敦と別れ親友宅に帰ると、親友に漫画を投げつけられた。
「いたっ!は、え、なに」
「なにじゃねーよわかってんだろ」
「なんのこと」
「お前っていつもいいとこ取りだよね。男関係での要領の良さには拍手贈りたいわ」
親友はめっちゃキレている。
どうやらキヨくんにフられたらしい。私を理由に。
私は親友にボロクソ言われて家を追い出された。荷物をまとめる時間くれただけ良かったのか。
和成の時は申し訳ないと思った。けどキヨくんのことは不可抗力だ。和成のこともあったし、もしキヨくんが親友の好きな人だってわかってたら仲良くしなかった。
男関係でかなり大切な友達を失うってどうなんだ。そしてショックをあまり受けてない自分は最低だ。
とりあえず今晩から寝る場所を失った。どうしよう。
キヨくんに言えば多分居候させてくれるだろう。
でもキヨくんに電話するのは憚られる。なんか策略に嵌るみたいでいやだ。
和成とは今だ喧嘩中だ。この前電話掛け直したら更に喧嘩になった。それに和成は実家ぐらし。頼れない。
敦はお母さんあんま帰ってこないっつってたから多分頼めば泊まらせてくれるだろうけど、敦には色々と説明したくない。
そうなると選択肢はひとつだ。
私は旅行用のトランクを引っ張りバス停を目指しながら、ショーゴに電話をかける。
数コールすると、電話先の賑やかさが聞こえてきた。
「どーしたぁ?今スロット打ってるからうるさくてわりぃな」
「ねえ、お願いがあるんだけど」
「ん?金なら数千円しか貸せねーよ。スロット出てくれりゃいくらでも貸してやるんだけどよー」
「えーとさ、暫く居候させてもらえないかな」
「あ?この前洗濯とか掃除とかしといてくれてすげぇ助かったから、たまーにそういうのやってくれりゃ全然いいぜ。あー、つーかやってくんなくても断らねぇけど。寧ろ来てくださいって感じだ」
「本当!?ありがとう!めっちゃ助かる!なんでもする!」
「今何処だよ。俺んとこの最寄り駅前にあるパチ屋にいっから、着いたらまた電話寄越せ。気ぃつけてこいよ」
ショーゴ優しすぎかよ。そのうち部屋契約するつもりだけど、もうちょい貯金増やしてからがいいから助かった。
私は気分よくショーゴん家の最寄り駅まで向かった。
***
ショーゴと合流し、タバコを数箱買ってもらいショーゴの家へとやってきた。
スロットで勝ったらしく5000円くれた。
今は、この前片付けたばっかなのにまた散らかってきた部屋で、ショーゴの膝の上に座らされ後ろから抱きつかれている。離してくれない。
「まじ嬉しーわ。元カノと別れてからサミシイ生活してたし」
「本当ありがとーね、して欲しいことあったら言って」
「じゃー、俺がチューしても怒んなよ」
「あはは、そんなこと?怒んないよ」
「あとよぉ、めんどくせぇからお前の彼氏にバレないようにしろよ。男の家いるって」
「もちろん」
「つーかこの前から話聞いてる限り彼氏カスじゃねぇか。とっとと別れろ」
「そんなすんなり諦めて別れられんならとっくにそうしてるよ」
「俺がそばにいてやるよ」
「私妹みたいなんでしょー?」
「あー……まぁ、な」
ショーゴは私の肩に顔を埋めて頷いた。首傾げ続けるの地味に疲れる。
私は鈍感じゃないからなんとなく気付いている。けどハッキリ言われてないから気のせいだって思うことにしてる。勘違いでしたー!じゃはずい。
ショーゴはやっと顔をあげた。とりあえず首をまっすぐの位置に戻した。
「あー、あと、百貨店の人間にバレないようにしろよ」
「当たり前じゃん」
「彼氏持ちの女家に住まわせてるってバレたら店長にぶん殴られるわ」
「お互い気をつけよーね」
***
数日一緒に暮らしてショーゴの事がちょっとわかった。
私とヤりたいときは(つーか毎日)酒飲んで酔ったふりして襲ってくるヘタレだ。
別に酔ってても酔ってなくても怒んないのに。
どっちかって言うと酒入ってないときにヤッてほしい。
酒のせいかなかなかイかねーんだもん。挿入時間長すぎてちょっと苦痛。遅漏か。そのくせ「名前とヤるとイくの早ぇわ、普段俺もっと遅ぇから」とか見栄張ってた。和成が初めてだったし、早漏に慣れすぎたのか。でも数人とヤったことあるけどショーゴより全然イくの早かったしショーゴは多分遅漏だ。なんか微妙な気分。
あとショーゴは普段優しくてヘタレな癖に、エッチの時は別だ。
私が泣き出すまで前戯やめない。頭真っ白になってどこかにその快感を逃がしたいのに逃げ道を塞がれるようなエッチだ。前戯が長すぎるし休む間も無く、しつこいの一言に尽きる。いや気持ちいいんだけど、和成より格段にうまいんだけど。
ショーゴのような人間をサディストと言うんだろう。言わなくてもゴムは絶対つけるし、私が望まない限り、傷付くようなことは絶対してこないのにとても追い詰められる。
私はこの先勘違いSに出会ったら鼻で笑うことにしよう。変なことを誓った。
んで、なぜこんなに語ったかというと、私の好奇心が自分を更に追い詰めたからだ。
エッチ中に真のサディストに「首絞めて」って言ったらどうなるか気になってどうしようもなくなってしまった。
そして言ってみた。ら、ショーゴは興奮したのか続けて三回もする羽目になったのだ。一回でも長いのに、三回だ。ありえない。
ちなみに片手でちょうどいい力加減で首絞められた。いつも以上に興奮したし気持ちよかった気がするけど私はマゾヒストじゃないから若気の至りだと思う。
あー、カーテンの隙間から入ってくる朝日が眩しい。
「腰痛いぃー」
「わりぃ……酔ってた」
「その言い訳毎日聞いてる。いいよー酔ってなくてもヤっていいから」
ショーゴは私の腰をひたすら摩ってる。こうやってヤッてないときも優しいからショーゴは好きだ。恋愛感情じゃないけど。
「酒に頼らないと名前に手なんて出せねぇよ」
「酒でふわふわしてる時じゃないと私で勃たないのー?ひどい」
「大事だからだよアホ」
「オニーチャン優しいねー」
「名前が実の妹じゃなくてよかったわ。近親相姦とか気持ち悪ぃ」
「キョーダイプレイ楽しんでたんじゃないんだ」
「ねぇよ!俺ノーマルだから」
ショーゴといると落ち着く。兄妹というのも間違ってないかも。
今日はパチンコ連れてってもらう約束だったけど、座ってられるかな。ショーゴと家でのんびり過ごすのもいいかもしれない。