「起きろ、襲っちまうぞー」
そんな一声で意識が浮上する。
目の前にはドアップのショーゴの顔があった。
そのまま首に抱きついてキスすると、頭を撫でられた。
「夜は悪かった。酔っててつい手出しちまった。結局我慢できなかった。ほんとワリィ」
「いーよ、嫌じゃなかったし」
「俺のこと嫌いになんないでくれよ」
「なんないよ」
笑いながら言うと、ショーゴは困ったようにまた口を開いた。
「じゃー避けたりすんなよ、傷付くから」
「そういうのって普通男がするもんじゃないの?」
「俺がお前避けたりするはずねぇだろ。あー、なんつーか、妹?みたいな。名前が大事なんだよ」
「キャー、オニイチャンにエッチなことされちゃったー、近親相姦ー」
「茶化すんじゃねぇよ、真面目に言ってんだアホ」
ショーゴは軽く私にキスすると、ダルそうに起き上がった。
「俺今日早番だけど、お前は?」
「休みー」
「じゃー好きなだけウチいてもいいぜ。今日予定ないなら俺帰るまで待っててくれりゃ晩飯奢るし」
「いいの?ありがとー」
「鍵置いてくから、もし帰るんだったら下のポストに入れといてくれ」
「わかった」
「あと家ん中のもん勝手にいじっていいからな。あー……あとは……」
「あ、ケー番とメアドしらない。嫌じゃなかったら教えて」
「はぁ、お前こっちが切り出しづらいこと簡単に聞くのな」
「ただのケー番だよ?よくわかんない」
あ、ケータイ居間に置きっぱだ。
支度してくると部屋を出て行ったショーゴの後にくっつき回るように後を追う。
「なに、サミシイのか?」
「ケータイそっちに置きっぱだったから」
「はっ、可愛くねーやつ」
「そんなこと言わないでよー。淋しいよ、離れたくない」
淋しくないけど。背後からショーゴに抱きついてみた。
「なぁ、やっぱ俺帰るまで待ってて」
「別にいーけど」
「よし。じゃー支度するから離れてくれるか?」
「はーい」
離れるとショーゴは洗面所に向かった。
私は居間に置きっ放しだったバッグから、ケータイと充電器を取り出して延長コードに差し込んだ。
画面を開くと、不在着信7件、メール24件。
親友には連絡したから、他の誰かだろう。
履歴を開くと、不在着信は全て和成だった。ショーゴが仕事行ったらかけ直そう。
メールはほとんどがメルマガだったけど、そのうち何通かは和成だ。「寝てんの?」とか普通の内容。あれ、私たち喧嘩してたよね。
全部メールを開き終えると、ショーゴが居間にやってきた。
赤外線で連絡先を交換し、洗濯機使っていいかなど質問し、玄関まで見送りに行く。
「じゃ、そろそろ行ってくる。煙草ないっつってたよな。テーブルに置いといたから。開いてるけどまだ結構入ってるし全部やる」
「え、ありがとー。気をつけてね。いってらっしゃい」
ショーゴは神様みたいにいい男だ。