歓迎会から三日、今日は敦とデートだ。
待ち合わせ場所の駅前で煙草を吸いながら待っていると敦は10分遅れてやってきた。

「名前〜ごめん〜」

「んー、いいよ」

私の顔はデレデレだろう。敦かわいい。弟にほしい。
そんな敦はヘラッと笑って私の頭を撫でた。

「今日の服かわい〜」

「たまには可愛らしい感じのも着てみようと思って」

「俺そーゆうのめっちゃ好き〜」

「敦もオシャレだね」

「はりきってきた」

何この子かわいいい。一個しか違わないけど年下の初々しさかわいいい。
これからどうしようかと話した結果、敦は甘いものが好きだからとりあえず昼食代わりにとスイパラへ行くことにした。
スイパラに着くと、敦は皿にちっさいケーキを沢山乗せていた。

「うわっ、そんな食うの」

「こんくらい余裕〜」

なんか見てるだけで気持ち悪くなりそう。
私はケーキをふたつと、別の皿にパスタを盛った。

「名前それしか食わないの〜?」

「おかわりするかもだし。それにさー、敦がいっぱい食べてくれるからもとは取れるよ」

私たちは席に戻り、食べながら会話に花を咲かせる。
本誌のリボーンの展開がどうだとか、あの巻の雲雀がかっこいいだとか、敦はすごい楽しそうに語っている。
そんな敦をデレデレと眺める私。我ながら気持ち悪い。
お腹いっぱいになると、私たちはどこに行こうかとまた頭を悩ませた。

「うーん、敦どこ行きたい?」

「池袋〜。でも遠いよね」

「あ、乙女ロード行きたいの?」

「うん、ムクヒバの同人誌欲しい〜」

「時間なら大丈夫だし、行こっか」

「やった〜。俺男だし、そういう系一人で漁るの勇気いるんだよね〜。だから行ったことない」

デートで乙女ロードとか新鮮だなおい。なんて思いながらも敦の嬉しそうな様子に顔が綻ぶ。
今日はとことん敦の行きたいとこに付き合おうと心に決めた。



***



乙女ロードでの買い物を終え、私たちは地元方面(私のじゃなくて敦たちの)への電車に揺られていた。
ちなみに敦にムクヒバとムクツナの同人誌を買い与えた。年下の男子に貢いだものがホモ同人誌とかネタになるじゃん。そんな軽い気持ちで買ってあげたのにめっちゃ感謝されてしまった。
私はテニミュのブロマイドを買い漁った。後悔はしていない。

電車は、座れそうになかったから敦がドアに寄りかかって、私は転ばないようにと敦の足の間に入り込み両腕を腰に回してもらっている。
はたから見たらイチャついてるカップルにしか見えない。こんなイケメンで可愛い子とバカップルに見られるなら本望。

「ねー、名前のウォークマンって何の曲入ってんの〜?」

「Dirとかアンカフェとか色々入ってるよ」

「まじ〜?俺Dirとかよりアンカフェっぽいポップなバンドが好き〜」

「あ、じゃあSuGとかも好きかもね。聞いてみる?」

「うん、一緒に聞こ〜」

だからなんでいちいちこんなに可愛いんだ。この可愛さを表す適切な言葉が見当たらない。ウォークマンを取り出し、イヤホンの片方を敦の耳に装着し、もう片方は自分の耳にさした。

「あ、めっちゃ好きかも〜」

「本当?CD焼いてあげたいけど実家なんだよね」

「聞きたくなったら名前と会うからだいじょーぶ」

「かわいいなあ。あ、ちょっと待って、敦って誰かに似てる。V系バンドのイケメンに」

敦の顔を見つめていると、ふと「アレに似てる!」という思考に支配され、なんとか思い出そうとする。
暫く考え込むと、答えが出てきた。

「わかった、あのバンドのボーカルだ」

ケータイを取り出して画像検索して見せると、誰これ〜なんて言われてしまった。

「メジャーだし有名だよ」

「俺こんなイケメンじゃないし〜」

「イケメンだしかわいいし似てるよ」

「名前にそう言ってもらえるとちょう嬉しい〜」

敦といると会話のネタが尽きない。
気付けばあと数駅で目的の駅だ。
敦が行きたいとこがあるからここで降りたいというので二人で途中下車した。

連れて来られたのは、とあるゲームショップだった。
そこの一角にあるカードゲームスペース。
あ、デュエルしちゃう感じ?遊戯王の知識はあまりないけど、バッグからデッキを取り出した敦が楽しそうだからと、店内を見て回ることは諦め眺めることにした。
ちなみにこんな彼女放置なデートコースとか敦相手じゃなかったら不機嫌になって帰ってるレベルだ。

敦も対戦相手も、手の動きがハンパない。なんか素早い。
それてきとーにやってるんじゃないよね。ちゃんとルールに沿ってやってるんだよね。そんな疑問を抱くのはしょうがないと思う。
そういえば対戦相手も女の子連れていたな。ちらりと女の子を見ると、目があった。相手が目を逸らす様子はない。ので私も遠慮なく女の子を見た。
ゴスロリもどきの服にスニーカー履いていた。え、なんで靴にも気使わないの。そうつっこみたい。
大してかわいいわけじゃないしセンスあんまないくせに心の中で人にダメ出しする私は性格が悪い。ごめんなさい若気の至りですたぶん。

視線を敦に戻すと、どうやら勝ったらしい。嬉しそうにしていた。

「遊戯王よく知らないけど、勝ったの?」

「うん」

「敦強いんだね。まじすごいじゃん」

私が頭を撫でると敦はまた嬉しそうに笑った。
それから2〜3回対戦すると満足したのか、ゲーセンに行くことになった。
プリ撮って(ほっぺにチューしてやった)店内をうろちょろしていると、敦がビーマニやるとか言い出した。
ビーマニは和成もよくやっている。つい思い出しちゃったけど和成の存在はまた心の奥にしまい込んだ。楽しい時間に和成のことなんて思い出したくない。

それからファミレスで夕飯を食べ、最寄り駅まで移動し、駅前で敦と話込んだ。

「俺帰りたくない〜」

「なにその彼女みたいな台詞」

「だって〜」

「また誘ってよ。敦とまた遊びたいし」

「名前からは誘ってくれないの〜?」

その問いかけには答えず、敦に抱きついた。
和成と付き合ってることは敦には言っていない。

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