三番街のイルミネーション前。
二次会参加する人ー!なんてショーゴが言い出し、集まったのは私含めたったの三人だった。
え、ノリ悪くね。明日仕事とはいえノリ悪くね。
私以外の二人ーーショーゴと原澤さんは見るからにテンション下がってた。
「んー、どうしましょうか。男二人に女の子一人は危険ですね」
「はぁ?んなこと気にしてんすか」
どうやら原澤さんは真面目らしい。ショーゴが非難の声をあげている。
「えー、大丈夫だよー。もうバスもないし、飲み行こうよ〜」
女が自分だけだという状況は気楽だ。原澤さん相手にもタメ口きけるし。女は同性が異性に媚びたり甘えるような態度に厳しい。
「苗字さん酔っているでしょう。今日はお開きです。また今度飲みに行きましょう」
「じゃあ原澤さん家泊めてー」
「いやいやいや、ダメですよ」
「独身彼女なしって言ってたじゃん〜原澤さん紳士そうだし」
「誘惑しないでください。ダメですからね」
原澤さん男のくせにガード堅すぎいいいいいい。
和成とも喧嘩中だし何かされても別に困んないんだけど。そんなことを思っていたらショーゴが口を開いた。
「汚ねぇけど俺ん家くるか?」
「え、いいの?やったーありがと」
「いやいやいやいや、苗字さんダメです。灰崎くんの家なんかに行ったら何されるかわかったもんじゃありません。お金ならあげるので漫喫で時間潰してください」
「は、俺なんもしねぇっすよ」
「無理だと思いますけど」
グダグダと寒い中話しあい、このままじゃ終電なくなると結局私はショーゴの家に泊まることになった。
「苗字さん、何かされそうになったら連絡してくださいね」
「ラジャー」
私原澤さんの連絡先知らないけど。
その後、三人で駅まで歩き、改札で原澤さんと別れた私たちは電車に乗って数駅先までやってきた。
「俺ん家まじ汚ねーけど平気か?」
「ん、大丈夫」
手をつなぎ、ショーゴん家までの道のりを歩いていると、5分もすればたどり着いた。
「マンションなんだー」
「おー。前まで元カノと同棲してたから広いんだよ。そろそろ引越しすっかな」
「おじゃましまーす」
玄関に着くと、あのイルカの絵、なんだっけ、ラッセン?のジグソーパズルが飾られていた。
なんか懐かしい。昔親父と一緒に住んでた家に飾ってあった。
まぁ親父が暴れて額縁割れてママの足血だらけになったぜ事件で撤去されてたけど。
元ヤンはラッセン好きなの?それともジグソーパズルなんて細々したものが好きなの?永遠の謎だ。
そんな感じで昔を思い出していると腕を引かれた。
「どーした?あがれよ」
「うんー」
居間に案内されると、チャンピオンが積み上がってたりトランクスが落ちてたり、テーブルの上は空き缶が散乱してたりで、まぁ綺麗とは言えなかった。
けどまだまだ許容範囲内だ。
「なんか飲む?っつっても酒しかねーけど」
「ありがとー、飲む」
「チューハイでいいか?」
「うん」
テーブルの前に腰掛け、受け取ったチューハイを飲む。
ショーゴはビールを飲みながらタバコを吸い始めた。
「ねー、私もタバコ吸っていー?」
「おー。遠慮してんじゃねえよ」
お言葉に甘えて煙草に火をつける。てか、
「やば、あと煙草二本しかねーや」
「セッターでいいなら俺の好きなだけ吸え」
「いいの?ありがと」
「お前ちゃんとお礼言えてえらいな」
ショーゴは笑って頭を撫でてきて、なんだか嬉しくなった私は笑う。
二人とも煙草を吸い終えると、ショーゴが立ち上がった。
「風呂入ろうぜ」
「私あとでいいよ」
「ちげーよ、一緒にだよ」
「えー、やだ。私腹周りやばいもん、肉が。三段腹だから」
「気にしねぇよ」
「名前が気にする〜。あっ、やべ、自分のこと名前で呼んじゃった」
気を抜いてたのか家族前だけでの癖が出て顔に熱が集まる。恥ずかしいわ。
「お前風呂一緒に入ろうっつっても照れないのにそんなことで照れんのかよ。とりあえず風呂掃除してお湯溜めてくるわ」
ショーゴがめっちゃ笑いながら居間を出て行く。
あーまじ恥ずかしい。和成の前でもやらかさなかったのにチクショウ。
切り替えの早い私はすぐにさっきのことなんて忘れ、チューハイを煽りながらここにきて二本目の煙草を吸っていると、ショーゴが戻ってきて、思いきり後ろから抱きつかれた。
「名前ー、一緒風呂はいろうぜ!な!」
「え、テンション高いね」
「今更酔い回ってきた。な、いいだろ?」
「じゃあ電気消してよー。まじ腹見られたくない」
「あー、それでもいいけどよ」
ショーゴに押され負けて、結局一緒に風呂入ることになった。
やばい、まじ腹見られたくない。