先日、なんとか和成とは仲直りした。
和成には同じ百貨店に働くオネーサンの家に居候させてもらってると報告した。オニーサンとオネーサンで一文字違いだし。オッケー。
今日は私のバイト後会おうということになって一緒にラーメンを食べたりしていたのだが、重大なことを忘れていたことに気付いた。

ショーゴん家の鍵を私が持っているのだ。
ショーゴより先に帰るはずだったから、中番だった私はショーゴより遅くに家を出て、そのまま鍵を持っていた。
ショーゴはちょうど仕事が終わったくらいの時間だろう。
和成にトイレ行ってくると告げ、トイレの個室に入り、電話をかけた。

「どーした?」

数コールで出たショーゴの声は小声だ。

「ねぇ、今平気?」

かくいう私も小声だ。トイレの外に声が漏れたら困る。

「仕事は終わってんだけどよ、まだ売り場にいんだよ」

「あのさ、今日何時に帰る予定?」

「ゲーセン行くけど、多分11時には帰ると思うぜ」

「あ、私多分終電くらいに帰ることになりそう。ゲーセンでこっそり会えるかな?」

「あー、他店の人と行くけど、あの人なら別に知られてもいいか。大丈夫だ」

「本当?よかった。どこのゲーセンにいるかメールして。ごめんね」

「ここら辺最近変な奴多いっぽいから気をつけろよ」

「ん、ありがと」

電話を終え、ついでに用を足して席に戻ると、和成はラーメンを食べ終えていた。ちなみに私は電話しに行く前に余裕で食べ終えていた。男より食べるの早いとか女としてちょっと微妙だよな。

「おまたせ」

「そろそろ店出るか」

ごちこうさまと店員に声をかけ、外に出ると、ラーメンを食べて上がった体温はすぐに奪われていった。
目の前を歩いている和成に声をかける。

「ねえ、ゲーセンいかない?鉄拳とかビーマニやりたいって言ってたじゃん?」

「おっ、最近ゲーセン行ってなかったしいいんじゃねーの」

私の提案に快く頷いた和成はスタスタと歩き始める。
歩きながらケータイを確認すると、ショーゴがいるのは和成が歩いてる方向にあるゲーセンだった。あっちのゲーセンがいいとか言わなくて済みそうだ。

到着すると、和成は早速ゲームを始めた。こうなると私は放置されてるも同然。
和成のそばから離れ、エスカレーターに乗って上の階へと向かった。
二階を見て回ると、ショーゴは競馬ゲームをやっていた。
なんか椅子とかモニターとか操作盤とか本格的(?)ですごい。楽しそう。私はちょっと競馬に興味が出た。
近寄ってトントンと肩を叩くと、ショーゴがこちらを向き笑った。
店内はうるさい。話すためにショーゴの耳元に顔を寄せた。

「一緒に来てる人は?」

「前のほうに座ってるからこっちには気付かねぇんじゃね」

「そっか。はい、鍵」

「おー、つか一緒に帰んねぇ?」

「えっ、何時に帰るかまだ決まってない」

「ゲーセンで遊んで待ってるから何時でもいいぜ。終電前の電車とか酔っ払いいて危ねぇし」

「本当?じゃあ、後で電話する」

「わかった。今日は彼氏?友達?」

「彼氏」

「クソ野郎のツラ拝みてぇな」

ショーゴは立ち上がると、私の手を引いて歩き始めた。

「え、マジで見に行くの?やだよ」

和成よりショーゴの方がイケメンだし見られるの微妙。

「冗談だよ。飲みモン買ってやっから」

二階トイレのそばにある自販機の前に来ると、ショーゴは小銭を投入して微糖のアイスコーヒーを買った。

「名前はどれがいーの」

「ホットのお茶」

再び小銭を投入して、ミニペットボトルのお茶を選び受け取り口から取り出すと私に手渡してくれた。

「ありがとー。あったかい」

「早く戻ったほうがいいんじゃねぇの?電話待ってっから」

「うん、じゃああとでね」

ぽんぽんと頭を叩かれ、私は一階へと戻る。
音ゲコーナーを覗くと和成はいなかった。店内をまわると、アーケードゲームのところに和成はいた。

「何やってんの」

「鉄拳」

立ったまま眺め、時折和成に声をかけるが、今話しかけんなと一蹴される。放置プレイか。
和成と一緒にいられるのはすっごい嬉しいけど、すっごい退屈だ。
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