んでくれりゃ持ってってやったのに」

ソファーに起きっぱなしだった服を取ろうと近づくと、キヨくんに腕を掴まれる。

「え、なに?」

「その格好、抱いてくださいっつってるようなモンだぞ」

「あはは、抱きたいのー?いいよ」

茶化すように言った。ゴムつけてくれれば別に問題ないし。
じゃあ遠慮なく。とキヨくんに腕を掴まれたまま寝室へと向かった。


***


ヤったら眠くなったのか、キヨくんは寝始めた。
一言でいうとイマイチだった。演技してあげた私優しい。
満足しなかった私に眠気はまだ来ないようだ。リビングに戻って部屋着を来て、ケータイをいじることにした。

和成とショーゴ、それから前に一緒に飲んだ親友(元親友と言ったほうがいいかな)の後輩から着信が入っていた。明日かけ直そう。
メールチェックして、敦とショーゴにだけ返信してケータイを閉じた。
相変わらずリビングには蜉蝣の曲が流れている。
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